胃の内視鏡検査は怖くない
日本人に多い胃がん。あなたは大丈夫?
胃の粘膜にできる悪性腫瘍が胃がんです。かつて、胃がんは日本人のがんのトップを占めていました。最近では食生活の改善、検診の普及や診断・治療といった医療技術の進歩などで減少傾向にあるのですが、それでも胃がんは日本人に多いがんであることに変わりはありません。
胃がんは、早期の段階ではほとんど症状がありませんが、胸やけやゲップ、胃の不快感、胃の痛み、食欲不振、吐き気などがみられることがあります。
これらの症状は、胃炎や胃潰瘍など、胃がんでなくてもあらわれる症状です。
またはっきりとした症状としてあらわれることもないので、ついそのままにしておいて、気づいたときにはがんが進行しているケースが少なくありません。とくに主婦の方は、健診を受ける機会が少ないものです。また、子どもや夫などの家族の健康に注意をしていても、自分の健康のことはつい後回しにしがちです。胃の調子がおかしいときは、市販薬だけに頼っていてはいけません。必ず一度は受診をして、病気の有無をチェックしてください。
私のクリニックでも、昨年、胃の異常を訴えて来院した方の中に4人ほど胃がんがみつかりました。いずれも30代の女性です。胃がんは40代ころから増えてきますが、「若いから私は大丈夫」と安心はできません。
もう怖くない! 「痛くない」、「つらくない」胃内視鏡検査
胃の検査は、X線検査、内視鏡検査などを行います。X線検査は、バリウムという白い造影剤をのんで体位を変えながらさまざまな角度からX線撮影を行います。
一方内視鏡検査は、一般的に胃カメラと呼ばれているもので、細い管(内視鏡)を口から胃に送りこんで、直接胃の粘膜の状態を観察します。(注:現代の内視鏡は、電子スコープと呼ばれ、先端にもはやカメラはついていません。)
内視鏡検査は、X線検査に比べて胃の粘膜の微細な色調の変化や凹凸なども観察でき、病気を疑う箇所があれば細胞を採取し顕微鏡でみて診断ができるので、早期胃がんの発見・診断に大変有効です。
また、ポリープなどがあればその場で取り除くといった、治療も同時に行えます。胃がんのリスクを高めることで知られている「ピロリ菌」の検査もできます。さらに、X線のような放射線の被ばくがないので妊娠の可能性のある女性も安心して受けられる点も大きなメリットでしょう。
胃がんの早期発見に威力を発揮する内視鏡検査ですが、「怖い」「痛い」「つらい」というイメージがあって敬遠する人も多いようです。実際、内視鏡を口から飲み込む際に、嘔吐反射が起こり「おえっ」「げー」とえづいて苦しい思いをしたために、二度とこんな思いはしたくないと考えている人も少なくないはず。でも、最近は苦痛のない内視鏡検査ができるようになりました。
経鼻胃内視鏡検査といって、非常に細い内視鏡を鼻孔から挿入して行う検査で、麻酔をして行うので痛みもありませんし、「おえっ」いう嘔吐反射も起こりません。また口は自由に動かせますから、モニターに映る胃の様子をみながら医師に質問をしたりして、医師とコミュニケーションがとれる点も大きな特徴。医師と話すことで検査に対する恐怖感が薄れ、リラックスして受けることができます。
ただし、この検査は、鼻粘膜浮腫が強い人や小顔で鼻の奥が狭い人には不向きかもしれません。そのような場合は、麻酔をかけて眠っている間に口から胃内視鏡を行うこともできます。
早期発見のためには年に1度の定期検診が大事
今や痛くない、苦しくない胃内視鏡検査ができるようになりました。これまで胃内視鏡検査でひどいめにあって「もう二度と受けたくない」と考えている方は、ぜひこの検査法を試してください。
胃がんは早期に発見すれば高い確率で治るがんです。ピロリ菌を持っている人や父母やきょうだい、祖父母など家族に胃がんになった人がいる場合は、年に1回定期検診を。また35歳を過ぎたら、とくに自覚症状がない人も、年に1度胃の検診を受けましょう。胃の病気は、食生活やストレスも密接にかかわっています。自分の健康状態を知り、隠れた病気を発見するためにも定期検診は大事です。