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女性のための検診を受けよう 「まさか、私だけは……」なんて思っていませんか?

TV番組がきっかけとなって乳がんが発見されたタレントの山田邦子さん、子宮頸がんと闘っていた、ZARDの坂井泉水さん。
最近は、若い世代に、乳がんや子宮がん、卵巣がんなどが急増しています。


現在、乳がんは、日本女性がかかるがんの第一位。しかも、日本では、30代、40代の若い年齢層に多いことが、大きな特徴です」と対馬ルリ子先生はいいます。ライフスタイルや生活環境の変化などから、20代、30代の女性にも増加中の子宮や卵巣、そして乳房の病気。
とくに深刻なのが、女性の命を脅かす「がん」。中でも最近急増しているのが、乳がんなのだそうです。「かつて日本人には少ないといわれていた乳がんは、ここ数十年で右肩上がりに増えて、今や年間4万人もの人がかかるといわれています。

性行為と関わりの深い子宮頸がん

さらに最近では、かつては減少傾向にあった子宮がんが、徐々に増加傾向に転じているそうです。 「子宮の入り口付近にできる子宮頸がんは、性行為によって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が原因であることがわかっています。つまり、性体験がある人は、誰でも子宮頸がんにかかるリスクがあるということです。

アメリカでは、すでにHPVのワクチンが開発されていて、がん予防のために女の子は全員、HPVのワクチンを受けようという流れになっていますが、残念ながら、日本ではこのワクチンはまだ認可されていません。でも、子宮頸がんは、検診を受けることで、がんになる前の『前がん状態』で発見することが可能です」。

卵巣がん、子宮体がんも若年化の傾向に

性行為の若年化によって、増えている子宮頸がん。そして子宮体がんもまた、若い年代に増えてきているといいます。
「子宮の奥にできる子宮体がんは、40代~60代に多いがんですが、現在では30代で発症することもまれではありません。それは卵巣がんも同様です」。昔の女性が、一生涯に迎える月経の回数は、せいぜい40~50回程度。しかし晩婚化や少子化が進み、女性の平均寿命が延びた現在では、女性が一生涯に迎える月経回数は、およそ500回にもなります。

こうした女性のライフスタイルの変化が、子宮体がんや卵巣がん、そして乳がんの増加にも深くかかわっているといわれています。

女性検診を年に1度の習慣に

健康診断は、男性も女性も同じ検査項目を一律に受けていますが、 「それでは、不十分」と対馬先生はいいます。たとえば、甲状腺の病気や膠原病は、男性に比べて圧倒的に女性に多い病気。でも、一般の健康診断の検査項目には入っていません。

また、女性の場合は婦人科検診がありますが、子宮頸がん検査は行っても、体がんや卵巣がんの検査は行われていないことがほとんどです。30代から増える乳がんも、自治体で行う検診では、40歳以上を対象にしているところが多く、職場検診では、視触診だけだったり、乳がん検診そのものが、検査項目に入っていないことが多いようです。


女性は、個々のライフスタイルや年代によってもかかりやすい病気が違います。自治体や職場の健診項目に含まれないものは、個人負担でも検診を受ける積極的な姿勢が大切です。
快適にイキイキと自分らしい人生を送るにも、年に1回は、自分の年代やライフスタイルにあった女性検診を受けることをおすすめします」。

プロフィール

対馬 ルリ子 先生
産婦人科
対馬 ルリ子 先生

日本産婦人科学会認定医、日本思春期学会理事、日本性感染症学会評議員、女性医療ネットワーク発起人代表。

2003年、女性の心とからだ、社会とのかかわりを総合的にとらえ、健康維持を助ける女性専門外来をすすめる会「女性医療ネットワーク」を設立。『「女性検診」がよくわかる本』(小学館)ほか著著も多数。近著に『娘に伝えたいティーンズの生理&からだ&ココロの本』(かもがわ出版)がある。

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