プラスコラム
PLUS COLUMN

「かわいい!」だけじゃない……ペットから病気がうつる?

「空前のペットブーム」だそうです。

ペットの2大巨頭といえばイヌとネコですが、

これまでペットの王座に君臨していたイヌの飼育数がネコに抜かれるのも

時間の問題といわれます。

ただ、たしかにペットは「かわいい」し「癒される」のですが、

病気の感染源になるということも覚えておいたほうがいいかもしれません。

 

ネコのマダニ感染症は増えているの?

「動物由来感染症」というのを知っていますか?

「はじめてだ」という人も字を見ればだいたい想像がつくと思います。

……動物から人間にうつる病気のことです。

ペットにかまれたり引っ掻かれたりとか、

口のまわりをなめられたり、

傷口をなめられたりしてうつることもあります。

ペットをなでたときに病原菌が手に付着したり、

排泄物をさわった手で口を拭いたりして感染することもあるようです。

ダニや蚊などに刺されて病気に感染したペットを介して

人間にうつることもあります。

 

昨年の7月、厚生労働省は、2016年の夏に、

保護しようとした野良ネコに手をかまれた女性が10日後に

「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」で亡くなったと発表しました。

SFTSというのはマダニが媒介する病気だそうで、

感染したとみられる当のネコも衰弱して亡くなったということです。

 

このニュースは、ネコを飼っている人にはショックだったにちがいありません。

というのもそれまではSFTSはイヌは別として、

ネコでは感染や発症した例はみられないとされていたからです。

 

ところがNHKの調べによると、最近、

ペットのネコにもマダニがつくことがめずらしくないことが

分かったというのです。

理由としては、シカやイノシシなどの野生動物が

人間の生活圏にまで入り込んでくるようになり、

森や草地など野山に生息していたマダニがそれら野生動物に付着して

公園などに棲みつき、ネコにもつくようになったのではないかということです。

ネコよりも外で活動する機会が多いイヌの場合は、

当然、マダニに刺されるリスクは高くなるということになります。

 

口移しで餌をあげるのはやめたほうがいい?

ただ、同調査によると、ペットのネコ約300例を調べたところ、

どのネコからもSFTSウイルスの抗体は見つからなかったということです。

といってもネコにマダニは感染しないと結論づけるのは早計で、

専門家によると(抗体が陽性のネコが見つからないのは)

感染したネコは病気が重篤化して死んでしまうからではないかということです。

 

マダニはペットのみならず人間にも感染する危険があります。

獣医師に相談してペット用のダニ駆除剤を処方してもらうのがいいようです。

ただ、イヌやネコがマダニにさされていなくても

体毛に付着させていることもあるそうですから、

ときどきペットの体をじっくり観察する必要がありそうです。

マダニのSFTSウイルスの致死率は20パーセント以上といいますから、

かなりこわい病気です。

 

では外に出さないで室内で飼っているネコはどうでしょう? 

外と家を自由に出たり入ったりしているネコに比べ、

室内で飼育しているネコは、SFTSに感染するリスクはかなり低いそうです。

ペットの健康はもちろん、飼い主の健康を考えれば、

室内で飼うのが理想的な飼い方なんでしょうけど、

それぞれ家庭の事情ってありますからねえ……。

 

ちなみに家の中にいるイエダニとマダニは別のもの。

イエダニからはSFTSウイルスは感染しないということです。

 

マダニ感染症以外にもペットが感染源になる病気がたくさんあります。

詳しくは厚生労働省のホームページなどを見てみてください。

たくさん出ていますよ。

 

いずれにしてもネコやイヌからの感染を防ぐには、

濃厚な接触は避けるのがよいようで、とくに口移しで餌を与えたり、

キスをしたり、顔をペロペロなめさせたりするのは細菌感染の危険が

あるのでやめたほうがよさそうです。

一緒のふとんで寝るのも避けたほうが無難とか。

ペットと遊んだあとは手をしっかり洗い、ブラッシングやシャンプーなどで

清潔を保つことはもちろん、トイレのあと始末もていねいにしたいものですね。 

 

ただ、あまり神経質になってペットへの愛情が疎かになっては困ります。

感染症への予防措置もほどほどにというところでしょうか。

 

ところで、最近、ヘビとかトカゲとかハリネズミなどの

輸入動物を飼うのが人気らしいです。

ネコやイヌなどのコンパニオンアニマルに対して

エキゾチックアニマルというらしいですが、

未知の感染症をもっている危険もあるらしいですから

飼うのは慎重にしたほうがよさそうですよ。

 

日本は島国ということで、もともと感染源となる動物の侵入が

限定的だったそうですが、こうした外来種が入ってくることで、

まだ知られていない動物由来感染症が増えてきそうな……

そんな嫌な予感……当たらないといいですね。

 

<参考URL>

*「動物由来感染症を知っていますか?」(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000155663.html

 

*「人と動物との共通感染症一覧」(東京都動物愛護相談センター)

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/douso/kansen/kan_list/index.html

 

*「みんなで作る危険生物マップ あなたのペットは大丈夫?マダニ感染症」(NHK NEWS WEB)

https://www3.nhk.or.jp/news/special/kikenseibutsu/static/20170811.html

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。