爪楊枝として使っていたものが、「爪楊枝」でない?
飲食店にいけばたいていは置いてある爪楊枝。もちろんコンビニや駅で弁当を買えば、箸袋の中で主役の割り箸にピッタリと寄り添い仲のいいところを見せています。このスリムで丸くて先の尖ったおなじみの爪楊枝ですが、なんだかこのところ、歯にはさまった食べカスをとるのに使ってはいけない、むしろ歯の健康を害するなどいった話も聞こえます。本当でしょうか? いったい何がいけないのでしょうか?
爪楊枝は、歯をホジホジするものではなかった?
食事のあとの爪楊枝による歯のホジホジ、シーハーは、見ていて不愉快、人前でするのはマナーに反するなど、見た目への賛否はいろいろあるようです。歯のホジホジは日本の飲食関係ではごく当たり前の光景とはいえ、使うときは、周囲への配慮を十分に行なう必要があります。人目を避けて、こっそりトイレなどでホジホジするのがいいらしいです。トイレに爪楊枝を用意してある飲食店もあるようです。
こうした歯ホジホジ、シーハーはランチ時のオフィス街の風物詩でもあります。ウィークデーの昼下がり、ランチを食べ終えて店を出てきた男たちが道をブラブラしながら歯をホジホジ、シーハーシーハー・・そんな光景が街のあちこちで見られます。
ところがこの爪楊枝を使った歯のホジホジ、シーハーが歯茎を傷めるというのです。
オフィス街の昼下がりの光景を一変させかねない一大事です。
ひと口に爪楊枝といってもさまざまな形の爪楊枝があります。
よく目にするのは軸が丸い形をした爪楊枝。飲食店に置いてあったり、弁当の付属物として割り箸と一緒に箸袋に入っています。ほとんどの家庭にある爪楊枝がこれで、爪楊枝といえば多くの人がこの軸が丸いタイプを連想すると思います。
その他、先の方が三角状に削られたものや、ミントの香りをつけたもの、竹や金属製、プラスチックのものなど、たくさんの爪楊枝があります。
爪楊枝は海外にもあり英語でTooth Pick(トッゥースピック)といいます。
ただ厳密にいうと、私たちがふだん目にしている一般的な爪楊枝は、欧米ではCocktail Pick(カクテルピック)と呼んでいるものだそうです。つまり果物やハムなどを突き刺して食べるときに使われるものなのだそうです。ということは、歯の手入れに使うものではないものを爪楊枝として使っているということになります。
あの爪楊枝で歯をせせると歯茎を傷める?
いままで私たちは爪楊枝として使ってはいけないもので、歯にはさまった食べカスをとろうとしていたことがわかりました。たしかにおなじみのあの爪楊枝を歯と歯の間に差し込もうとすると、尖った先端が歯茎に刺ささったりして危険です。当然、歯茎を痛めるおそれがあります。また、歯にはさまった食べカスをとろうと爪楊枝を無理に歯と歯の間に入れると歯が爪楊枝に圧迫されて、ぐらつきの原因にもなりかねないといいます。
では歯に食べカスがはさまって、どうにも気持ちが悪いときにはどうするか? やはり歯間ブラシやデンタルフロスを使うのがよいようです。そんなものはふだん持っていいないという方は、応急処置として水かお湯で口の中をブクブクしてみてください。運がよければ除去できるかもしれません。
では歯をホジホジできる爪楊枝はないのか? じつはあります。軸が丸い一般的な爪楊枝ではなくDental Pick(デンタルピック)と呼ばれる専用の爪楊枝が。あくまでも爪楊枝にこだわる人は試してみてはいかがでしょう。
((株)広栄社/歯間ようじ「ドクターピック」
URL:http://www.cleardent.co.jp/item/item02.html)
ちなみに「くろもじ」というのがあります。爪楊枝にどことなく似ていますが、歯をせせるものではなく、お茶席などのお菓子につけられるもので、和菓子などを食べやすい大きさに切るときに使います。クロモジ(黒文字)というクスノキ科の植物を使って職人さんがつくります。
インドから日本へ。爪楊枝は歯ブラシの原型?
爪楊枝で歯をせせるという、いかにもほのぼのとした日本的風景からの連想で、爪楊枝は日本原産と思われがちですが、もとから日本にあったわけではなく、仏教の伝来とともにインドから中国、朝鮮半島を経由して6世紀半ばごろに伝わったものといわれています。
ちなみに「楊枝」の呼び名は主に楊柳(ようりゅう・柳のこと)の枝を材料に使ったことが由来です。いまでは柳の枝の代わりに、多くは白樺が使われるようになったそうです。爪楊枝はもともとは房楊枝(総楊枝・ふさようじ)などと呼ばれて、楊枝の先端を平たく房のようにササラ状に加工して歯を磨いていたそうです。その後、先端をとがらせて歯の手入れがしやすいように改良されてきたことから「爪楊枝」と呼ばれるようになったといいます。爪楊枝の「爪」は爪先の代わりに使うものとか、先端でつまむものといった意味があるということです。
明治時代になって歯ブラシが入ってくるとともに房楊枝はほとんど姿を消したようですが、爪楊枝はいまも現役として生き続けています。
でも私たちがよく知っていて、ふだんよく使っているその爪楊枝が、本来の「爪楊枝」ではなかったという、どうにも奥歯にものがはさまったようなことになってしまいました。……お許しください。
<参考URL>
*「健康へのとりくみ」(清歯科医院)
http://www16.plala.or.jp/kiyosi-shika/index.html
*「審美歯科の教科書〜歯のケア」((株)エオリフ)
http://dental-shinbi.com/519/
*「びんちょうたんコム〜たかが楊枝、されど楊枝!」(プレマ(株))
http://www.binchoutan.com/youji/
*「つまようじ資料室」((株)広栄社)
http://www.cleardent.co.jp/siryou/index2.html