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PLUS COLUMN

酒も「少し」なら健康にいいらしい?

「少しの酒は健康にいい」とよくいわれますよね。

そのためになかには飲めもしない酒を無理して飲んでいる人もいるとか……。

でもその「少し」ってどのくらい? 

 

健康的な酒量はビール1本?

最近では「酒も少量なら健康にいい」といわれるらしく、「ほら見ろ!」と世の酒好きを調子づかせているようです。

とはいっても手放しで「健康に良い」といっているわけではなく、「少し」という制限付きでのこと。

ではその「少し」とはどのくらいの量なんでしょう。

 

厚生労働省によると「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコールに換算して20グラム程度ということらしいです。

20グラムといわれてもピンときませんが、ビールならロング缶1本(500ml)、日本酒なら1合、チューハイなら350 ml1缶、ワインならグラス2杯に相当するようです。

純アルコールの量を求める計算式は……

  酒の量(ml)×度数または%の100分の1×アルコール比重=純アルコール量(グラム)

で求めます。

例えばロング缶のビールなら、500(ml)×0.05(%)×0.8=20(グラム)です。

 

少量の飲酒で脳梗塞のリスクが低下?

では、この範囲内で酒を飲んでいればまったく健康でいられるかというと、そうとは言い切れないところが悩ましいところ。

さまざまな疫学研究よれば酒の量と健康のリスクの関係は一様ではないらしく、いくつかのパターンがあるらしいです。

例えば、高血圧や脳出血、乳がんは飲酒量に関係なく、飲む量が増えるに連れてリスクが高くなるといわれます。

その一方、脳梗塞や虚血性心疾患、糖尿病(2型)は、まったく飲まない人に比べて少しは飲む(1日平均20グラム未満)といった人のリスクが低いらしいのです。

これは「少量飲酒の疾患リスクの低下は、健康面での飲酒の利点を示唆している」といわれ、そのグラフの形からJカーブとかUカーブなどと呼ばれているようです。

欧米の研究でも、1日平均19グラムまでの飲酒者の死亡リスクは非飲酒者のリスクよりも低くなっているといわれます。

まさに「酒は百薬の長」が一部ではあるけれど科学的に認められたわけです。

 

少量の酒でも健康に悪い?

ところがここにきて「少量の酒でも健康に悪い」という論文が海外で発表されたようで、「健康のリスクを最小限に抑える飲酒量は1日0杯」なんだそうです。 

ただ同じ論文の中で1日1杯(純アルコール換算で10グラム)程度なら虚血性心疾患、糖尿病にかかるリスクは低下している……ともいわれているらしいです。

つまり、やはり飲酒量ゼロとはいわないけれど、10グラム程度のアルコール、例えばビールミニ缶1本(250 ml)、ワイン1杯(100 ml)、日本酒半合(80 ml)くらいなら一部の病気のリスクを低くするということはたしかなようです。

 

飲めない酒を無理に飲むのは健康に悪い?

いずれにしても酒を飲めば酔うし、酔えば転んでケガしたり、気が大きくなって人とのイザコザも起こりやすくなるしで、過剰な飲酒はあまりいいことがありません。

何事も腹八分目といいます。

健康を考えるなら酒は少量に抑えるのがいいようで……といっても、何かと理由を付けて飲みたがる世の「のんべえさん」には馬耳東風、馬の耳に念仏でしょうか。

ただ、飲めない人のために念のためにいえば、いくら少量の酒が健康にいいといっても、飲めないお酒を無理に飲むのは、健康を害するのでやめたほうがよいかと……。

 

<参考URL>

*「賢く飲むためのコツ」(厚生労働省)

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol-summaries/a-03

 

*「『お酒は少量なら健康に良い』はウソだった?」(東洋経済オンライン)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180901-00235594-toyo-soci

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。