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笑いが健康を連れてくる!

突然ですが、最近あなたが大笑いしたのはいつのことですか?
「え~と、それは……いつだっけ?」と思いだせない人も多いのではないでしょうか。
 子どものころは、ささいなことでもおなかがよじれるほど笑っていたのに、年齢を重ねるにつれ、素直に笑えなくなってくるようです。
 

笑う回数は大人になるほど減ってくる

ある調査によると、子どもは1日300回~400回ほど笑うのに対して大人が笑う回数はその20分の1以下なのだとか。そして70代になるとさらに減って、1日平均2回しか笑わなくなってしまうそうです。
 

自分はまだまだ若いけど、1日2回どころか、1回も笑わない日があるよなぁ……なんていう人もいるかもしれませんね。
そんな人は、意識的に笑うことを心がけてみるとよいかもしれません。
「笑顔は元手がいらない、しかも利益は莫大。与えても減らず、与えられたものは豊かになる」とは、アメリカの思想家デール・カーネギー(1888〜1955)の言葉。
 

笑いは最高のコミュニケーション手段といわれていますが、笑いの効用はそれだけにとどまりません。
近年では笑いと健康、病気との研究が盛んになり、笑いが心や体によい影響を与えることが医学的に実証されつつあります。つまり、笑いは心や体の健康に与える利益も莫大というわけです。
 

笑いの持つ驚くべきパワー

健康と笑いについて、さまざまな研究報告がされていますが、そのひとつが免疫力のアップです。
免疫という体を守るシステムは、数多くの 免疫細胞のチームプレイによって機能していますが、その中でもとくに重要な役割を担っているのがNK(ナチュラルキラー)細胞です。NK細胞はからだの中 を常にパトロ-ルしていて、がん細胞やウイルス感染細胞などを見つけると、単独でいち早く殺傷・破壊してくれます。
 

実は健康な人でも1日なんと5,000~6,000個ものがん細胞が発生するそうですが、それにもかかわらずがんらない人がいるのは、NK細胞の活性度が高いか低いかの違いによると考えられます。
そのNK細胞は、楽しいことで気分が高揚すると働きが高まり、落ち込んだり憂鬱な気分だと低下するといわれています。

実際ある調査では、漫才や漫談、喜劇などを見て大いに笑ったあとの人の血液を調べると、笑う前よりもNK細胞が活性化していることがわかりました。笑いは脳を刺激し、NK細胞を元気にする物質を分泌するからなのだそうです。
 

それだけではありません。笑いは、糖尿病患者の血中コレステロール値の改善を助け
心臓発作のリスク低減にもつながるとの研究も発表されています。さらに、リウマチ患者に対して行った研究では、笑ったあとは免疫バランスがとてもよくなったというデータもあります。
 

鎮痛効果や高齢者の認知症予防も

また、笑いは痛みに対しても有効で、笑うとモルヒネの数倍もの鎮痛作用のあるβエンドロフィン(別名脳内モルヒネ=快楽物質)もでてくることが知られています。
65歳以上の高齢者では、笑う頻度が少ないほど、認知機能低下症状ありの割合が多くなり、さらに、笑う頻度が少ない群ほど、1年後に認知機能低下症状が出現するリスクが高かったという報告もあります。
 

「笑い」という脳からの「快」情報の伝達は、ストレスを解消し、心身をリラックスさせる効果が大きいということです。
疲れているとき、落ち込んでいるときほど暗い表情になりがちなもの。そんなときはから、努めて口角をあげて笑顔をつくってみましょう。そんな作り笑いは意味がない? いえいえ、そんなことはありません。つくり笑いだって健康に効果があるそうです。

次回は「つくり笑いの効用」についてお話ししましょう。

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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