
科学的根拠のあるがん検診とは
日本ではがんにかかる人が増え続けて、1981年から44年の間、日本人の死亡原因の第1位になっています。
有効な対策はがん検診だといわれています。
みなさんはがん検診を受けていますか?
低い日本のがん検診受診率
今や日本人の2人に1人は生涯のうちにがんになり、3人に1人はがんで死亡しているといわれる時代。がんは「誰でもかかる可能性のある身近な病気」といわれるようになりました。
それにも関わらず、日本のがん検診の受診率は、欧米に比べて低いことが問題になっているといいます。
2016年に実施された「国民生活基礎調査」によると、男性のがん検診受診率は、胃がん、肺がん、大腸がんが4~5割程度、女性の場合は、乳がん、子宮頸がん検診、胃がん、肺がん、大腸がんの検診受診率は3~4割台でとどまっています(平成28年度「国民生活基礎調査より」)
なぜがん検診を受けない理由
でもなぜがん検診を受けないのでしょうか?
厚生労働省の資料によると、がん検診を受診しない理由の上位5つは「受ける時間がないから」「健康状態に自信があり、必要性を感じないから」「心配なときはいつでも医療機関を受診できるから」「費用がかかり経済的にも負担になるから」「がんであると分かるのが怖いから」となっています。
「自分にあてはまる」という人も多いのではないでしょうか。
症状がでなくてもがんになっている可能性がある
がんになれば体重が減ったり出血するなど、何かしら症状が出るはずだからそのときに医療機関を受診すればよい、と思う人もいるかもしれません。
けれども多くの場合、がんの初期には自覚症状がほとんどなかったり、またわかりにくかったりして、初期段階ではなかなか気づきにくいといわれています。
自覚症状があるときには、すでにがんが進行していることも少なくないそうです。
自覚症状がない健康な人が対象
かつては「不治の病」といわれていたがんですが、現在では、早期に発見し治療を開始することで克服できるがんが増えているといいます。
命を守るためにも、早期のうちにがんを見つけて治療をしたいものですね。
そのために有効なのが「がん検診」です。
がん検診の目的は、まだ症状が出る前の早期のがんを発見して、早期のうちに治療をすることにあるそうです。
したがって、何かしら症状がある人は、検診を待たずにすぐに医療機関を受診してより詳しい検査と診断が必要だといいます。
がん検診はとくに自覚症状のない健康な人を対象としています。
「健康だからがん検診は必要ない」と考えるのではなく、「健康なときこそがん検診が必要だ」と考えたいですね。
定期的に受けてほしい「対策型がん検診」
がん検診にはさまざまなものがありますが、国が推奨しているがん検診は「胃がん検診」「肺がん検診」「大腸がん検診」「子宮頸部がん検診」「乳がん検診」の5つで「対策型がん検診」といわれています。
実はがん検診にはメリットだけでなくデメリットもあるといいます。
例えば、「偽陽性」といって、実際はがんではなかったのにがん検診で「がんの疑い」と判定されてしまうと、再検査による体への負担や心理的な負担もかかります。
また、がんが見つけにくい場所にあったり、小さかったりすると検査を受けてもがんを見逃してしまうこともあるそうです。
さらに、命を脅かさないがんを見つけてしまう「過剰診断」の問題もあります。治療の必要のないがんを見つけた場合、本当に治療しなくてもよいかを正確に識別することは難しいそうです。そのため治療が行われますが、結果的に本来は不要な治療である可能性もあります。
検査によって身体に負担がかかったり、例えばまれに胃内視鏡検診で出血や穿孔(消化管の壁に孔があいてしまう)といったトラブルが起きる可能性もあるといいます。
科学的に立証されたがん検診
しかしこのようなデメリットがあっても、国が推奨する対策型検診(胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸部がん、乳がん)は、メリットがデメリットを上回るといいます。
また、決められた年齢と決められた間隔で受診することにより死亡率が減少することが科学的に立証された、効果的ながん検診であることが知られています。
対策型検診は、市区町村が行う住民検診や職場で行われる職域検診などで受診できます。
がんになる人は年間100万人以上と推計されています。自分の健康を守るためにも定期的にがん検診を受けたいですね。
<参考>
※「がん検診について」(がん情報サービス 国立研究開発法人国立がん研究センター)
※「早期発見・早期治療につなげるために 正しく知ろう!がん検診」(厚生労働省)
※「知っておきたいがん検診」(公益社団法人 日本医師会)
※「がん検診」(公益財団法人 がん研究振興財団)