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あなたのいびきは大丈夫?

睡眠中に知らず知らずのうちにかいているいびき。いびきをかくのが心配で、友達と泊りがけの旅行に行けないという声もよく聞きます。いびきといえば、男性の悩みのイメージがありますが、実は女性でいびきに悩む人も少なくありません。

いびきの原因

鼻から咽頭をへて、喉頭までの空気の通り道を「上気道」といいますが、睡眠中になんらかの原因でこの上気道が狭くなるといびきが起こります。いびきは、狭くなった上気道の中を空気が通るときに粘膜が振動して起こる音。息を吸ったときにいびきをかく人、吐くときにかく人、また息を吐くときと吸うとき両方でかく「往復いびき」の人もいます。
いびきの原因はさまざまです。たとえばお酒をのんだときなどは、のどの周辺の筋肉が弛緩して気道が狭くなるために、いびきをかくことが多いものです。 習慣的にいびきをかく場合は、気道が狭くなる原因として次のようなことが考えられます。

(1)鼻の病気がある人

副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎など鼻の病気があると、鼻が詰まって、就寝中は特に口を開けての口呼吸になります。口呼吸をしていると、舌が落ち込んで気道をふさぎいびきの原因になります。なお、子どもではアデノイドや扁桃肥大があるといびきの原因になります。ほおって(ほうって?)おくと、呼吸障害で胸郭も変形してきます。気になるときは、耳鼻咽喉科を受診しましょう。

(2)肥満の人

太っていることで、咽頭の壁や軟口蓋に脂肪がつくために、気道が狭くなります。肥満の人はダイエットをすることで、いびきが改善することがよくあります。

(3)下あごが小さい人

女性で多いのが、下あごが小さい人。あごが小さいと舌がおさまりきらずに気道のほうに落ち込んで原因となります。また、かみ合わせの悪い人も要注意です。歯科で相談をしてみましょう。

(4)加齢によるもの

これまでいびきとは無関係だったのに、更年期以降いびきをかくようになったという人もいます。加齢とともに全身の筋肉が衰えてゆるんできますが、上気道の筋肉も例外ではありません。上気道の筋力の衰えから、寝ているときに上気道が狭くなるのです。

家庭でできるいびき対策

あおむけに寝ると重力の関係で、軟口蓋(のどちんこ)や舌根が沈み、上気道が狭くなるためにいびきが起こります。横向きに寝るようにするといびきがおさまります。枕を変えたり、枕の片側を高くするなどの工夫をしてみましょう。そのほか、睡眠中に口呼吸をしないように、鼻孔拡張テープを鼻に貼ったり口呼吸防止用のテープ口に貼るといった方法もあります。
また口呼吸が習慣になっている人は、ふだんから口輪筋を鍛えて、意識的に鼻呼吸をすることも大切です。
部屋の環境も見直してみてください。寝室の空気が乾燥していると、鼻づまりを起こしやすくなります。加湿器などを使って部屋の湿度を上げて寝ましょう。

いびきをかく人は「睡眠時無呼吸症候群」に注意を!

いびきは、周囲の人に迷惑をかけますが、本人がすっきり眠れているのなら問題はありません。いびきで問題なのは、睡眠時無呼吸症候群である場合です。
睡眠時無呼吸症候群というのは、睡眠中に大きないびきをかいて一時的に呼吸が止まってしまうこと。眠っている間に10秒以上の無呼吸があり、それが1時間に5回以上起こる場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。


睡眠時無呼吸症候群の人は、熟睡できないので、慢性的な睡眠不足に陥り、頭痛がしたり、イライラしたり、集中力を欠き仕事に支障が出ます。また昼間激しい眠気に襲われます。そのため車の運転をする人は交通事故を引き起こす危険があります。また、肺や心臓へのさまざまな合併症を起こし、心筋梗塞など命にかかわる病気につながることもあるので、軽視してはいけません。
少しでも睡眠時無呼吸症候群が疑われるときは、早急に耳鼻咽喉科やいびき外来などを受診して、検査をしてもらいましょう。

また、パートナーのいびきがうるさいと感じている人は、ぜひパートナーのいびきチェックをしてあげてください。大きないびきをかく→突然無呼吸になる→いびきが再開する、というケースの場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が大です。早めの受診をすすめてください。


検査の結果、睡眠時無呼吸症候群と診断されたら、生活改善とともに治療を行います。生活改善では、ダイエットや禁煙、飲酒の制限、睡眠中の体位の工夫などをしていきます。軽い場合なら、生活を改善するだけで治ることもあります。
内科的な治療では、CPAP(シーパップ)という装置を用いた療法が一般的で効果があります。これは専用のホース付きの鼻マスクを装着して、眠っている間にある一定の圧力を気道にかける方法で、これにより気道の閉塞が防げます。鼻でスムースな呼吸ができるようになるので、いびきや無呼吸がなくなり、熟睡できます。そのほか、マウスピースを使った治療法や耳鼻科では鼻やのどの手術を行う場合もあります。
睡眠時無呼吸症候群の人の95%は大きないびきを伴うといわれています。家族にいびきがひどいと指摘されたときは、ほうっておかず一度は受診して検査を受けることをおすすめします。

プロフィール

鈴鹿 有子 先生
耳鼻咽喉科
鈴鹿 有子 先生

金沢医科大学 耳鼻咽喉科学教授
女性総合医療センター長
金沢医科大学女医会会長

関西医科大学卒業後、耳鼻咽喉科学教室へ入局。
1985年よりハーバード大学耳鼻咽喉科学へ留学。1992年からジュネーブWHO本部事務局で難聴予防課担当。
その後大阪北逓信病院耳鼻咽喉科部長を経て2000年から金沢医科大学へ入職。
専門はめまい、難聴と耳手術、音声改善手術。現在の研究テーマは聴覚アンチエージング。音、声、音楽を聞くことによって脳を刺激し、それが脳の賦活、コミュニケーション、アンチエージングにつながることを研究中。

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