国内初の大規模調査による「がんの10年生存率」
国立がん研究センターが、今年4月に2008年にがんと診断された人の10年後の生存率を発表しました。
これまでに発表された10年生存率の統計の中でもっとも大規模の調査結果だといいます。
10年生存率が高い前立腺がん、乳がん、子宮がん
今回、国立がん研究センターが発表したのは、全国240施設の症例を対象とした10年生存率の調査結果。24万人近くの患者を対象とした大規模調査の結果をまとめたものです。
それによると、がんの10年生存率はがん全体で59.4%。
がんの種類別で10年生存率がもっとも高かったのは、前立腺がん(98.7)。次いで、乳がん(87.5)、子宮体がん(83.0%)、子宮頸がん(70.7%)、大腸がん(67.2%)、胃がん(66.0%)と続きます。
一方でもっとも厳しい生存率だったのが膵臓がんでした。
また、ステージ別の生存率も発表されて、すべてのがんにおいて、がんのステージが上がるほど生存率が下がることも改めて確認されました。
30代、40代に多い乳がん、子宮がん
日本では新たにがんと診断される人は年間100万人。2人に1人はがんにかかるといわれています。
とくに女性は働き盛りの30~40歳代で乳がん・子宮がんの罹患率が高いことが知られています。
もはやがんは身近な病気ともいえます。他人事ではないと思うことが大切でしょう。
自覚症状がないからこそがん検診の受診が大事
がんのやっかいなところは、初期は自覚症状がほとんどないことだといわれています。
「なんか変だな?」という自覚症状が現れたときには、病状が進んでいることが少なくないそうです。
だからこそ、症状がないときにがん検診を受けて、異常があれば早期に発見し、治療に結び付けたいものですね。
ところが、日本のがん検診受診率はあまり多くありません。平成28年に実施された「国民生活基礎調査」では、男性の場合、胃がん、肺がん、大腸がんの検診の受診率は4~5割程度。女性の場合、これらのがんに乳がん、子宮がん検診を加えた5つのがん検診受診率は3割から4割台で、特に子宮頸がん、乳がんの検診受診率が低いことが指摘されています。
定期的にがん検診を
がんはかつては「不治の病」といわれていました。けれども、今回の国立がん研究センターの10年生存率の発表を見てもわかるように、がんは早期に発見して治療につなげれば治る病気になってきたことは確かなようです。
「自分は健康だから大丈夫」「自分だけはがんにならない」などといった思い込みは捨てて、明日の自分のためにもがん検診を定期的に受けたいものですね。
<参考>
※がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計(国立がん研究センター)
※「がんの10年生存率、59.4%大規模調査で初算出」(東京新聞 2021/4/27)
※リーフレット「令和元年度 がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペーン」(厚生労働省)