プラスコラム
PLUS COLUMN

素朴な疑問。プラークと食べかすは別物なの?

口の健康を考えるときに、必ずというほど出てくるのが「プラーク(歯垢)」という言葉。

「その言葉なら知っている」という人も多いのですが、はたして「プラーク」とはどんなものなのか、正しく理解している人は意外と少ないようなのです。

 

知っているようで知らない「プラーク」の正体

 皆さんは「プラーク」と聞くとどんなものを思い浮かべますか? 

多く聞くのが「食べ物の残りカス」という答え。またプラークは「歯垢」とも言いますから、読んで字のごとく「歯についた垢のようなもの」と思っている人もいるかもしれません。

 けれども、どれも正解ではありません。プラークの正体は「食べ物の残りカス」や「垢」といった生やさしいものではなくて、歯に付着した「細菌の塊」なのだそうです。

 私たちの口の中には300~400種類もの細菌が存在していて、1mgのプラークの中になんと約1億~10億個もの細菌がいるといわれていますから、まさに「ばい菌の塊」がプラークなのです。

 

プラークはなぜできる

 でも、どうやってプラークが形成されるのでしょうか。

 食事をした後の食べかすや口の中の細菌は、歯に付着しても唾液のもつ自浄作用と細菌の繁殖を抑える抗菌作用によってほとんどは流されてしまうそうです。

けれども、歯と歯のすき間や歯の根元のように唾液が届きにくい場所では、そこに留まってどんどん増殖してプラークを形成するといわれています。

 プラークは食後8時間程度でできるといわれていますが、この段階であればていねいな歯磨きで除去できるといいます。

けれどもプラークを除去できないでいると、数日で石灰化して硬い歯石となってしまうそうです。

こうなると、歯石はもはや歯磨きでは除去できなくなってしまいます。歯科医院で専用の機器を使って取り除いてもらうことになります。

 

歯周病が怖いわけ

「でも歯石の何が問題なの?」と思う人もいるかもしれません。

ザラザラした歯石は細菌の格好の棲みかとなり、虫歯や歯周病、口臭などを引き起こします。

虫歯や歯周病は、歯が抜ける大きな原因になりますが、それだけではありません。

近年は歯周病があることで動脈硬化などの血管系の病気や心臓病、肺炎や早期低体重児出産、糖尿病などの病気を引き起こすリスクが高まることが知られています。

ですから、「たかが歯石」とあなどって放置してはいけません。

定期的に歯科医院で歯石を除去して、歯周病を予防することが体の健康のためにも大事なポイントになります。

 

デンタルフロスや歯間ブラシの活用を

ところで、前述したように、歯石になる前のプラークはていねいなブラッシングで取り除くことができますが、歯の根元や歯と歯の間は歯ブラシが届きにくく磨き残しの多い場所。

専門家は、デンタルフロスや歯間ブラシなどを併用して食べかすがプラークになる前にかき出してほしいとアドバイスします。

面倒だなと思う人も多いかもしれません。けれども口の中を細菌の巣窟にしないためにも、ここは頑張ってていねいなケアを心がけたいもの。

歯に付着している「プラーク=細菌の塊」を可能な限り取り除いて、口の中の健康と清潔を保ちたいものですね。

 

 

<参考>

※「プラーク/歯垢」(e-ヘルスネット 厚生労働省)

※「歯の学校」(日本歯科医師会()

※「歯周病Q&A」(日本歯周病学会)

 

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。