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今、注目の発酵性食物繊維って何?

「発酵性食物繊維」が今、注目されているといいます。

「食物繊維」はよく知られていますが、「発酵性」はあまり馴染みがありません。

健康面でさまざまなメリットがあるというのですが……?

 

減少傾向の食物繊維の摂取量

 食物繊維の摂取が便秘や肥満、さらには高血圧の予防やコレステロールの低下などにつながることはよく知られています。

特に近年は摂取量が多いほど、さまざまな生活習慣病の発症率や死亡率との負の相関がいわれています。

例えば食物繊維の摂取量が増えるほど、総死亡率をはじめ、心筋梗塞や脳卒中、糖尿病、乳がんや胃がん、大腸がんなどの発症率や死亡率が下がる傾向があることが分かったといいます。

ただ食物繊維の摂取量は年々減少し、国が理想とする摂取量の1日25gを大きく下回っています。

2018~2019年の『国民健康・栄養調査』の食物繊維の摂取量の中央値は18~29歳で11.7g、30~49歳で12.5g。理想摂取量の半分以下です。

 今回、改定された2025年版の『日本人の食事摂取基準』(厚生労働省)では、食物繊維の摂取の目標量を18歳以上の男性では20~22g以上、女性で17~18g以上に設定しています。

 

食物繊維と発酵性食物繊維は違う?

 そんななか近年、注目されているのが「発酵性食物繊維」というもの。

これまでは食物繊維は水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」などに分類されてきましたが、それ以外の分類として近年は、腸内細菌によって発酵しやすい食物繊維のことを発酵性食物繊維と呼ぶようになったといいます。

私たちの腸内にはさまざまな細菌が生息しています。

体によい働きをする「善玉菌(有用菌)」、悪い働きをする「悪玉菌(有害菌)」、それ以外の「日和見菌」に大きく分類されます。

このうち善玉菌は腸の炎症を軽減したり、脂肪の蓄積や血糖値の上昇を抑えたり、免疫を強化するなど、さまざまな働きをしてくれるといいます。

腸内環境を改善して健康効果を高めるには、善玉菌を増やして悪玉菌を増えにくくすることが大切といわれますが、この善玉菌のエサとなるのが発酵性食物繊維というわけです。

 

発酵性食物繊維には多くの健康効果が

 こうした善玉菌などの腸内細菌は発酵性植物繊維をエサにして発酵、分解され、短鎖脂肪酸という成分を作り出すといいます。

これが腸への好影響だけにとどまらず、血流に乗って全身に運ばれ、前述の免疫の強化など、全身にいろいろな健康効果をもたらしてくれるというのです。

 発酵性食物繊維が含まれる食品には、もち麦や押し麦、小麦全粒粉、発芽玄米といった穀類のほか、サツマイモなどのイモ類、ゴボウなどの根菜類や大豆、納豆、きな粉といった豆類、果物ではバナナやキウイ、昆布などの海藻類にも多く含まれるといいます。根菜類以外の野菜、例えばホウレンソウやレタスなどの生野菜には発酵性食物繊維が少ないようです。

 発酵性食物繊維にはさまざまな種類があり、作用する腸内細菌や発酵する場所、発酵するまでの時間が異なるといいます。

そのため、いろいろな種類の発酵性食物繊維を摂取することが大切といわれます。

 

発酵食品とはどこが違うの?

 ところで食物繊維は炭水化物の一種だということをご存知でしょうか?

炭水化物は体内で消化されてエネルギーになる糖質と、消化酵素では消化できない食物繊維に分類されます。

食物繊維は「難消化性炭水化物」と呼ばれ、炭水化物から糖質を除いた部分が食物繊維だそうです。

最近は女性の「やせ」や「やせすぎ」による健康リスクが大きな問題になっています。ダイエットのために穀類の摂取を控える傾向があるようですが、これが結果として食物繊維の摂取不足も招いていると専門家は指摘しています。

前述のように穀物には発酵性食物繊維が豊富に含まれていて、腸活による健康効果も望めるといいます。

 また「発酵」といえばヨーグルトやキムチなどの発酵食品を連想されるでしょうが、発酵性植物繊維と発酵食品は違います。発酵食品は乳酸菌や酵母菌、麹菌などによって食べ物が分解されているのに対して、発酵性植物繊維は食べた後に腸内で発酵して善玉菌のエサになるものです。

「穀物から食物繊維を」……もっと広く知られていいことかも。

 

<参考>

*「発酵性食物繊維とは」(一般社団法人発酵性食物繊維普及プロジェクト)

*「発酵性食物繊維とは?」(株式会社Mizkan)

*「日本人の食事摂取基準(2025年版)」

*「食物繊維の働きと1日の摂取量」(公益財団法人長寿科学振興財団)

*「食物繊維 穀物から取ろう」(東京新聞/2025.5.13)

*「いま注目される発酵性食物繊維とは?」(朝日新聞Reライフ.net)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。