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睡眠障害に悩んでいませんか?

日本人の4人に1人は睡眠に関する悩みを抱えているといわれるほど。さまざまなタイプの睡眠障害がありますが、不眠の原因の中でも多いのが、生活リズムの乱れから起こる生理的な要因とストレスなどから起こる心理的な要因です。

4人に1人は不眠に悩んでいる

疲れているのに眠れない、夜中に目覚めてしまうなど、あなたは睡眠障害に悩んでいませんか? 夜眠れないと「自分だけが……」と孤独な気持になりますが、日本人の4人に1人は睡眠に関する悩みを抱えているといわれるほど不眠は多い悩みなのです。さまざまなタイプの睡眠障害がありますが、大きく分けると次の3つのタイプがあります。

1 なかなか寝付けない――入眠障害

ベッドに入ってもなかなか寝付けません。「眠らなくては」とあせればあせるほど目がさえてしまい、イライラがつのります。不眠症ではもっとも多いタイプです。

2 夜中にしばしば目が覚めて寝付けない――中途覚醒

眠りに入った後も、ちょっとしたことで夜中に目が覚めて、その後眠りにつくのが難しいタイプです。お酒を飲んだときやうつ病が背景にあることもあります。

3 早朝に目が覚めてしまう――早朝覚醒

眠りが浅くて3時、4時など明け方に目が覚めてしまいます。高齢者に多くみられますが、うつ病などでも起こります。

不眠の原因となる5つの「P」

睡眠障害の原因としては、それぞれの頭文字をとった「5つのP」があるといわれています。中でも多いのが、生活リズムの乱れから起こる生理的な要因とストレスなどから起こる心理的な要因です。

1 生理学的要因(Physiological)

時差ボケやシフト出勤など生活リズムのズレから起こる。

2 身体的要因(Physical)

痛みやかゆみ、頻尿など身体的な要因で起こる。

3 心理的要因(Psychological)

つらいことや心配事、不安、ストレスがあるとき、ショックを受けたときなど。

4 薬剤性の要因(Pharmacological)

薬の服用やコーヒーなどのカフェインのとりすぎ。煙草、アルコールなどが原因で起こる。

5 精神医学的要因(Psychiatric)

うつ病、統合失調症、アルコール依存症など心の病気の一症状として起こる。

不眠が続くときは、早めに医師に相談を

睡眠障害があるとつらいですね。2~3日の不眠なら誰でもありますが、眠れない日が続いて仕事や日常生活に差し支えたり、不眠以外にも食欲がない、気持ちが落ち込むなどの症状があるときには、ぜひ心療内科や精神科、睡眠外来などを受診して相談することをおすすめします。
睡眠時間は個人差が大きいものですが、成人に必要な睡眠時間は5~8時間。睡眠時間が5時間より短い場合は、健康にも影響が出てくるといわれています。不眠は適切に対処すれば確実に改善しますから、早めに治療を受けて心地よい眠りを取り戻しましょう。

睡眠薬を不安がることはありません

不眠の背景に病気があるときには、まず病気の治療をすることが基本になります。不眠に対しては睡眠薬を用いて治療します。そのほか、必要に応じてビタミンB12の投与や光療法などを行う場合もあります。
ところで、睡眠薬というと「依存性があるのでは」と心配になる人も多いようですね。けれども、現在の睡眠薬では依存性はおこりにくいものが多く、また「睡眠薬を使うと、早くボケる」というのも誤りで、医学的な根拠はありません。医師の指示に従って適正量を守ってのんでいれば、長期間のんでも大丈夫で、大きな副作用の心配もありません。質のよい眠りをとり戻すためにも、睡眠薬を上手に使ってください。
睡眠薬にもいろいろ種類がありますから、自分にあったものを選ぶことが大切です。たとえば処方された睡眠薬を飲むと朝ボーっとしてしまうなど、気になることがあるときには遠慮なく医師に相談し、薬を調整してもらいましょう。

セルフケアで心地よい眠りに

不眠はストレスや生体リズムを無視したライフスタイルによって起こることが多いものです。眠れない夜が続くときは、生活習慣や眠りの環境をもう一度見直してみましょう。

<不眠対策8つのポイント>

1 アルコールをとりすぎない/寝酒はやめる

なかなか眠れなときにアルコールをのむ人も多いようですね。でも、寝酒をすると眠りが浅くなって夜中に目が覚めるなど、かえって不眠を招く結果になります。また、連日の飲酒でアルコール依存になる場合もあります。「眠るためにお酒は使わない」ことが不眠解消の早道です。

2 寝る前のカフェイン・たばこは控える

寝る前は、コーヒーやお茶などカフェインを含む飲みものやたばこは控えましょう。夜中に目覚めたときの一服もNG。神経が興奮して、入眠を妨げます。

3 TV、PC、携帯メールは眠る1時間前にスイッチ・オフ

寝る直前までTVを見ていたりパソコンに向かっていたり、携帯メールをしていませんか? 光の刺激は脳を興奮させます。少なくとも眠る1時間前までには画面から離れる習慣をつけましょう。

4 就寝前はホットミルクか鎮静効果のあるハーブティーを

人間の体は、体温が低下すると眠気を感じるようになります。そのためには、眠る前に体温を上げておくことがポイント。温かい飲み物をのむのもひとつの方法です。おすすめは、催眠作用のあるホットミルク。牛乳に含まれるカルシウムがイライラを鎮めてくれます。そのほか鎮静効果のあるハーブティーなどもよいでしょう。

5 軽いストレッチや入浴でリラックス

就寝前に体温を上げるためには、ゆったりとぬるめのお風呂に入ったり、軽いストレッチをするのも有効です。血流がよくなり、体も心もリラックスします。

6 朝起きたら、すぐに太陽の光を浴びる

眠くなる時間は、朝太陽を浴びたときに決まります。目覚めたらカーテンをあけ朝日を浴びて、体内時計をリセットしましょう。

7 昼寝をするなら、15時前に30分程度

主婦の方では、夜眠れない分昼寝をするという人も多いですね。でも、睡眠のリズムをつくるには、昼寝のとり方に注意が必要です。昼寝をするなら遅くとも15時までに。長くても30分程度の仮眠にします。お仕事の方は、昼休みの15~20分程度のデスクでの仮眠は午後のためのリフレッシュと夜の睡眠の助けにもなります。

8 どうしても眠れないときは、寝床からいったん離れる

「眠らなくちゃ、眠らなくちゃ」とベッドの中であせっていると、イライラが募ってかえって眠れなくなります。眠りにこだわりすぎないことが大切です。30分たっても眠れないようなときには、思いきって起き上がって気分を切り替えましょう。ホットミルク飲むなどしてリラックスしましょう。

プロフィール

皆川 恵子 先生
心療内科・精神科
皆川 恵子 先生

埼玉医科大学卒業後、埼玉医科大学精神医学教室に入局。 思春期専門外来などを担当。
2002年イギア・ウィメンズクリニック池上で女性外来の診療を開始。 2004年よりウィミンズ・ウェルネス銀座クリニックにて現職。うつ病や神経症などの一般精神医学のほか、摂食障害などの心身医学、特に女性および児童・思春期の精神医学・心身医学が専門。精神保健指定医、日本心身医学会心身医学認定医、日本児童青年精神医学会認定医、日本医師会認定産業医。

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