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過敏性腸症候群

こんな症状ありませんか?

通勤電車でおなかが痛くなって何度も途中下車をしたり、会議やプレゼンテーションの直前に急な腹痛が起こったり……。過敏性腸症候群は、病院で検査を受けても何も異常は見当たらないのに、便通異常や腹痛などが繰り返し起こる病気。腸の症状を訴えて受診する人の多くが過敏性腸症候群だといわれています。

いろいろなタイプがありますが、便通の状態によって大きく分けると次の3タイプがあります。

(1) 下痢型

おなかが痛くなって、しょっちゅう下痢をするタイプ。とくに食事後すぐに下痢が起こり、毎食後トイレに駆け込むという人が少なくありません

(2) 便秘型

おなかが苦しくなって、便意があるのに便が出にくくなります。便が出てもウサギのフンのように硬くてコロコロしています。男性よりも女性に多くみられるタイプです。

(3) 便秘と下痢の混合型

便秘と下痢を交互に繰り返すタイプです。
便通異常のほかにも、おなかがゴロゴロ鳴る、ガスがたまって苦しい、排便のあとに便が残っている感じがする(残便感)など、腹部の不快症状も多い訴えです。こうした症状は、朝は強く夕方には軽くなったり、就寝中や週末などリラックスしているときには起こらないのが特徴です。

ストレスが大きな原因

おもにストレスが原因とされています。脳腸連関といって、脳と腸にはよく似た神経細胞が分布していて、自律神経でつながっています。脳がストレスを受けると、自律神経を介して腸にも伝達され、腸のぜん動運動や分泌機能が乱れてしまうのです。
また過敏性腸症候群は、胃腸が弱いなど、その人のもともとの体質に根ざすことも多いものです。


でも、便秘や下痢は病気の一症状として起こることが少なくありません。おなかの調子が変だなと思ったら、市販薬に頼らずに、一度は消化器系の検査を受けて、病気の有無をチェックしてもらうことをおすすめします。
検査で過敏性腸症候群と診断されたら、何よりもまず生活習慣の改善が治療の基本になります。また、腸の働きを整える薬や症状によっては精神安定剤などが処方されます。人間関係や仕事のストレスが大きいときには、カウンセリングを受けることでストレスの対処法が見つかることもあります。


突然の下痢や腹痛が起こって苦労した経験があると、その不安感から自律神経のバランスが崩れて症状がひどくなるといった悪循環が起こりがちです。いずれは治るものと、おおらかに考えて、あまりおなかのことを意識しすぎないようにしましょう。実は私自身、子どものころは、運動会や発表会の前は決まっておなかが痛くなったりしたものです。でも結婚をして、子どもを産んでとライフイベントを重ねていくうちに、いつのまにか症状が消えていきました。過敏性腸症候群を治そう、ストレスをなくそうとやっきにならず、しばらくは上手につき合っていくことも考えてみましょう。

下痢型の人のセルフケア

(1) 朝の排便のリズムをつかもう

下痢型の人は、食べるとすぐにトイレに行きたくなることが多いものです。通勤のバスや電車に乗るとおなかが痛くなるという人は、早めに起きて食事、トイレをすませてから学校や会社に出かけるようにしましょう。

(2) 香辛料の強いもの、冷たいものは避ける

各種の香辛料やアルコール、冷たい飲み物、脂っこいものものなどは、下痢を悪化させるので、できるだけ控えましょう。

(3) 裏技は「ビオフェルミン」

「これから大事な仕事があるのに、おなかが痛くなったらどうしよう」といったときは、乳酸菌配合の市販の整腸薬「ビオフェルミン」をのむ裏技があります。一般に市販薬の下痢止めは飲むとおなかが張ってくることが多いのですが、この薬は乳酸菌を配合しているのでおなかが張る心配はありません。こころもち多めに服用すると便がかたまります。

便秘型の人のセルフケア

(1) からだをあたためよう

便秘型の人は、根本に冷えがあることが多く、便秘のほかにも生理痛で悩んでいる人が少なくありません。そこでまず冷えを克服することを心がけましょう。冷え対策のポイントは、何より下半身をあたためること。とくに寒い季節は腹巻きや毛糸のパンツなどでしっかりと腰回りをあたためましょう。夏も冷房対策を忘れずにしてください。また「年間を通して入浴はシャワーだけ」という人が多いものです。でも、シャワー派の人ほど「冷え」「便秘」の悩みをあわせてもっている人が多いのです。からだをじっくりあたためて全身の血行をよくするには、夏でもバスタブにゆったりとつかることをおすすめします。湯船の中で、おなかを「の」の字にマッサージするのも効果的です。

(2) 根菜類を食べよう

便秘解消には、繊維質の多い食品をとることが大事です。根菜類は繊維質が豊富なだけでなく、からだをあたためる効果もあります。煮物や具だくさんの味噌汁などで、根菜類を積極的にとりましょう。

便秘と下痢の混合型の人は、そのときの腸の状態にあわせて、食べ物を選択してください。このほか、自律神経を整えるには、規則正しい生活を心がけて睡眠・休養を十分にとることが欠かせません。また、適度な運動をしたり、意識的にリラックスタイムを設けるなどして心身をリラックスさせることも大事です。仕事に追われる現代人には、なかなかむずかしいことかもしれませんが、今の生活を見直して、できることから少しずつはじめてみませんか?

プロフィール

瀧野 敏子 先生
内科・消化器科
瀧野 敏子 先生

ラ・クォール本町クリニック院長
NPO法人 イージェイネット 代表理事
NPO法人 女性医療ネットワーク 理事
日本内科学会総合認定専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会指導医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
日本ホメオパシー医学会認定医
英国FACULTY OF HOMEOPATHY,MD LFHom(Med)
米国内科学会正会員

1981年 大阪市立大学医学部卒業 東京女子医科大学研修医
1983年 東京女子医科大学助手
1984年 国立小児病院研究医
1987年 淀川キリスト教病院(消化器科医長)
2004年 ラ・クォール本町クリニック(大阪・本町)開設
2005年 内閣府認証 NPO法人イージェイネット設立

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