プラスコラム
PLUS COLUMN

香りの効用

今年の夏はさらにすさまじく、酷暑ですね。寝苦しいけどエアコンをつけると体が猛烈にむくむので、我が家ではベッドに竹シーツを敷き、窓を開けて寝ています。それでも汗が止まらず、夜中に何度も目が覚めるので、朝はぐったり。


でも、今朝は会議がある。ボーっとした頭をなんとかシャッキリさせなければ!というとき、シャワーで体をすっきりさせたあと、爽やかなシトラス系のフレグランスをふりかけると、頭の霧が晴れた心地になります。もっとダイレクトに、スーッとするミント系のアロマをかいでも効果的。嗅覚に脳は素早く反応してくれるので、香りの効用はあなどれません。


香りは気分や気持ち、そして記憶にもダイレクトに影響を与えます。たとえば、過去に親しかった人がいつもつけていた香りを、街で偶然かぐと、懐かしい気持ちとともにその人のことを思い出す、といった経験は誰にもあると思います。それくらい、香りって脳にインプットされるんですね。
アロマ人気が続いているとはいえ、日本人の生活にはまだ、香りは日常のものとして定着していないのが実態。でも、これほど自分にも他人の脳にも少なからず影響を与える香りの効用を、利用しないのはもったいない。


たとえばフレグランスの使い方は2種類あります。

ひとつは、行く場所や会う人、気候やそのときの気分で、フレグランスを変えること。頑張るときはシトラス、グリーン、アクア系などエネルギッシュな香り。優しくエレガントに装うときやフローラルなどの甘く華やかな香り、大人の女を演じるときはアンバー、ウッディなどスパイシーな香り…。香りのチョイスを変えて自分の気分を変える、という使い方は、TPOをわきまえた大人の使い方ともいえますね。
もうひとつは、いつも同じ香りを使う方法。これは、いつでも確固たる自分というスタンスを変えないという面ではかなり効果大。本人はその香りに「自分らしさ」、という安心感をおぼえ、周囲の人も、何度も香りをかぐことで、○○さんの香り、とインプットされ、やはり安心感をもつようになります。その香りが他人の記憶となって、何年か先にふと同じ香りをかいだとき、○○さんを思い出すこともあるでしょう。

 


ただし同じ香りをつけるばあい、その香りの特徴がその人のイメージに重なるので、自分のイメージ、たとえば家庭的な優しい女性なのか、甘さを抑えたクールな女性なのか、イメージされたいドンピシャの香りをみつけることがとても大切です。

香りの効能ならば、移り香というのもあります。たとえば、手首にさりげなく(たっぷりつけると香害です。香りは少量づかいが鉄則)お気に入りのフレグランスをつけて、たとえば気になる男性の肩に触ったり、握手をする。その香りが男性の肩や手にもほのかに残ると、分かれたあとに、あれ、このいい香りは確か…、とインプットされる可能性も大です。


フレグランスは、足首や膝裏、手首など血管が集まって温かい場所に少量つけると、ふんわり全身に香りをまとえます。耳の後ろでもいいのですが、自分にも他人にとっても鼻に近いの場所なので極少量が鉄則です。

ただしひとつ注意してほしいのは、フレグランスを臭い消しに使うこと。嫌な臭いを良い匂いでごまかす「マスキング」といわれる行為ですが、良い匂いは嫌な臭いを消す効果はありません。むしろ両方の臭いが混じって、さらに悪臭になる可能性も大なのです。


以前、私の前の席に座っている女性が、足の臭いをごまかすために爽やかなシトラス系のオードトワレをぬりつけたことがあります。すると、アルコールで揮発したシトラスの香りに足の臭いが混ざり、なんとも強烈な臭いを放ち、あたりに充満しました。彼女の足の臭いをかがされた周りはたまったものではありませんが、指摘するのも気が引けて、でも本人は香りで鼻が利かなくなっているために気づいていないのですね。


以来、彼女のイメージとその悪臭がセットになって、今だに記憶に残ってしまっています。香りは使い方を間違えるとコワイです。
嫌な香りは香りの元から消臭すること。フレグランスとはまったく別ということは覚えておいてくださいね。
さてこれから秋に向かっては、フレグランス系のボディミルクもおすすめ、お風呂上がりに全身につけると、トワレやパフュームよりも柔らかな香りが全身を包み、さらに肌をしなやかにし、乾燥も防げると一挙両得。
身の回りにある香り、この機会にもう一度見直してみてはいかがですか?

プロフィール

山崎多賀子
(やまざき たかこ)
山崎多賀子

1960年生まれ。
会社員、女性誌の編集者を経てフリーに。雑誌やwebなどで美容、健康記事や美容ルポルタージュ、エッセイなどを手がけ、各誌で活躍。2005年に乳がんが発覚、2006年から女性誌に闘病記を掲載し話題に。
また、美容ジャーナリストという職業と闘病経験を活かし、乳がん治療中もいきいきとキレイでいられるためのメイク法や検診の重要性などを各地で講演。
著書に『「キレイに治す乳がん」宣言!』(光文社)、『山崎多賀子の極楽ビューティ体験記』(扶桑社)がある。
NPO法人キャンサーリボン理事。NPO法人キャンサーネットジャパン認定乳がん体験者コーディネーター。

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