
「老化」はゆっくり進むんじゃなかったの?
誰も老化は避けられません。これまでは老化は徐々に進むものと考えられてきましたが、そうではないという研究もあるようです。
急激に老化の進む年齢が2回あるといいます。どういうことでしょうか?
老化のはじまりは20歳~30歳すぎ
「老化なんて高齢者の話でしょう」「自分にはまだ先のこと」……なんて思っていませんか?
「老化は生まれた直後からはじまる」といわれることがあります。
ヒトの細胞は50~60回の細胞分裂を繰り返すと、それ以上、分裂ができなくなり「老化細胞」と呼ばれます。細胞のレベルで考えると、たしかに老化は誕生直後から始まっていることになります。
人によって早い遅いはあったにしても、一般的には「老化は20歳から30歳以降にはじまる」といわれています。
老化が高齢者だけの問題でないことははっきりしています。
老化は、誰にも避けられない
「加齢にともなって起こる体や心の機能の低下や衰退」のことを老化といいます。
たとえば筋肉の衰え、肺活量の低下、目が見えにくい、耳が遠くなる、肌の衰え、病気などに対する抵抗力の低下などがみられます。
加齢にともなって、遅かれ早かれ誰にでも起こるこうした全身的な体の衰えは「生理的老化」と呼ばれます。
また、病気やケガなどによって起こる「病的老化」もあって、こちらは誰にでも起こるわけではありません。
この2つの老化はお互いに影響し合うことで体にさまざまな変化を及ぼすと考えられています。
老化が急速に進む時期が2回ある?
そんな老化について、最近、興味深い研究結果が報告されました。
アメリカのスタンフォード大学の研究チームが、性別に関係なく「44歳と60歳の2回、急速に老化が加速する」という内容の論文を発表したのです。
それまで「老化はゆるやかに一定のペースで(直線的に)進むもの」と一般には考えられていただけに、多くの人の関心を集めたようです。研究によれば「老化は徐々に進むのではなく、急速に老化が進む『加速期』と、ゆるやかな『停滞期』が交互に訪れる」ことが分かったといいます。
まず44歳ごろに最初の加速期が訪れ、停滞期を経て60歳ごろに2回めの加速期を迎え、その後、亡くなるまで停滞期が続くというものです。報告では44歳前後にカフェインやアルコールの分解、脂質の代謝などの能力が低下してくるといい、また60歳前後では、それと同時に免疫機能、糖や炭水化物の代謝の低下などがみられるそうです。
細胞が傷つけられる酸化ストレスなども起こるといいます。動脈硬化や脳梗塞、腎臓病、糖尿病などにかかりやすくなるようです。
老化の8割は生活習慣、環境が影響?
この研究で指摘する2回の老化の加速期について、「これって厄年じゃない?」「それに還暦?」と思った方も多いのでは? 単なる偶然でしょうか?
まさに42歳は男性の大厄、61歳は男女とも厄年です。さらにそれぞれ前厄と後厄もあります。
60歳は還暦で「人生の節目」「折り返し」などといわれます。また、40代半ばから50代は女性の更年期、40代後半ころからは男性の更年期がはじまる年代でもあります。体の変調時期でもあるこうした年齢の節目を機に、自分の生活や健康問題を見直すきっかけにする人もいることでしょう。
老化に与える影響は遺伝的要因が約2割、約8割は生活習慣や環境によるものだそうです。これらが絡み合って老化が進行するといわれています。
アメリカの研究結果を過度に不安に思う必要はないと専門家は指摘しています。自分の日常の行動や生活習慣を見直すなどの対策で老化と上手に付き合うことが大切といいます。
バランスのよい食事、適度な運動と十分な睡眠、加えて禁煙に節酒など、老化対策に特別な方法はなく、地道な毎日の健康習慣を続けるのがいいようです。
<参考>
*「老化とは何か?」(公益財団法人長寿科学振興財団)
*「老いとは何か~老化と加齢」(東邦大学 Dr.Gotoの老化研究所)
*「人が迎える二大老化期『不健康度』と『老化度』の指標」(ビッグイシュー日本版VOL.507)
*「老化は突然やってくる?」(同友会メディカルニュース2025年1月号)
*「最新の研究が解明!『老化制御』のカギと対策」(沢井製薬)