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更年期に気になるドライシンドロームとは

更年期に乾燥するのはお肌だけではありません。「なんだか体中が乾燥しているみたい」と感じることはありませんか?

 

女性ホルモンの低下が影響

 「ドライシンドローム(乾燥症候群)」という言葉をご存知でしょうか。

ドライシンドロームとは、お肌はもちろん、目の乾燥(ドライアイ)や口の乾き(ドライマウス)など、体のさまざまな場所が乾燥している状態を指すそうです。

 ドライシンドロームが起こる背景には、ストレスや自律神経の乱れ、加齢、唾液や涙、汗といった外分泌腺の機能低下、病気などが関わっているそうですが、更年期以降の女性は女性ホルモンの低下が大きな要因になるといわれています。

 女性ホルモンは、肌の弾力や水分を保つ働きがありますが、粘膜を保護してみずみずしく保つ重要な働きもあります。

更年期を迎えると卵巣機能が衰え、女性ホルモンが急激に減少していくために、粘膜のみずみずしさも失われていきます。そのために、皮膚とともに目や口、鼻、デリケートゾーンなど全身の粘膜も乾燥しやすくなるといいます。

 

乾燥による目や口、鼻の不快な症状

粘膜の乾燥トラブルは、つらくて寝込むような病気ではありませんが、1日中さまざまな不快感がつきまといます。

例えば目が乾燥して目の粘膜が荒れた状態になる「ドライアイ」では、目がゴロゴロしたり痛みがあったり。ひどくなると目をあけていることさえつらくなるといいます。

また、鼻粘膜が乾燥する「ドライノーズ」になると、鼻の中がムズムズしたり、ヒリヒリしたり。ちょっと触れただけで鼻血も出やすくなるそうです。

口の中が乾燥する「ドライマウス」が起こると、しゃべりにくくなる、乾いた食べ物が食べにくく飲み込みにくい、また口が乾燥しているために口臭などトラブルも出てきます。

 

専門の診療科で原因のチェックを

不調が出てくると「更年期のせい」にしがちですが、目や口、鼻などが乾くときには「シェグレーン症候群」という内科的な病気が隠れていることもあるそうです。

症状が気になったり続くときには、ドライアイなら眼科、ドライマウスは歯科や耳鼻咽喉科、ドライノーズは耳鼻咽喉科など専門科を受診して原因をチェックしてもらいましょう。

 

デリケートゾーンの不快症状

眼や口、鼻などの乾燥も不快ですが、デリケートゾーンの不快感も深刻です。

閉経が近づいてエストロゲンが低下すると、外陰部や腟の粘膜が萎縮して薄く弱くなり、腟部の違和感や乾燥感、ヒリヒリ感、性交痛、頻尿、尿もれなど、さまざまな不快症状が出てきます。

これを「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」というそうです。

GSMは以前は「萎縮性腟炎」とか「老人性腟炎」などと呼ばれていましたが、2014年に新たな概念として提唱されました。

 

婦人科で相談を

デリケートゾーンの不快感や頻尿・尿もれなどは、これまでは「年齢のせい」とあきらめていた人も多いようです。けれども、これらの症状はほうっておいても自然に治ることはないそうです。

GSMに対しては、ホルモン補充療法やレーザー治療、潤滑剤・保湿剤の使用などさまざまなアプローチで改善が期待できるそうですから、迷わず婦人科で相談を。

 

女性ホルモンの低下によって起こる更年期の不快な症状は、QOL(生活の質)を低下させるので我慢は禁物。医療機関を受診して、前向きに対処していきましょう。

 

 

<参考>

※『ウィメンズ・メディカ』(小学館)

※『更年期障害 これで安心』(小学館 監修/堀口雅子)

※「体が乾く「ドライシンドローム(乾燥症候群)」(キッセイ薬品工業株式会社)

※「GSMの症状と治療法」(久光製薬株式会社)

※「ドライマウス」(テーマパーク8020 日本歯科医師会)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。