プラスコラム
PLUS COLUMN

残暑バテで免疫力低下していませんか?

9月になっても連日の暑さ。残暑バテしている人も多いのではないでしょう。

じつは暑いときほど免疫力が低下するのをご存知でしょうか。

感染症が同時流行中

暑さ続きで気をつけたいのは熱中症ばかりではありません。百日ぜきや新型コロナの変異株といわれるニンバス、溶連菌感染症など、夏からさまざまな感染症が同時流行しているようです。

 感染症の流行時期というと、免疫力が低下するといわれる冬を思い浮かべる人が多いようです。けれども1年を通して免疫力がもっとも低下するのは、じつは夏なのだそうです。

 

暑さと免疫力低下の関係

でもなぜ暑さが続くときは免疫力が下がってしまうのでしょう。

それにはさまざまな要因が関係しているようです。

例えば冷房のよく効いた室内と暑い屋外を行き来して急激な寒暖差にさらされると、自律神経のバランスが崩れて免疫力が低下するといわれています。

また睡眠不足や食欲不振による栄養不足も免疫力を低下させる要因に。

 さらに冷えたビールやアイスクリームなど、冷たいもののとりすぎも、胃腸に大きな負担をかけるために免疫力の低下に拍車をかけるといわれています。

 こうした生活を続けた結果、夏の終わり頃には、免疫力が大きく低下した状態になってしまうようです。

 

腸は異物の侵入を防ぐ「体の番人」

 免疫力が低下すると、さまざまな感染症にかかりやすくなったり、症状が重くなったり、治りにくくなるといわれています。

 さまざまな感染症が流行している今、免疫力を高めるにはどうしたらよいのでしょうか。そのカギを握るのが「腸活」だといわれています。

 ご存知の方もいらっしゃると思いますが、腸は最大の免疫器官だといわれていて、体の免疫細胞の6割~7割が集まっているともいわれています。

 そもそも腸には、食べたものを消化・吸収する大きな役割があります。

しかし口から入るのは食べ物だけではありません。ウイルスや病原菌、化学物質などのさまざまな有害な異物も一緒に取り込んでしまう危険に晒されています。

これらの異物から身を守るために、腸内にはウイルスや病原菌と戦う免疫細胞や抗体が多く存在し、有害な物質の侵入を防いでいるといいます。

 腸は、いわば体の番人として、異物が侵入しないように懸命に守ってくれているのです。

 

腸内細菌は「多様性」が重要

ではどのような「腸活」をして、腸内の免疫細胞を活性化すればよいのでしょうか。

かつて腸内細菌は「善玉菌、悪玉菌」といった捉え方をされていたときもありましたが、研究が進められるうちに、悪玉菌の中にもよい働きをするものがあるなど、一概に善悪を区別できないことがわかり、最近では腸内環境は多様性が重要だとされるようになったそうです。

つまり、腸内にはさまざまな種類の菌がバランスよく生息しており、それらの菌の割合が腸内環境を左右し、健康のカギを握ると考えられるようになったのです。

 

免疫力UPは食事の見直しから

腸内環境を健全に保ち多様性を維持するなら、まずはバランスの良い食事を取ることが大切だといわれています。

腸内細菌は私たちが食べたものをエサにしています。偏った食事をしていると、それをエサにする特定の腸内細菌がどんどん増えてしまうからです。

そのうえで腸内でヒトに有益な効果を与える有用菌(プロバイオティクス=ヨーグルトや納豆、ぬか漬けといった発酵食品)と、腸内で有用菌の餌となるもの(プレバイオティクス=食物繊維やオリゴ糖など)を、あわせて両方摂取するとよりよい効果が得られるといいます。

食生活は腸内環境にダイレクトに影響します。残暑が厳しいと、食事の内容がおろそかになったり食事を抜いてしまいがちですが、3食バランスよく食べて感染症に負けない体をつくりましょう。

 

<参考>

※「免疫と腸内環境のふか~い関係」(栄養と料理/2023.12月号 女子栄養大学出版部)

※「腸内環境を整えて免疫をケア」(生活習慣ケアコラム 大正製薬株式会社)

※「免疫力を維持して厳しい季節を乗り切る」(医療法人 澄心会 豊橋ハートセンター)

※「腸内細菌叢のバランスを整える食事」(栄養コラム 株式会社ニップン)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。