プラスコラム
PLUS COLUMN

1日1万歩の都市伝説を紐解く

1日1万歩がウォーキングの目安と長く信じられてきました。

ところが近年、1万歩は、けっして健康的な数字ではないといわれはじめているようです。

常識とされてきた1万歩はウソだったのでしょうか?

 

1万歩伝説のはじまりは東京オリンピック?

かつて歩数計は万歩計といわれていました。

万歩計は1965(昭和40)年に山佐時計計器(YAMASA)(株)によって発売されました。 

その前年の1964(昭和39)年、戦後復興の象徴ともいえる東京オリンピックが開催されました。

1日1万歩の健康法は、オリンピックイヤーのこの年、当時の厚生省(現・厚生労働省)によって提唱されたといわれています。

 

ただ、1万歩という数字に科学的な根拠があったかどうかは不明なようです。

万歩計の商品名は、このスローガンにピッタリ。とても相性がいい感じです。

商品の登場が影響したかもしれません。 

1日1万歩の指標は、日本じゅうに広まり、健康ウォーキングの「常識」として、以来、多くの人が信じて疑わなかった……といわれています。

 

ちなみに万歩計という名称は現在、一般には使われなくなり、かわって歩数計という呼び名が定着しました。その理由は、1984(昭和59)年に山佐時計計器が万歩計の商標登録を取得したからです。

*「万歩計」は山佐時計計器株式会社の登録商標です。

 

「歩くほど健康にいい」という幻想?

それから半世紀が過ぎた今でも、1日1万歩の健康神話は生き続け、ウォーキング愛好者にとどまらず、一般の人のあいだにも「常識」として根強く息づいています。

そのために思わぬ健康の落とし穴にはまってしまう人もいらっしゃるようで……。

「毎日、健康のために1万歩歩いています」

「最近は2万歩を目指しています」……。

など、歩くほど体にいい、健康になると信じている人が意外に多くいます。

でもその結果、疲労がたまってダウンしたり、膝や腰を傷めたりして仕事や日常生活に支障をきたすといったこともあるようです。

他にも歩き過ぎはさまざまな体の弊害を招くようです。

たとえば免疫力の低下や活性酸素を大量に発生させたり、疲れによって便秘や下痢をしやすくなったり……。

 

そんなことから、結果的に風邪や肺炎、がんにかかりやすくなってしまうといったことを指摘する専門家もいます。

1万歩が歩き過ぎというなら、健康のためのウォーキングは何歩が適当というのでしょう。

次回以降、健康でいられる歩き方について紹介したいと思います。

 

<参考資料>

*「間違いだらけのウォーキング」(週刊朝日2016.10.21号)

 

<参考URL>

*「歩きを楽しく 万歩計®」(山佐時計計器(株))

http://www.yamasa-tokei.co.jp/top_category/pedometer_registered_trademark.html

 

*「『1日1万歩で健康になる』は大きなウソだった」(東洋経済ONLINE)

http://toyokeizai.net/articles/-/100087

 

*「運動するほど老化が進む!?『1日1万歩』ウォーキングはキケン」(週刊現代)

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51423

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。