その腰痛、様子見でいい?すぐ受診したい腰痛のサイン
腰痛は、日本人が訴える自覚症状のなかで、男女ともに最も多い症状です。多くは数週間で落ち着きますが、なかには急いで受診したほうがよい腰痛もあります。今回は、様子を見てよい腰痛と受診したい腰痛の見分け方、回復を妨げない過ごし方について紹介します。
「ぎっくり腰」は病名ではない
「ぎっくり腰」は、急に起こった強い腰痛を指す通称で、病名や診断名ではありません。医学的には発症から4週間未満の腰痛を「急性腰痛」、4週間以上3か月未満を「亜急性腰痛」、3か月以上続くものを「慢性腰痛」と区別します。
腰の関節や椎間板(背骨の間でクッションの役割をする軟骨)に無理な負担がかかってケガのようになったり、腰を支える筋肉やじん帯が傷ついたりすることが主な原因だと考えられています。ただし、検査をしても原因を一つに特定しきれない腰痛も少なくありません。
つまり「ぎっくり腰」という言葉は、痛みの強さと急な発症を表しているだけで、その中身は人によって違います。だからこそ、様子を見てよいものと急いで受診すべきものを見分ける目安が役に立ちます。
様子を見てよい腰痛の目安
次のような腰痛は、一般的な目安として、急いで受診しなくても数週間で軽くなっていくことが多いとされています。
様子を見てよい腰痛の特徴
・動作や姿勢によって痛みが強くなったり和らいだりする
・痛みが腰まわりにとどまり、足のしびれや力の入りにくさがない
・発熱や体重減少など、腰以外の症状がない
・日ごとに少しずつ楽になっている
急性腰痛の多くは自然に軽くなることが知られています。日本整形外科学会と日本腰痛学会がまとめた「腰痛診療ガイドライン2019」によると、急性腰痛の痛みの強さ(100点満点)は平均52点から最初の6週間で23点まで大きく下がり、その後もゆるやかに改善が続いたと報告されています。
一方で、痛みが強くなくても6週間以上続く場合や、判断に迷うときは、自己判断せず一度整形外科で原因を調べてもらいましょう。
すぐ受診したい腰痛の「危険サイン」
腰痛のなかには、骨折や感染、腫瘍(しゅよう)、神経の圧迫など、急いで対処が必要な病気が隠れていることがあります。次のようなサインがあるときは、様子を見ずに早めに整形外科を受診してください。
急いで受診したい腰痛のサイン
・安静にしていても痛みが軽くならない、日に日に悪化する
・発熱を伴う
・足にしびれや痛みがある、力が入らない
・尿が出にくい、尿や便が漏れる
・がんの治療歴がある、理由なく体重が減っている
・転倒や強く腰を打った後に痛み出した
・胸や腹部の痛み、腹部の脈打つような感覚を伴う
腰痛は、腰以外の病気のサインであることもあります。大動脈の病気や尿管結石、婦人科や消化器の病気でも腰に痛みが出ることがあります。「いつもの腰痛と違う」と感じたら、その直感を大切にしてください。
「安静にしすぎない」が今の常識
かつてぎっくり腰は「痛みが引くまで安静」が基本でした。しかし現在は、急性腰痛では安静よりも、痛みの範囲で普段の活動を続けるほうが回復によいとされています。「腰痛診療ガイドライン2019」でも、急性腰痛に対しては安静より活動性の維持のほうが有用と示されました。
ただし、足にまで痛みが広がる坐骨神経痛を伴う場合は、安静と活動で明らかな差はないとされています。
長く寝込むと腰を支える筋力が落ち、体のこわばりも強くなります。その結果、かえって回復が遅れかねません。強い痛みで動けない日があっても、寝て過ごすのは1〜2日にとどめ、痛みに合わせて少しずつ日常の動きを取り戻していきましょう。
注意したいのは、痛みへの不安から腰を必要以上にかばう行動です。専門的には「恐怖回避思考」と呼ばれ、コルセットを常用したり、動くこと自体を避けたりする状態を指します。こうした行動は、腰痛の回復や仕事への復帰を遅らせると報告されています。
長引く・繰り返す腰痛は「ストレス」も疑う
腰痛が長引く背景には、心理的なストレスが関わっていることがあります。仕事への不満や人間関係の悩み、痛みへの不安といったストレスは、脳の働きを通じて痛みを長引かせると考えられています。「腰痛診療ガイドライン2019」では、回復に対してマイナス思考をもつ人は、12週間以上仕事に復帰できない頻度が約2倍高かったというデータもあるほどです。
さらに、ストレスを抱えたまま重い物を持ち上げると、姿勢のバランスが崩れて椎間板に負担が集中し、ぎっくり腰につながりやすいことも知られています。腰痛には、体の不具合だけでなく、心の疲れが症状として表れることもあるのです。
腰痛を繰り返す、なかなか楽にならないという方は、腰そのものだけでなく、働き方や睡眠、ストレスの状態も見直してみましょう。そして危険サインが一つでもあれば、我慢せず整形外科へ相談してください。
<参考>
※「ぎっくり腰」「腰痛」(症状・病気をしらべる/日本整形外科学会)
※『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』(日本整形外科学会・日本腰痛学会監修 南江堂)
※「No.1 ストレスと腰痛」(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳/厚生労働省)
※「腰痛」(MSDマニュアル家庭版)
※「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)





