気になる更年期と漢方療法
さまざまな不調があらわれる更年期。
更年期障害の治療法としてHRT(ホルモン補充療法)とともに広く取り入れられているものに漢方療法があります。どんなものなのでしょう?
そもそも漢方って?
西洋医学と漢方医学はどう違うの? と疑問に思う人も多いかもしれません。
西洋医学は「頭痛がする」「腹痛がある」といった症状が出たときに、症状の原因となる部位を特定して治療を行っていきます。
一方、漢方医学では西洋医学のように局所的な病気とはとらえず、病気や不調はこころを含めた全身的な「体内バランスの乱れ」ととらえるそうです。
このように漢方医学には、たとえはっきりした病気ととらえなくても「心身のバランスの崩れ」は「未病」という考え方を取り入れて、全体のひずみを整えていく治療を行います。
例えば、不定愁訴や冷え性、虚弱体質、食欲不振、便秘、イライラや不眠などは漢方が得意とする分野だそうです。
さらにホルモンのアンバランスや自律神経の乱れによって起こる更年期障害は、漢方のもっとも得意分野の1つだといわれています。
体全体のバランスを調える
漢方医学では「血のめぐりが悪くなった状態」を「於血(おけつ)」といい、月経痛やPMS(月経前症候群)など月経にまつわる女性特有の症状や更年期障害なども、「於血によるもの」と考えます
そのため漢方医学では、その人の証(しょう=体質・体力などの状態を表す)や症状にあわせて、於血を改善する「駆於血剤(くおけつざい)」を使って体の機能を全体的に調整していくそうです。
於血を改善する代表的な漢方薬で、婦人科3大処方と呼ばれるものには、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などがあり、月経不順や月経痛、更年期障害、冷えやむくみなど、女性特有のさまざまな不調に対して用いられるといいます。
ほかにも、イライラしたり攻撃的になる、疲れやすいなど、その人の症状に応じた漢方薬が処方されます。
HRTとの併用もできる
「HRT(ホルモン補充療法)は、使いたくない」という人や、例えば乳がんの既往があるなどで「HRTは使えない」人は、更年期を漢方療法で乗り切るとよいかもしれません。
さらに漢方療法では、その人の「証」や症状に合った処方をするので、メインの症状だけでなく、例えば風邪をひきにくくなったなど、ほかの症状も改善されることがあります。
また、更年期障害の治療はHRTだけ、漢方療法だけと決めなくても、HRTと漢方を併用して治療ができるといいます。
症状が重い人は漢方に詳しい婦人科医師に相談して、両方をうまく使いながら、更年期を上手に乗り切れるといいですね。
<参考>
※『更年期障害 これで安心』(小学館 堀口雅子著)
※『ウィメンズメディカ』(小学館)
※『予防と健康の事典』(小学館)





