食欲の秋はなぜ?「止まらない食欲」との上手なつき合い方
朝晩が涼しくなると、なぜか食欲が増して食べすぎてしまう……そんな実感はありませんか?「食欲の秋」には、気のせいとは言い切れない体の仕組みが関係すると考えられています。
今回は、秋に食欲が増す理由と、食べすぎを防ぐコツについて紹介します。
秋になると食欲が増すのはなぜ?
涼しくて過ごしやすい季節になったのに、なぜか食欲ばかりが増してしまうのは不思議ですよね。実は、秋の食欲増加は1つの原因で説明できるものではなく、いくつかの要因が重なって起こると考えられています。
主な理由として挙げられるのが、「日照時間」と「気温」の変化です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
説1:日照時間の減少とセロトニン
1つ目の理由は、秋になると日に当たる時間が短くなることです。ここで関わってくるのが、脳内で働く「セロトニン」という物質です。セロトニンには精神を安定させる働きがあり、食欲の調整にも関わるとされています。
セロトニンの分泌は、日光を浴びる時間の影響を受けることが知られています。秋は夏に比べて日が短くなり、日光を浴びる時間も減りがちです。その結果、セロトニンの分泌が減って食欲を抑えにくくなるのではないか、というのがこの説の考え方です。
セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンから体内で作られます。トリプトファンは肉や魚、大豆製品などのタンパク質に多く含まれます。朝食にこうした食品を取り入れてみるのもよいでしょう。
説2:気温の低下と基礎代謝
2つ目は「気温説」です。基礎代謝とは、安静にしている状態で生命の維持に使われるエネルギーのことで、1日の総エネルギー消費量の約60%を占めるほど大きなものです。この基礎代謝は、一般に夏に低く、冬に高いとされています。ただし、近年は空調の普及により、季節による差は小さくなっているという見方も出てきました。
気温が下がると、体は体温を保つために熱をつくり出し、エネルギーの消費が増えます。その消費を補おうとして食欲が高まる、というのがこの説の見方です。
このほかにも、夏の暑さで落ちていた食欲が涼しさとともに回復する、旬を迎えた食材のおいしさに誘われる、といった要因が挙げられています。食べ物が少なくなる冬に備えて栄養を蓄えるという、生き物としての備えを挙げる見方もあります。秋の食欲は、複数の追い風が重なった結果なのかもしれません。
食べすぎを防ぐコツ(1):ゆっくりよく噛んで食べる
理由がわかっても、増えた食欲をそのままにすれば体重増加につながりかねません。ここからは、食べすぎを防ぐコツを2つ紹介します。
1つ目は、ゆっくりよく噛んで食べることです。近年の疫学調査で、速食いの習慣がある方は肥満度(BMI)が高い傾向にあることがわかってきました。速食いに加えて「お腹いっぱい食べる」習慣が重なると、肥満度はさらに高くなる傾向があります。
ゆっくりよく噛むことは「咀嚼法」と呼ばれ、肥満対策の行動療法の1つです。厚生労働省の検討会も、一口30回噛む習慣を奨める「噛ミング30(カミングサンマル)」運動を提唱しています。歯ごたえのある食材を選ぶ、一口ごとに箸を置くなど、できることから取り入れてみましょう。
食べすぎを防ぐコツ(2):秋の夜長は睡眠を削らない
2つ目は、睡眠を削らないことです。健康な方でも、睡眠不足が数日続くだけで、食欲を抑えるホルモン(レプチン)の分泌が減ることがわかっています。反対に、食欲を高めるホルモン(グレリン)の分泌は増え、結果として食欲が増大します。
睡眠不足では、同じ食事をしても血糖値が高くなりやすいことも明らかになっており、食べすぎ対策と健康の両面で睡眠は欠かせません。
夜が長くなる秋は、つい夜更かしをして夜食に手が伸びやすい季節です。体内時計の働きで、夜遅い時間は脂肪をため込みやすいことも知られています。夜食が習慣になっている方は、量と時間を見直してみましょう。
朝は太陽の光を浴びて1日を始めるのもおすすめです。朝の光は、先に紹介したセロトニンの分泌を促すといわれています。
旬の恵みを味わえるのは、秋ならではの楽しみです。体の仕組みを知ったうえで、食欲と上手につき合っていきましょう。
<参考>
※「季節によって食欲がアップするのはなぜ?」(からだカルテ タニタ健康コラム/株式会社タニタヘルスリンク)
※「食欲がなぜ増す?暴走する秋の食欲をコントロールせよ」(健康管理情報/特定非営利活動法人日本成人病予防協会)
※「速食いと肥満の関係 -食べ物をよく「噛むこと」「噛めること」」(生活習慣病などの情報・e-ヘルスネット/厚生労働省)
※「睡眠と生活習慣病との深い関係」「セロトニン」(生活習慣病などの情報・e-ヘルスネット/厚生労働省)
※「冬の寒い時の運動の注意点」(健康長寿ネット/公益財団法人長寿科学振興財団)



