プラスコラム
PLUS COLUMN

マウスウォッシュは口の中を荒らす?

よかれと思ってしていることが逆の結果を招いてしまうこと、よくありますよね。今回はマウスウォッシュ(洗口液)についてです。

口臭の予防と歯や口の中の健康を考えて、毎日使っている方も多いかと思います。そのマウスウォッシュが、口の中を荒らしているかもしれない? さらに液体歯みがきでクチュクチュすれば歯ブラシでゴシゴシしなくてもいい?気になる口の中のケアについて調べてみました。

  

マウスウォッシュで得られるのは一時的な清涼感だけ?

口臭をおさえたり、むし歯や歯周病の予防に効果があるということで、使っている人も多いと思われる洗口液。一般にはマウスウォッシュとかデンタルリンス、口内洗浄剤などとも呼ばれているようで、たくさんの商品が市販されています。
とくに今は匂いに敏感な時代でもあります。口臭に神経質な人にとっては手放せない必須アイテムかもしれません。バッグの中やオフィスの机の引出しに常備して、大事な人と話す前には必ず「お口クチュクチュ・・・」などとやっているのかもしれません。

マ ウスウォッシュを使うと口の中がすっきりして、口臭がおさえられた感じを強く味わえます。でもそうした清涼感は一時的なもので、マウスウォッシュに含まれ るメントールなどの香料やアルコールの刺激がそのように感じさせているにすぎないというのです。なかには、しばらくすると、また口臭が気になりだして、再 度「お口クチュクチュ」ということをくり返す人も多いようです。

じつはメントールやアルコールが含まれる刺激の強いマウスウォッシュを頻 繁に使うと、口の中の粘膜が荒れ、口の中が乾燥して唾液が十分に分泌できなくなってしまうという副作用があるといわれています。唾液が少なくなると、結果 として口臭が強くなったり、むし歯になるリスクが高まってしまうというのです。また、マウスウォッシュを使うことによって口の中に必要な菌まで殺菌してし まうともいわれています。
口臭をおさえるためのマウスウォッシュが、逆に口臭を招きかねないなんて、なんとも皮肉なことです。

マウスウォッシュではむし歯を予防できない?

ではマウスウォッシュでむし歯や歯周病の予防はできるのでしょうか?
残念ながら「できない」というのが多くの専門家の見方のようです。
むし歯の予防に欠かせないのがフッ素ですが、市販のマウスウォッシュには、日本の法律の関係で、有効性のある濃度のフッ素が含まれていないらしいのです。

歯 周病の予防についてもマウスウォッシュの効果はのぞめないといいます。マウスウォッシュが歯周ポケットの奥まで届くことはないことと、「バイオフィルム」 と呼ばれるバリアで守られた細菌のすみかを取り除くことができないというのです。バイオフィルムの上から薬をいくらかけてもバリアがじゃまして、すみかの 中には薬は浸透していかないらしいのです。
やはり歯ブラシでていねいに根気よくみがくしか、むし歯や歯周病を予防する方法はないようです。

ところで、液体歯みがきを口に含んでクチュクチュすれば歯ブラシでみがかなくてもいいと誤解している人も多いようです。歯の汚れは薬液でクチュクチュしたくらいでは落とせません。口に含んだあとはやはり歯ブラシでみがくしかないのです。
歯の健康には1にも2にも歯みがきしかないということ。やはり健康への近道はありませんでした。


<参考URL>

●「口腔感染症とは」(日本大学歯学部 細菌学教室)
http://www2.dent.nihon-u.ac.jp/g.microbiology/oral_infection/index.html
●「口腔内細菌と体の病気」(一般社団法人 日本訪問歯科協会)
http://www.houmonshika.org/oralcaremanual/m14/
●「歯周病治療」(大船駅北口歯科インプラントセンター)
http://www.sugiyama-dental.com/shisyubyou/scope.html

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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