プラスコラム
PLUS COLUMN

貧血と脳貧血は別のもの

通勤電車などで立ち続けていたら、気分が悪くなってしゃがみこんでしまったなどという経験はありませんか。

今回は脳貧血のお話です。

 

「貧血」と「脳貧血」は何が違う?

「貧血」という言葉が入るので混同しやすいのですが、「脳貧血」は「貧血」とは別のものだといいます。

「貧血」の多くは鉄が欠乏して起きる「鉄欠乏性貧血」で、血液中のヘモグロビンが不足することによって、体全体に酸素が十分に行きわたらない状態です。

 一方「脳貧血」は、急に立ったり、長時間立ち続けることで血圧が低下して、一時的に脳に血液と栄養を供給する血液量が不足してしまった状態。正式には「起立性低血圧」というそうです。 

脳貧血は鉄分不足で起こるわけではないので、採血をしても血液中のヘモグロビン値に異常はないといいます。

 

とっさの対処法はその場でしゃがむか横になる

脳貧血の症状は人によっても違うようですが、一時的に脳が必要とする酸素が不足するために、めまいや立ちくらみ、吐き気、冷や汗、顔面蒼白、目の前がぼやけるなどの症状が出ることが知られています。

もしそのような症状が起きたときには、我慢せずにまずしゃがみこんで頭の位置を低くするとよいといいます。

我慢して立ち続けていると意識を失ったり、転倒した際に頭を打つおそれがあるので気をつけて。

可能なら横になるのがよいそうです。その際は頭を低くすることが大事です。

足の下にクッションなどを入れて、頭の位置が心臓より低くなるようにして横になりましょう。

頭の位置を低くすることで脳に血液が行きやすくなり、症状が回復しやすくなるといいます。

なお、症状がおさまった後も、急に起き上がってはいけません。何かにつかまりながら、ゆっくりと起き上がるとよいそうです。

 

脳貧血はなぜ起こる?

 でもなぜ脳貧血を起こすのでしょうか。

様々な原因があるようですが、1つに血圧をコントロールしている自律神経がうまく働かなくなっているときに脳貧血を起こすことがあるそうです。

 また、低血圧の人は血液を全身に送る圧力が低いので、心臓より上にある脳へ血液が届きにくくなります。そのため血圧が正常な人と比べると脳貧血を起こしやすくなるといわれています。

 さらに適切な水分補給ができていない脱水状態では、体を循環する血液量が減るので、相対的に脳に送られる血液量も減少して、脳貧血を起こしやすくなるといいます。

 睡眠不足や疲労があるときなども、脳貧血を起こしやすいそうですから気をつけましょう。

 

脳貧血の予防で心がけること

 脳貧血を予防するには、まずは急に起きあがったり立ちあがったりせず、ゆっくりした動作を心がけることが大事だそうです。

また同じ姿勢のまま立ち続けないように注意しましょう。

ほかにも栄養バランスを整えて、適度な運動と休養、十分な水分補給を行うことも大事なポイント。

生活が不規則な人はできるだけ規則正しい生活を心がけて、自律神経のバランスを整えましょう。

 なお、脳貧血が一時的なものであっても、めまいや吐き気の症状が強いときや気を失いそうになったときなどは、そのままにせず、すぐに病院を受診することをおすすめします。

 脳貧血の原因は様々で、原因や症状によっても診療科が異なるといいます。診療科に迷ったときは、まずはふだん受診している内科などで相談を。

 

<参考>

※『ウィメンズ・メディカ』(小学館)

※「女性も男性も『貧血・めまい』に注意!」(サワイ健康推進課 沢井製薬株式会社)

※「低血圧」(一般社団法人 愛知県薬剤師会)

※「起立性低血圧症」(一般社団法人 西彼杵医師会)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

関連キーワード