
肥満は「自己責任」と考えていませんか?
太っているのは「本人の責任」「だらしがないから」と考えている人が多数いるという調査があります。
本当に「肥満は自己責任」と決めつけていいのでしょうか?
男性の3割、女性の2割が「肥満」
「体重計にのるのがこわい」「服のサイズが合わなくなってきた」などと思うことはありませんか?
自分の肥満が気になる人は少なくないようです。肥満に該当する人は日本国内だけで約2,800万人と推計されています。
2023(令和5)年の「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)の結果をみても、肥満者(BMIが25kg/m2以上・20歳以上)の割合は、全世代平均で男性が31.5%、女性が21.1%で、2016年以降、男性は30%を超え、女性も20%を超える傾向が続いています。
世代別では、やはり中高年を中心に肥満の割合が高く、男性の場合、40代で34.3%、50代で34.8%、60代が35.0%。女性では、50代が24.3%、60代が25.0%、70代以上が22.2%でした。
中年期以降の割合が男女とも全世代の平均を上回る数値を示しています。
太っている「肥満」と治療が必要な「肥満症」
肥満は、それ自体は病気とはいえず、「体重が多い状態」であり、BMIが25 以上の場合を指すそうです。単に太っている、肥満しているというだけでは治療の対象にはならないといいます。
この肥満に加えて、肥満にともなう2型糖尿病や脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風など、11種ある合併症のいずれかを有する場合は、「肥満症」という歴とした疾患となり、減量などの治療を必要とします。
ただ、「今は太っているだけだから」と安心はできません。肥満を放置していると肥満症になってしまう可能性もあるといいます。
国立がん研究センターの研究によると、BMIが30.0〜39.9の場合のがんも含む総死亡リスクは、一般的な体型のBMI23.0〜24.9の人に比べて男女ともに約1.4倍だったそうです。
また、健康全体のことを考えると男性はBMI21.0〜26.9、女性はBMI21.0〜24.9の範囲での体重管理が理想だそうです。
肥満は「自己管理の欠如」という「負の烙印」
肥満の人に対して、「生活がだらしないから」とか「自己管理ができていない」といった決めつけをしがちです。
しかし、肥満は、例えば運動不足や食べ過ぎなどが原因だと単純に片付けられるものではなさそうです。
肥満や肥満症の要因は、生活習慣以外に遺伝的な要因や生物学的要因(腸内細菌叢など)、環境的要因(残業やストレスなど)、社会的要因(車社会や交通網の発展、コンビニの増加など)など、とても多様でそれらが複合的に組み合わさっているといいます。
肥満は自分の努力だけでは解決が難しいとされているのです。
にもかかわらず、多くの人は肥満の要因は自己管理能力の欠如と考えてしまいます。
「オベシティ・スティグマ」という言葉があるといいます。
肥満という「特定の属性に対する負の烙印」、「偏見・差別」をそう呼ぶそうで、当の肥満の人自身も「自己責任」と考えがちといわれています。
肥満症患者の約9割が肥満の責任は「自分」
日本イーライリリーと田辺三菱製薬が肥満症の患者と医師、一般生活者を対象に行った意識調査によると、肥満症患者の87%、医師の64%、一般生活者の70%が、肥満は「本人の責任」と回答したといいます。
肥満に対する「オベシティ・スティグマ」、つまり自己管理が欠如しているといった「肥満に対する偏見や差別」が、患者や一般の人のみならず専門家である医師の間でも存在していることがうかがえます。
さらに肥満症患者の63%は、肥満が「100%自分の責任」と答えています。肥満症患者の「自己スティグマ」が強いことが示されたといいます。
調査では「オベシティ・スティグマが肥満症治療の妨げとなってきた可能性が考えられる」と分析。そして「社会全体で肥満や肥満症を正しく理解し、オベシティ・スティグマを解消していくことが重要」と提言します。
誰もが肥満になる可能性を持つだけに、この「スティグマ」という言葉、心に留めておきたいですね。
<参考>
*「科学的根拠に基づくがん予防」(国立がん研究センター)
*「あなたの肥満、治療が必要な『肥満症』かも⁉︎」(一般社団法人 日本肥満学会)
*「肥満は自己責任ではありません」(大正製薬株式会社)
*「肥満のスティグマとメンタルヘルスに関して」(秋田大学大学院医学系研究科 代謝・内分泌内科学講座)
*「肥満症に関する肥満症のある人・医師・一般生活者への意識調査(2024.11.8〜18)」(日本イーライリリー株式会社・田辺三菱製薬株式会社