 
                            「休日の寝だめ」は健康を損なう?
ふだんの睡眠不足を補おうとして、休日は昼ごろまで寝ている人も多いのでは? そんな「寝だめ」の健康リスクがいわれています。
さらにその影響は休日明けまで及ぶといいます。どういうことでしょう?
睡眠時間が6時間未満の人が約4割
日本は先進国の中でも睡眠時間がもっとも短いことは広く知られています。OECD(経済協力開発機構)の睡眠時間の比較調査でも最低ランク。各国の平均より1時間ほど短いといわれています。
また厚生労働省の「令和5年 国民健康・栄養調査」によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は、男性38.4%、女性43.6%です。
年齢別では男性の場合、30~40代で4割を超え、50代は5割を超えています。女性でも40代と60代で4割を超え、50代に至っては6割近くを占めます。
20代でも男女ともに4割近くは睡眠時間が6時間未満です。
世代を超えて多くの人が睡眠不足を抱えているようです。
睡眠不足は多くの健康リスクをはらみ、さまざまな事故にもつながりかねないといわれているだけに単なる寝不足ですまない問題でもあります。
平日の睡眠不足は休日の寝だめで補える?
そうした平日の睡眠不足とたまった疲れを取り戻すかのように、休日、延々と寝続けて睡眠時間の帳尻を合わそうとする人も少なくないようです。
でも残念ながら、こうした「寝だめ」で睡眠を「貯める」ことはできないといいます。こうした「寝だめ」は日本に限ったことではないようで、国際的にも「Weekend catch-up sleep(週末の眠りの取り戻し)」などと呼ばれているようです(「健康づくりのための睡眠ガイド2023」厚生労働省)。
また、「ソーシャル・ジェットラグ(Social Jetlag)」「社会的時差ボケ」といった言葉もあります。
よく耳にする「時差ボケ」と同じようなもので、休日の朝寝坊、寝だめで起床時刻がいつもより遅れ、太陽の光を浴びるタイミングが平日とずれてしまい、それによって体内時計が混乱し、時差のある外国に旅行したかのような感覚に似ていることから、そう呼ばれているようです。
「ソーシャル・ジェットラグ」の影響は?
週末(休日)の2日間、朝寝坊をしただけとはいえ、時差ボケでずれてしまった生活リズムをもとに戻すのは容易ではありません。休み明けの数日間、眠気や倦怠感、だるさなどを引きずることもあるといいます。
さらに毎週末、寝だめ・遅起きをしていると時差ボケは毎週のように引き起こされ、生活リズムのずれによる負担は体に大きな影響を及ぼします。
厚生労働省によれば、ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)は、「慢性的な睡眠不足による健康への影響」とあわせて、「体内時計のずれによって生じる健康への悪影響」といった2つの側面をもち、中長期的には「肥満や糖尿病などの生活習慣病や脳血管障害、心血管系疾患、うつ病などの発症リスク」になることが報告されているようです。
また、40~64歳を対象にした調査によると、平日に6時間未満の睡眠時間の人が休日の寝だめをした場合、寿命短縮のリスクが高まるといいます。
このように寝だめ・遅起きでは日ごろの睡眠不足を解消できないどころか、むしろ心身の健康を損なう危険のあることが分かります。
ソージェット・ジェットラグを予防するには?
ソーシャル・ジェットラグを防ぐにはどうすればいいのか?
まずは休日・週末の寝だめ・遅起きをやめることです。平日、休日の別なく、毎日、同じ時間に起きることが大切といわれます。
ただ、睡眠時間が短くて、日中に眠気を感じる場合は、昼過ぎの1時~3時の間に10~20分程度の仮眠を取るのがいいとされます。3時をすぎてからの昼寝は夜の睡眠に影響し、寝つきを悪くするといわれます。
また、よくいわれていることですが、寝る前にスマホを操作するのはやめるのがいいようです。
スマホの操作によって脳が覚醒し、睡眠・覚醒のリズムを調節するホルモンのメラトニンの分泌を低下させるといいます。
朝日を浴びるのも効果的だとか。体内時計がリセットされると同時に、頭をスッキリさせ、気持ちを安定させる幸せホルモンのセロトニンの分泌が促されます。 さらにそのセロトニンを原料にしたメラトニンの分泌も増え、睡眠の質が向上するといわれます。
秋から冬は1年でいちばん睡眠時間が長くなるそうです。
秋の夜長、スマホは置いて、睡眠をたっぷり取り日頃の疲れを癒そうではありませんか。
<参考>
*「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(厚生労働省)
*「『寝だめ』の思わぬ落とし穴⁉︎不規則な睡眠が招く社会的時差ぼけ(ソーシャル・ジェットラグ)とは/サワイ健康推進課」(沢井製薬株式会社)
*「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)とは?寝だめによる体内リズムの乱れ」(大塚製薬株式会社)
*「睡眠の質も上がる?『幸せホルモン』の正体とは?」(西川株式会社)
*「昼寝の効果的な取り方とは?昼寝に適した睡眠時間やコツを解説」(アリナミン製薬株式会社)





