おこげを食べると「がん」になる?
「おこげは体に悪い」とか「がんになる」というのをよく耳にします。
肉や魚、野菜などのおこげは香ばしく、食欲をそそるだけに「がん」との関係は気になります。
おこげの何がいけないのでしょうか?
「おこげを食べるとがん?」不安4人に1人
喫煙や飲酒など「がん」を発症する要因については、さまざま指摘されていますが、やはり気になるのは毎日の食生活かもしれません。
食品に含まれる発がん物質といえば、まず食品添加物でしょうか?
食品安全委員会の2003年の調査でも「発がんの可能性の高い要因」として食品添加物をあげた人が70.1%でトップでした。
以下、「農薬」(66.8%)、「遺伝子組み換え食品」(33.2%)に次いで「おこげ」が24.6%で4番目でした。
4人に1人が「おこげを食べるとがんになる?」といった不安を感じているようです。
長時間、高温加熱で生まれる発がん物質
「こげた肉は食べるな」とか「こげた魚は体に悪い」などと昔からいわれてきました。
この肉や魚の焼きこげに含まれる物質の正体は、「ヘテロサイクリックアミン」というそうです。タンパク質やアミノ酸を高温で長時間、加熱調理するときに生じるといわれ、がんとの因果関係が示されているようです。
また、ジャガイモやタマネギ、もやしなどの野菜類やパンなどを長時間加熱したときの焼きこげに含まれる「アクリルアミド」という物質も発がん性が指摘されているといいます。
2つの中ではアクリルアミドのほうが発がん性が高いといわれているようですが、まだはっきりと解明されたわけではなさそうです。
「できる限り」摂取の低減に努める?
そもそもおこげに含まれるアクリルアミドの量は極めて微量。1日に食べる量も日本人の場合、推定平均0.240μg(体重1kg/日)とされます(厚生労働省「加工食品中アクリルアミドに関するQ&A」より)。
多量のアクリルアミドを与えた動物の実験では発がん性が報告されていることから、人に対しても可能性が?……ということのようです。
ただ、国際がん研究機関(IARC)による発がん性分類によると「おそらく発がん性がある」に分類されていることから、食品安全委員会では「できる限り(摂取の)低減に努める必要がある」としています。
アクリルアミドの摂取は何から?
私たちは日ごろ、どのような食品からアクリルアミドを摂取しているのでしょうか?
食品安全委員会によると、高温で調理した野菜(フライドポテト、炒めたモヤシやタマネギ、キャベツ、レンコンなど)が56%、飲料(コーヒー、緑茶、ウーロン茶、麦茶など)17%、菓子類・糖類(ポテトチップス、せんべい、クッキーなど)16%、穀類(パン類など)5.3%、その他の食品(ルウなど)6.2%と推定されています。
アクリルアミドは、炭水化物を多く含む原材料を高温(120℃以上)で加熱調理した食品に含まれている可能性があるとされます。
過剰な心配より、ほどほどに
ヘテロサイクリックアミンもアクリルアミド同様、食品を加熱調理する過程でできるとされています。家庭で調理するときは、肉や魚、またはジャガイモ、レンコンなどを揚げたり、炒めたり、焼いたりするときは、必要以上に長時間加熱しないように調理法を工夫する必要がありそうです。
加熱していない生の食材や茹でたり、蒸したりした場合にはこれらはできないか、できても微量だとされています。
ただ、こうした物質を過剰に警戒するのは現実的ではないというのが多くの専門家の意見で、むしろ、不安になって必要な栄養が十分に摂取できないことの方が問題だといわれています。
おこげの心配もほどほどが肝心ということでしょうか。
<参考>
*「加工食品中アクリルアミドに関するQ &A」(厚生労働省)
*「食品に含まれているアクリルアミド」(農林水産省)
*「『加熱時に生じるアクリルアミド』評価書に関する情報(Q &A)」(食品安全委員会)
*「食品に含まれる発がん物質には、どのようなものがありますか?」(東京都保険医療局)