プラスコラム
PLUS COLUMN

飲むと下痢する人にはうれしい牛乳?

牛乳を飲むと下痢したり、おなかが痛くなる人って意外に多いようです。

乳糖を消化できないことによるものらしいのですが、そんな人に向けて、最近は乳糖を分解するなどした牛乳も市販されているようです。

 

乳糖を分解できない「乳糖不耐」とは?

 牛乳が苦手といった人は少なくないようです。

牛乳を飲むとおなかがゴロゴロする、下痢をする、ガスがたまるといったことをよく聞きます。

こうした不快な症状があらわれることを「乳糖不耐症」とか、単に「乳糖不耐」と呼ばれます。

乳糖不耐(症)は、牛乳の中に含まれる「乳糖(ラクトース)」を消化・吸収するためのラクターゼという酵素の分泌不足が原因といわれています。

といってもみんなが牛乳を飲むたびにおなかの調子が悪くなるわけではなさそうで、「ときどき」とか「たまに」といった人もいるようです。

また、牛乳が少しなら大丈夫とか、冷たいとダメだけど温めると下痢しにくいなどということもよくいわれます。

 乳糖不耐(症)は「病気」というよりも「体質」ととらえるのが一般的なようです。

日本人の10〜20%が乳糖不耐(症)といわれています。

 

ラクターゼの活性は年齢とともに低下する?

乳糖を分解する酵素、ラクターゼがもっとも活発に分泌されるのは、授乳が必要な生まれたばかりの赤ちゃん時代のようです。

というのも乳糖は母乳にも含まれていて、栄養源のほとんどを母乳に頼っている新生児期に乳糖が分解できなければ命の危機に陥るからです。

ラクターゼの分泌や働きは成長するに連れて徐々に低下していき、成人するころには、そうした機能がほとんど失われてしまうといわれます。

 乳糖は牛乳や乳製品以外の食べ物には含まれていませんから、授乳の時期を過ぎると、少しずつ牛乳への依存度も低下し、食生活の中でラクターゼが活躍する場面も減少。結果、乳糖不耐(症)になってしまうということのようです。

乳糖不耐(症)は日本人などの農耕民族やアジア系、アフリカ系の人に多いといわれます。

 

それでも「牛乳を飲みたい!」

 乳糖不耐(症)は食習慣と関係があるといわれています。

子どものころから牛乳などの乳製品を摂取し続けてきた人は乳糖不耐(症)になりにくいといわれます。

また、乳糖不耐(症)でも牛乳を少しずつ数回に分けて飲んだり、温めたり、コーヒーに混ぜたりして、乳糖を分解しやすい体質にすることもできるそうです。

チーズやヨーグルトを牛乳の代わりにすることもできるといわれます。

ただ、それは分かっているけれども、「やはり牛乳を飲みたいのだ!」という人は多いでしょう。

なんといっても牛乳は知っての通り栄養の宝庫。カルシウムはもちろん、たんぱく質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンなど多くの栄養素を含んでいます。

免疫力を高める効果もあるといわれています。

 

ラクトースフリーの牛乳で下痢が防げる?

 そんななか乳糖(ラクトース)をあらかじめ酵素で分解した「ラクトースフリー」の牛乳が発売されたというニュースがありました。

それまでも乳糖を減らした牛乳が売られてはいましたが、普通の牛乳とは違って商品は限られていて、いつでも、どこのお店にも置いてあるということではなかったようです。

乳糖不耐(症)の人が少ないといわれる欧米ではラクトースフリーの牛乳が手軽に入手できる反面、乳糖不耐(症)の人が多いといわれる日本では、ラクトースフリーがそれほど注目されてこなかったのは不思議ですが、これによって下痢やおなかゴロゴロなどの不安なく、心置きなく牛乳を飲めるのがうれしいですね。

ただいくらラクトースフリーでも一度にたくさん飲めば乳糖不耐(症)の症状が見られることもあるようですから、適量を心がけて。

 

<参考>

*「牛乳を飲めない人のために~乳糖不耐症について~」(独立行政法人 農業畜産振興機構)

*「乳糖不耐症と牛乳アレルギー」(一般社団法人 長野県医師会公式サイト)

*「おなか下らない? 牛乳」(東京新聞/2023.6.14)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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