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秋太りで泣かないために――五感食が食べ過ぎを防ぐ

長かった残暑も終わり。ようやく秋めいてきましたね。収穫の秋は、キノコに果物、新米、サンマや秋サケとおいしいものがたくさん店頭に並びますね。食欲がグンと増すこの季節、「ついつい食べ過ぎてしまう」という人も多いのではないでしょうか? 食べ過ぎてはあわててダイエット。その反動で食べてしまってリバウンド――。秋太りとダイエット失敗に泣かないためには、どうしたらいいのでしょうか。

食欲を無理に抑えた反動で起こる「どうにでもなれ効果」

秋になって気温が下がってくると胃腸の調子も回復して、食事がおいしく感じられるようになりますね。加えて、秋から冬にかけて人間も動物と同じで、寒さから身を守り体温を維持するために、たくさん食べて脂肪を蓄えようとする体の働きがあります。秋は食欲が増して太るのも、ある程度は仕方がないこと。いわば自然の摂理ともいえるのです。

 

こんなとき、本能である食欲を抑え込もうとするとかえって強い反動が働いてしまいます。たとえば、1週間甘いものを我慢して食事制限していたのに、チョコレートをひとかけら食べたとたんに止まらなくなって、ケーキもクッキーも菓子パンも――などという経験をしたことはありませんか?

「ゼロか100か」。たった一口ですべてが台無しになった気持ちがして、やけくそになってしまうこんな心理を、米国の健康心理学者ケリー・マクゴニガル氏は著書「スタンフォード大学の自分を変える教室」で「どうにでもなれ効果」と呼んでいます。無理なダイエットをしているときこそ、こんな心理に陥りがちなようです。

 

ダイエット=食事制限と思っている人も多いかもしれませんが、ダイエットはむしろ上手な食べ方が、長続きしてリバウンドさせないコツであるようです。

食欲の秋は、おいしいものを食べずに我慢するよりも、むしろ満腹中枢を司る脳が満足する上手な食べ方をして、スリムボディをめざしたほうがよさそうです。

 

食べ過ぎ防止の秘訣は、五感を使っておいしく食べること

脳が満足する上手な食べ方の秘訣は、よく噛んで五感を使っておいしく食べること。

ご存じの方も多いと思いますが、脳の視床下部には満腹中枢があって、食欲をコントロールしています。噛む回数が多いほど、満腹感が得られるため、肥満防止につながります。また、食事をとることで消費されるエネルギー「食事誘導性熱産生(DIT)」も、よく噛むことで高まります。できればひと口に20回~30回噛んで食べることを専門家はすすめます。

また、五感をフルに使っておいしく食べることも大きな秘訣。おいしく食べて満足すると、脳内でセロトニンが多く分泌されて満腹中枢を刺激するため、たくさん食べなくても自然に満足感を得られるといわれています。

 

TV「孤独のグルメ」の主人公・井之頭五郎をお手本に

ひとりの食事は、スマホやパソコン、テレビを見ながら黙々と食べるという人も多いはず。ついつい日常的にやっている「ながら食べ」では、スマホやテレビに意識が向いて脳に満腹信号が届きにくく、いつまでたっても満足感が得られません。何を食べたか、どんな味だかよく覚えていないということも少なくありません。

脳内セロトニンをたくさん出すためには、「ながら食べ」はやめて五感をフルに活用して食事を楽しむこと。

 

「お~、盛り付けが美しい」「わ、おいしそうなこのにおい」「う~む。サクサク、ぱりぱり、歯ごたえがいいな」「この味、大好き」といった具合に五感を使って、ひと口ひと口味わいながら食べてみましょう。

どんなふうに食べればよいのやら・・という人は(テレビ東京系)「孤独のグルメ」を参考にしてみるとよいかもしれません。松重豊演じる主人公・井之頭五郎が五感をフルにつかって食べることに集中。一人で実においしそうに食事をしていますよ。

 

 

<参考資料>

*『スタンフォード大学の自分を変える教室』(大和書房:ケリー・マクゴニガル)

 

<参考URL>

*健康ふくおか10か条

http://www.kenkou-support.jp/arekore/img/kf10_04.pdf

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。