「感染症」を引き起こす「病原体」って何?
今では聞いたり読んだり話題にしたりする機会が増えて、すっかりなじみの「感染症」。
その感染症を引き起こすおおもとには「病原体」の存在がありますが、そもそも病原体ってどんなものなのでしょうか?
「病原体」って、どんなもの?
「病原体」とは、その字が示すとおり病気の原因となる小さな生き物、微生物のこと。俗に「バイ菌」といったりもします。世界には無数の病原体が存在しているといいます。
病原体はいろいろな方法でわたしたちの体内に侵入して増殖し、体にさまざまな不都合でよくない症状を引き起こします。いわゆる感染症です。
感染症を引き起こす病原体は大きさや構造によって、ウイルス、細菌、真菌(カビ)、寄生虫に分類されます。細菌には大腸菌、黄色ブドウ球菌など、ウイルスにはインフルエンザウイルス、ノロウイルスなど、真菌にはカンジダ、白癬など、寄生虫には回虫やギョウ虫などが知られています。
これらの中でも、たくさんの感染症にかかわって、わたしたちにさまざまな悪さをしかけているのは、なんといってもウイルスと細菌ではないでしょうか?
このまぎらわしい2つの病原体、似ているようでいて、大きさも増殖の仕方もまったく違うといいます。どう違うのでしょう?
ウイルスは自己増殖できない?
ウイルスと細菌はまったくの別物といいます。
細菌は「生物」ですが、ウイルスは「生物と非生物の中間的な存在」だそうです。細菌は細胞膜や細胞壁、DNA、たんぱく質を合成する仕組みをもち、栄養と水分があれば細胞分裂を繰り返し自己増殖ができるといいます。
しかし、ウイルスは細胞をもたず、自分で増殖することができません。人間や動物を宿主にして、その細胞に入り込むことでしか増殖ができないのです。
そんなことからウイルスは「生物」とはいい切れないようです。
大きさもかなり違うようでウイルスは細菌よりも小さく、例えば大腸菌は2~4μm(マイクロメートル/1ミリの1000分の1)ですが、インフルエンザウイルスの大きさは0.1μmだそうです。種類にもよりますが、ウイルスは細菌の10分の1~100分の1、さらには1000分の1のサイズともいわれています。
細菌は「ミクロ(μm)の世界」、ウイルスは「ナノ(nm/1メートルの10億分の1)の世界」などとも形容されています。
感染経路は病原体によって違う?
ウイルスや細菌、寄生虫、真菌などの病原体は、どのようにして体の中に入ってくるのでしょうか?
感染する経路の違いによって、飛沫感染、空気感染、接触感染、経口感染などがよく知られています。
かぜやインフルエンザなどは、せきやくしゃみをしたときの唾液のしぶき(飛沫/直径0.005ミリ以上の粒子)を吸って感染することから飛沫(ひまつ)感染といわれます。唾液のしぶきは1~2メートルも飛ぶといいます。
空気感染は、空気中にただようウイルスや細菌などの飛沫核といわれる直径0.005ミリ以下の粒子を吸うことで感染します。水痘(水ぼうそう)や麻疹(はしか)、結核などが知られています。
接触感染は、ウイルスや細菌などの病原体に触れた手で鼻や口にさわったり、病原体に汚染されたものに触れて感染。主に手指を介して体内に侵入するといわれます。ノロウイルスや結膜炎、とびひなどがあります。
経口感染は、ウイルスや細菌に汚染された食べ物を食べたり、感染した人が調理した際に病原体に汚染された料理を飲食して感染します。ノロウイルスやロタウイルスによる感染性胃腸炎などがあります。
感染症に負けない体をつくるには?
感染症にかかりにくくするためにはどうすればいいのでしょう?
感染症のいくつかはワクチンで予防できますが、それも限界があります。
つまるところ感染症への対処法は自己防衛ということになります。予防策の基本としてよくいわれているのは、「病原体を侵入させない」ことと「感染症にかかりにくい体をつくる」の2つといいます。
もっとも身近な感染症である「かぜ」を例にいえば、ウイルスの侵入を防ぐには室内外を問わずマスクをしっかり装着するほか、うがいや手洗い、手指のアルコール消毒、入浴などがいわれています。
また、ウイルスに感染、体内に侵入されても必ず「かぜ」にかかるわけではなく、体力や免疫が低下したときなどに発病しやすくなるといいます。
病原体が侵入してきても感染症にかかりにくい体と免疫力をつけることが大切。適度な運動と十分な睡眠、ストレスをためない、規則正しく栄養バランスのとれた食事といった、基本的な生活がここで重要になります。
「人類の歴史は感染症とのたたかい」といわれますが、それに倣(なら)えば「感染症対策は自分自身とのたたかいでもある」といった感じでしょうか。
<参考>
*「感染症の基礎知識」(内閣感染症危機管理統括庁)
*「うつる病気『感染症』について知ろう!」(千葉県医師会)
*「ウイルスと細菌の違い」(東邦大学)
*「ウイルスと細菌と真菌の違い」(近畿大学病院)
*「コーワが考える 感染症の予防と対策」(興和株式会社)





