「知っておきたい“大人の虫歯”」その3
大人の虫歯の多くは、なんと治療済みの虫歯から! 虫歯のリスク要因第3弾をお送りします。
虫歯ができるリスク要因
虫歯のリスク要因を前回に続いてみていきましょう。
フッ素の使用状況
フッ素(フッ素化合物)には、(1)酸に対する抵抗力の強い歯をつくる、(2)初期虫歯の再石灰化(さいせっかいか)を促進させる、(3)ミュータンス菌などを抑える効果などがあります。このようにフッ素は、虫歯予防に抜群の効果を発揮します。海外では、水道水や食塩、牛乳などにフッ素をいれている国もあるほどです。
フッ素は、フッ素入り歯磨剤で磨くなどのホームケアと、定期的に歯科医院で高濃度のフッ素を歯に塗ってもらうプロフェッショナルケアの両方が必要です。
虫歯になりやすいかどうかは、フッ素の使用状況によっても、変わってきます。
▼予防POINT
フッ素に加えて、虫歯予防に役立つのがキシリトールです。キシリトールは、砂糖と違った分子構造をしているため、ミュータンス菌がいくら取りこんでも酸を発生させることができません。そのため、ミュータンス菌が増殖できずにしだいに数が減っていくのです。また、キシリトールが唾液中のカルシウムと結び付くと、再石灰化を促すという効果もあります。
つまり、フッ素とキシリトールを使えば、歯の健康を守る唾液の力がさらにパワーアップします。歯磨き剤は、フッ素+キシリトールのものを使うとよいでしょう。また、歯磨き剤のあとはフッ素入りリンス剤(※先ごろ、新発売となった歯科医院専売商品です)で洗口するほか、フッ素ジェルを使用したり、定期的に歯科医院で高濃度のフッ素の塗布をしてもらうと理想的です。
(※牛乳に含まれる乳糖は、プラークがある状態では酸を作り、プラークが全くない状態なら酸を発生させません。したがって牛乳は歯が汚れている人には虫歯の元になりますが、歯がキレイな人には虫歯の原因となりません。)
虫歯の治療歴
治療済みの虫歯は、二度と虫歯にならないと思っていませんか? 実は、大人の虫歯のほとんどは、「二次カリエス」といって治療済みの歯がケア不足で再び虫歯になってしまうのです。
過去の治療で入れた詰めものやかぶせものの隙間から虫歯菌が侵入して虫歯が進行していきます。目につきにくい部分なので、虫歯になってもなかなか気づきません。特に神経を抜いている歯であれば、痛みを感じないため虫歯がどんどん進行していってしまいます。
つまり、虫歯によって失われたり過去に治療した歯の本数、また現在の虫歯の本数が多いほど虫歯になりやすいといえます。
▼予防POINT
治療した歯は、とくに念入りにブラッシングしましょう。また、半年から最低でも1年に1度は、歯科医院で歯の定期健診を受けましょう。
おさらい●虫歯を防ぐ4つのポイント
(1) ホームケア+歯科医院での定期健診
プラーク(歯垢)は、細菌のかたまり! 虫歯予防の基本は、毎日の歯磨きから始まります。正しいブラッシング+デンタルフロスで、しっかりと歯垢を除去しましょう。
でも、どんなにていねいに磨いていても、必ず磨き残しは出てしまいます。半年に1度は歯科医院で定期健診を受けて、お口の中をチェックしてもらいましょう。フッ素の塗布や歯のクリーニングなど、プロフェッショナルケアとホームケアの2本柱で、お口の健康を守りましょう。
(2) フッ素とキシリトールを賢く利用
歯の再石灰化に重要な役割をするのがフッ素とキシリトール。唾液+フッ素+キシリトールのコンビが、虫歯菌がつくり出す「酸」から歯を守ります。
フッ素+キシリトール入りの歯磨き剤やフッ素入りリンス剤、フッ素ジェル、キシリトール入りのガムを上手に利用して健康な歯をキープしましょう。
*フッ素効果を最大限にする歯磨き効果については、Vol.1「あなたのオーラルケア、間違っていない?」もあわせて参考にしてください。
(3) 飲食の回数をできるだけ減らす
虫歯になりやすいかどうかは、飲食の回数が大きく影響します。ダラダラ食べたり飲んだりしていると、歯の再石灰化が間に合わず、虫歯になってしまいます。甘いお菓子や飲み物は、おやつとしてとるよりも食後のデザートとして食事とセットでとるのが正解です!
(4) 唾液の量を増やす
虫歯になりにくい環境をつくるには、お口の中にたっぷり唾液が分泌されていることが条件です。食事はよく噛みゆっくり食べて、唾液を分泌させましょう。唾液の分泌を増やすにはストレスケアも大事なポイントです。