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生活習慣病は「笑い」で予防できる?

「笑い」の健康効果が近年、話題になっています。

なかでも健康長寿をおびやかす最大の要因といわれる生活習慣病の予防にも「笑い」は効果があるといいます。

笑うだけで予防できるのでしょうか?

 

大人になると笑う回数は激減

「笑い」が健康に及ぼす効果については、近年、多くの研究がされています。テレビやネット、書籍、雑誌などでも紹介されています。

ところが日常生活で「毎日、よく笑う」といった人は意外に少ないようです。

かつて子どものころは何がおかしいのか、身をよじるほど笑い転げていた時期もありました。個人差はあるにしても、いくつかの研究によれば子どものころに笑う回数は1日に数百回もあり、それが大人になるに連れ、数十回から数回に笑う回数が減少するという報告もあります。

なかには笑うのは週1回といった人もいるといいますから、「笑わない大人」はめずらしくないようです。

 日々のストレスや疲れなどのほか、それまでの豊富な経験によって物事への驚きや感動の鈍化や、認知機能の低下などが理由にあげられています。

 

「笑い」で生活習慣病が予防できる?

 そんな「笑わない大人」も含めて、大人がいちばん気になる病気、生活習慣病が、笑うことによって予防が可能だといいます。

 生活習慣病というのはご存知のように、偏った食事や運動不足、喫煙、過度な飲酒など「健康的とはいえない」生活習慣を原因として起こる病気のことで、がんや心疾患、脳血管疾患、糖尿病や肝硬変、腎不全などの病気があります。

日本人の2人に1人は生活習慣病といわれ、死亡原因の約5割は、がん、心疾患、脳血管疾患が占めているといいます。

 生活習慣病は死亡原因にもなりますが、生活の質(QOL)を低下させ、生き生きとした生活を送る妨げにもなることがいわれています。

「笑い」と生活習慣病の関係についても、近年、さまざまな研究がなされて、実際、「笑い」が心疾患や糖尿病などの生活習慣病の予防や治療に役立つことが報告されているようです。

 

「笑い」は血圧を下げ、免疫力をアップ

「笑い」は、主に循環器系、免疫系、内分泌系に関して、主に以下のような健康効果のあることがいわれています。

*「血圧を下げる」……大きな声で笑うと、おなかや横隔膜の筋肉が刺激され、腹式呼吸による深呼吸を繰り返すことになります。

腹式呼吸は胸式よりも多くの二酸化炭素を排出し、多くの酸素を吸入します。

これにより血管を拡張させる効果のある物質が分泌され、血圧を下げる働きをします。

*「脳梗塞や心筋梗塞の予防」……笑うことで血液をかたまりにくくする物質が分泌され、同時にこの物質によってコレステロールが動脈壁にしみ込むのを防ぐ効果も期待されるといいます。

*「免疫力のアップ」……「笑い」によって免疫細胞1つ「ナチュラルキラー(NK)細胞」が活性化。

体内に侵入したウイルスや細菌、微生物などから体を守ります。日々、生まれるがん細胞を破壊してくれることが知られています。

*「血糖値のコントロール」……よく笑う人ほど血糖値の上昇が抑えられるといいます。糖尿病は心疾患の危険因子。「笑い」にはその予防効果も。

 

ストレスや痛みの緩和など笑いの効用は無限?

これら以外にも「笑い」の効用はたくさんあります。

「脳の活性化」もよくいわれます。笑うことで脳の血流が増加して、記憶や意思、理性などをつかさどる海馬などが活性化。記憶力や思考力、認知力がアップするというのです。  

「幸福感が高まる」ともいわれます。「笑い」は鎮静作用があるエンドルフィンや幸せホルモンと呼ばれるセロトニン、意欲に関与するドーパミンなどの脳内伝達物質を分泌。幸福感をもたらしてくれます。同時に「ストレスの解消」「痛みの緩和」にもなるといいます。

また、よく笑う人はあまり笑わない人に比べて、うつになりにくいという報告もあります。「笑い」は「うつ予防」にもなるようです。

さらに「つくり笑い」でも「笑い」の効果はあるといいます。口角(唇の両端)を上げるだけでも脳は「笑っている」と錯覚するそうです。

「笑い」は自分だけでなく周囲も明るくさせます。笑いと健康の輪が広がっていくといいですね。

 

<参考>

*「笑いの健康効果」「笑いと生活習慣病予防」(公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット)

*「年の初めは笑いから」(一般財団法人 京浜保健衛生協会)

*「笑いと健康」(福島県立医科大学医学部疫学講座)

*「元気に笑って健康に」(社会福祉法人 恩賜財団 済生会)

*「笑いがもたらす健康効果」(沢井製薬株式会社)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。