
「不調は更年期のせい」と決めつけないで
心に体にさまざまな不調が出やすい更年期。
でも、不調の原因は何でも「更年期のせい」と決めつけてしまうと、思わぬ病気を見落としまうことも。
隠れた病気を見逃さないようにしましょう。
女性に多い甲状腺の病気
暑くもないのに汗が出る、動悸・息切れがする、集中力の低下やイライラなど、更年期は女性ホルモンのバランスが大きく崩れて心と体のあちらこちらにひずみが出てきます。
更年期に起こる症状は実に多彩で、100~200種類以上もあるといわれています。
そのため病気の症状と更年期の症状が類似していることも少なくありません。
そのひとつに女性に多い「甲状腺の病気」があります。
甲状腺とは首の「のどぼとけ」の少し下にある蝶が羽を広げたような形をしている器官。体の中でももっとも大きな内分泌器官(ホルモンを体内に分泌する器官)だといいます。
甲状腺ホルモンは、脳の働きを維持したり新陳代謝を促す役割をもつほか、 脈拍数や体温、自律神経の働きを調節したり、活動のエネルギーを維持するなど、生命を維持するために不可欠な存在だといわれています。
更年期の症状と間違えやすい
甲状腺のホルモンは、一定の分泌量を維持できるようにバランスが保たれているそうです。
しかし甲状腺の働きに異常が起こって、甲状腺ホルモンの分泌が多すぎたり少なすぎたりすると体にさまざまな不調が現れるそうです。
例えば甲状腺ホルモンが増えすぎると(甲状腺機能亢進症)、暑がり・汗っかきになる、イライラする、疲れやすくなる、動悸・息切れがするなどの症状が。
逆に甲状腺ホルモンが少なすぎると(甲状腺機能低下症)、だるい、疲れやすい、寒がりになる、顔や体がむくむ、無気力になるといった症状が出てくるそうです。
どちらも更年期の症状と似ています。そのために、甲状腺の病気に気づきにくく、しばしば見過ごされてしまうことがあるそうです。
重大な病気の見落としに注意を
ほかにも更年期に起こりやすい関節の痛みは、関節リウマチが原因だったり、めまいはメニエール病や貧血が原因であることも。
更年期症状の1つである動悸・息切れは、心臓などの循環器の病気でも起こるそうです。
さらに、高血圧では頭痛が、肝機能障害では倦怠感が起こることも。
また糖尿病の初期には、疲労感、不眠、イライラなどの症状が出てくるなど、更年期障害と症状が共通している病気も少なくないといいます。
更年期以降はさまざまな病気が増えてくる
女性は更年期にさしかかると、生活習慣病のリスクが高まることが知られています。
糖尿病や高血圧、心臓病なども女性は更年期ごろから増加するといわれていますから、不調があれば、がまんしたり「更年期のせい」と決めつけて放置しないこと。
一度は更年期外来や女性外来などを受診し、検査を受けるなどして不調の原因を確かめておくことが大事です。
また、とくに強い症状がある場合は、症状に合わせた専門の診療科を受診して病気が隠れていないか調べてもらうことをおすすめします。
更年期は体の節目だといわれています。健康に自信がある人も、婦人科検診と健康診断は年に1回の習慣にしましょう。
<参考>
※『更年期障害これで安心』(小学館 堀口雅子監修)
※『ウィメンズ・メディカ』(小学館)
※「女性の心と体の不調」(『きょうの健康』2025年1月号 NHK出版)
※「甲状腺の病気」(働く女性の心とからだの応援サイト 厚生労働省)
※「重大な病と区別することが肝心! 更年期障害と間違えやすい他の病気」(家庭画報.com)
※「閉経後に変化する? 女性の更年期と心筋梗塞の関係」(公益社団法人 心臓血管研究所 附属病院)