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歯周病は全身の病気を招く?

「リンゴをかじると血が出ませんか?」……かつてこんな歯みがき剤のテレビCMがありました。当時、どのくらいの人がこのキャッチコピーに驚いてリンゴをかじったか分かりませんが、時代は変わっても歯周病、怖い病気に変わりありません。あなたは、リンゴをかじると……?

 

「リンゴをかじると血が出る?」

「リンゴをかじると……」のCMコピーが放映されたのはおよそ50年前。当時は国民の3人に1人が歯槽膿漏(しそうのうろう)、つまり今でいう歯周病にかかっているといわれていました。

「(歯茎から)血が出ませんか?」という言葉に、さぞかし多くの人がゾッとしたことでしょう。あせりにあせってリンゴをかじった人が続出したのではないでしょうか。

それにしても「歯槽膿漏」……漢字がいかにも怖いですね。

「歯茎から膿が漏れ出ている」のですから。

 江戸時代、歯周病は「歯草」と呼ばれたらしいです。

「息が臭い(草)」からというしゃれでしょうが、昔から人々は歯周病に悩まされていたのですね。

 現代でも20〜30代の13%以上が歯ぐきの腫れや出血などの歯周病にかかっているといいます。

 

歯周病は糖尿病やがんなどの原因に?

 歯の周りは血管で全身とつながっていますから、歯の腫れや出血は歯だけのトラブルと考えるのは間違いのようです。

 歯周病には数十種類の細菌の関わりが疑われているようで、他の多くの感染症が1種類の細菌の感染から発症するのとは様子が違うようです。

 歯周病は歯肉に炎症を起こしたり、歯を支える骨を溶かしたりといったことの他に、全身に大きな影響を及ぼすといわれます。

 よくいわれるのは糖尿病ですが、他にも心臓病や動脈硬化、脳梗塞や脳卒中などの脳血管障害、呼吸器疾患、骨粗鬆症、早産・低体重児出産、がんなどが指摘されています。

 

「8020」対策は早めのケアが大切?

 歯周病の予防には、歯みがきなどで口の中の清潔を保つことが大切とよくいわれます。それ以外にも食生活や喫煙、ストレス、飲酒といった生活習慣とも深い関連があるようです。

 その歯みがきですが、約50年前の1969年の厚労省の調査では毎日歯みがきする人の割合は79.7%でした。なかでも1日2回以上みがく人はわずか16.9%。

 2016年の同じ調査では毎日みがく人は95.3%、2回以上みがく人は77.0%に増え、そのうち3回以上は27.3%です。

 ところで永久歯は何本あるかご存知でしょうか?

 いわゆる「親知らず」の4本が生えそろうと、全部で32本です。

 今、あなたの歯は何本ありますか?

 20〜25歳ではほとんどの人が28本以上の歯がありますが、30歳を過ぎる頃から歯を失うケースがみられるようです。

 30代後半で20%以上、40代になると30〜40%以上の人が1本以上の歯を失っているということです。

 いわゆる「8020(ハチマルニイマル)運動」つまり80歳で20本以上の自分の歯を残す活動は、高齢になってからのケアでは遅い、若いうちからということかもしれません。

 歯は一生付き合う長〜い友達。早いうちから大切に守っていきましょう。

 

<参考>

*「平成28年歯科疾患実態調査」(厚生労働省)

*「歯周病・e-ヘルスネット」(厚生労働省)

*「いい歯東京」(東京都福祉保健局)

*「筆洗」(東京新聞・2022.6.4)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。