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耳そうじのしすぎにご用心!

「耳かきするの大好き!」という人は、けっこう多いですよね。「My耳かき」を何本ももっている人、朝に晩にひまさえあれば耳そうじをしている人など「耳かきフェチ」の人も少なくありません。でも、ちょっと待ってください。耳そうじのしすぎは、かえって耳アカを増やしたり、外耳道を傷つけるトラブルの原因にもなるので注意が必要です。正しい耳そうじの方法を覚えましょう。

耳アカの正体は・・・・

耳そうじの話をする前に、耳の構造についてちょっとお話ししましょう。
耳は大きく分けて、外側から外耳、中耳、内耳によって構成されています。耳の入り口から鼓膜までを外耳道といい、耳アカは、外耳道にある耳垢腺と皮脂腺から分泌される粘液と、はがれ落ちた表皮やホコリなどからできています。文字通り「アカ」なのですが、耳の中の異物を包み込みながら排出するという役目ももっています。


耳垢腺は、耳の入り口から1cmほどのところにあるので、耳アカはそれ以上奥にたまることはありません。
つまり、耳そうじをするなら、耳の入り口から1cmほどのところまででよいのです。それ以上奥まで耳かきや綿棒をいれていると、きれいに掃除をしているつもりが、かえって耳アカを耳の奥へ奥へと押し込めてしまうことになります。「しょっちゅう耳かきをしている」という患者さんの耳をみると、しばしば奥のほうに耳アカがつまっていることがあります。これは、耳かきで耳アカを奥へ押し固めているからなのです。

耳そうじが気持ちいいのは・・・・

耳の中には快感を生じさせる迷走神経が分布しているので、耳かきで刺激すると、気持ちよくなります。耳かきがクセになるのは、ズバリ「気持ちがいい」からなのです。脳の咳中枢は迷走神経を介するため、耳かきで迷走神経を刺激すると反射的にセキが出る人もいます。

耳かきでガリガリかいていませんか?

外耳道の内側は、ふつうの皮膚と同じ構造になっています。気持ちいいからとついつい耳かきでガリガリかいていると、外耳道が傷ついて細菌感染を起こし、炎症や湿疹ができます。これを外耳炎といいます。
外耳炎を起こすと、かゆみがでてくるのでさらに耳かきでガリガリかきたくなります。そうなると、炎症や湿疹がひどくなる→さらにかゆみが増すという悪循環に陥ります。また、外耳道に湿疹ができると耳アカの量も増えるようになります。ひどくなると、湿疹や傷口に雑菌がついておできができ、ひどい痛みが起こるようになります。


耳そうじをしているのに、耳アカがたまるという人は、外耳炎を起こしている可能性が大。こんなときは、炎症をこれ以上ひどくしないためにも、一度は耳鼻咽喉科を受診して下さい。
なお、耳そうじのしすぎでできた湿疹などが気になって、耳の中にクリ―ムをつけたり、化粧水で拭く人もいるようですが、これはダメ。よけいに耳の中の汚れが増して耳アカが増えてします。自己流で耳の中にいろいろなものをつけないようにしてください。

耳そうじは、お風呂上りにそっと拭く程度で十分

ちょっと話はそれますが、以前、特殊なろうそくを燃やして耳アカをとるとういう道具が話題になったことがあります。覚えている方も多いと思いますが、耳の奥の耳アカまでごっそりとれるというのがうたい文句でした。でも、あれはまやかしです。「ごっそりとれたように見えた耳アカ」は、実はろうそくのカスなのでしょう。専門家からみると、あのように耳アカがとれるということはあり得ません。
もともと、耳アカは外耳道の皮膚の表面にある小さな繊毛によって外へ運び出されるようになっています。ですから、そんなにしょっちゅう耳かきをする必要はありません。また、いわゆる耳かきも不要です。耳の中の皮膚は非常に薄いので、耳かきを使うと耳の中に細かい傷がいっぱいついてしまうからです。


洗顔するときに、肌をゴシゴシこすらないのと同じで、耳のお手入れもやさしくそっと行って外耳道の皮膚を傷つけないようにしてください。
耳のおそうじをするなら、お風呂上りなどに、綿棒かタオルで耳の入り口近くをクルリと軽くなでるようにして拭くことで十分です。また、耳アカを耳の中に押し込めないためには、綿棒は耳の入り口から1cm以上は入れないことも大事です。

正しいお手入れを覚えて、外耳道の皮膚をいつもすべすべに美しく保って下さいね。

プロフィール

鈴鹿 有子 先生
耳鼻咽喉科
鈴鹿 有子 先生

金沢医科大学 耳鼻咽喉科学教授
女性総合医療センター長
金沢医科大学女医会会長

関西医科大学卒業後、耳鼻咽喉科学教室へ入局。
1985年よりハーバード大学耳鼻咽喉科学へ留学。1992年からジュネーブWHO本部事務局で難聴予防課担当。
その後大阪北逓信病院耳鼻咽喉科部長を経て2000年から金沢医科大学へ入職。
専門はめまい、難聴と耳手術、音声改善手術。現在の研究テーマは聴覚アンチエージング。音、声、音楽を聞くことによって脳を刺激し、それが脳の賦活、コミュニケーション、アンチエージングにつながることを研究中。

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