慢性甲状腺炎(橋本病)ってなに?
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝を調節しているホルモン。その量が多すぎても少なすぎても全身にさまざまな体調不良が現れます。甲状腺ホルモンが少なすぎる病気(甲状腺機能低下症)では、その症状がうつや更年期障害と似ているので、しばしば間違われがちです。
エネルギー不足に陥り、心身ともに元気がなくなってきます
甲状腺ホルモンが多すぎる病気(甲状腺機能亢進症・こうじょうせんきのうこうしんしょう)の代表的な病気が「バセドウ病」です。
それに対して、甲状腺ホルモンが足りなくなる病気を「甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)」といい、その代表的な病気が慢性甲状腺炎(橋本病)です。甲状腺ホルモンが減ると、全身の代謝が抑えられて体のさまざまな働きが低下します。そのため、無気力になるなど、見た目にも元気がなくなります。甲状腺が全体的に腫れて硬くなってくるのも特徴です。
甲状腺機能低下症で現れる主な症状
□気力がない。
□寒がりになる、冷えがひどくなる。
□動作が遅くなる。
□もの忘れをする。
□しゃべり方がゆっくりになる。
□声がしわがれる。
□顔や全身がむくむ。
□胃腸の調子が悪くなって便秘がひどくなる。
□皮膚がカサカサになる。
□体重が増える。
慢性甲状腺炎は広い年代でみられますが、とくに40代~60代に多くみられます。40代~50代は、ちょうど更年期の時期にあたることから、更年期障害と間違われることもしばしばです。また、活気がなくなり、動作も鈍くなるのでうつ病に間違われたり、ボーっとしたり、もの忘れが多くなることから認知症と間違われることもあります。
これらの症状は、ゆっくりと現れます。上記の症状に3つ以上当てはまる項目があれば、甲状腺疾患の専門家である内分泌科を受診して、ぜひ甲状腺の検査を受けてください。日本甲状腺学会のホームページ(http://thyroid.umin.ac.jp)では、学会の専門医を都道府県別に公開しているので参考にしてください。
体質や遺伝的要素、ストレスなども関係
慢性甲状腺炎(橋本病)は、バセドウ病と同じように自己免疫疾患のひとつで、甲状腺を異物とみなして自己抗体をつくります。この自己抗体が甲状腺を破壊していくために甲状腺ホルモンが減って全身にさまざまな症状が起こるのです。
原因としては、体質や遺伝的要素が関係するといわれています。またストレスが誘因になったり、更年期など女性ホルモンが大きく動くときも発症しやすいといわれています。
薬で甲状腺ホルモンを補えば、健康な人と変わりない生活を送れます
慢性甲状腺炎(橋本病)では、甲状腺の機能を元に戻すために、甲状腺ホルモン剤を内服します。薬の内服で不足している甲状腺ホルモンを補えば、この病気にともなうさまざまな症状が改善し、むくんでいた顔もすっきりします。甲状腺ホルモン剤はほとんどの場合生涯のむことが必要になります。しかし、甲状腺ホルモンの量を正常に保っていれば、健康な人とまったく変わりない生活を送ることができます。
症状が出ていない人も、一度は検査を受けておくと安心
バセドウ病や慢性甲状腺炎(橋本病)など、甲状腺の病気は、圧倒的に女性に多くみられる病気です。甲状腺機能の異常は、簡単な血液検査でわかりますが、一般の自治体や職場などの健康診断のメニューには入っていません。
現在、症状が出ていない人も、健診の際にオプションで一度は甲状腺機能検査を受けておくとよいでしょう。甲状腺の病気の家族や親族がいる方は、特に検査を受けることをおすすめします。