
最近人気の加熱式タバコはタバコではない?
次世代のタバコとして登場した加熱式タバコ。TVのバラエティー番組で取り上げられたり、愛用する芸能人がいることなどから注目が高まって、喫煙者を中心に需要が広がっているようです。健康リスクが少ないと言われている加熱式タバコですが、はたして安全なタバコなのでしょうか。また受動喫煙の害はないのでしょうか。今回は、加熱式タバコのお話です。
加熱式タバコの人気の理由とは
「健康リスクが大幅に低減」され、「煙もニオイも残らない」を売り文句にしているのが加熱式タバコ(IQOS、Ploom Tecなど)です。
加熱式タバコとは、タバコの葉を加熱して、水蒸気のようなものを発生させて吸うものです。紙巻きタバコは、タバコの葉を燃やしてその煙を吸いますが、加熱式タバコは煙を発生させないために、有害物質を大幅に低減しているというのが売り文句です。また、煙が出ないから、従来のタバコのような臭いニオイがつかない、受動喫煙の被害も抑えられるといわれています。
前回のコラムでは電子タバコの話をしましたが、日本の電子タバコと加熱式タバコの大きな違いは、ニコチンの有無なのかもしれません。
日本では薬事法でニコチン入のリキッドが禁止になっていますから、日本の電子タバコはニコチンを含まない液体式カートリッジを使用しています。一方、加熱式タバコは葉タバコを使用します。ニコチンはタバコの葉に含まれる成分ですから、加熱した蒸気を吸うことでもしっかりニコチンが摂取できるというわけです。紙巻きたばこを吸ったような満足感があると、人気が高まっているようなのです。
紙巻きたばこと同様にニコチンが含まれる?
煙やニオイがなくても、加熱式タバコは立派なタバコだといえます。
また、たとえば加熱式タバコの中には、タールなどの有害物質を9割以上削減できたといわれているものもありますが、有害物質がゼロだといっているわけではありません。加えて、強い依存性のあるニコチンが、紙巻きたばこと同程度含まれている点も、問題だと専門家は指摘します。
ニコチンは肺から摂取されると血液にのって約10秒ほどで脳内に入り込むといわれています。ヘロインやコカインなどの麻薬と同じようにニコチンも「脳内報酬系」といわれる神経に作用しますから、摂取したときは大きな満足感が得られます。しかし、血中のニコチン濃度が薄くなると、疲労感やイライラなどがあらわれてきます。これがタバコの禁断症状です。そこでイライラを鎮めようとまた1本吸う……タバコを止めようと思ってもなかなか禁煙できないのは、ニコチン依存に陥っているからだといいます。
禁煙の第一歩としてグ加熱式タバコを使っている人もいるようですが、加熱式タバコを吸っている限り、ニコチン依存からは逃れられないようです。
気になる受動喫煙は?
では、受動喫煙の害はどうなのでしょうか。医師らでつくる日本禁煙学会は、以下の見解を出しています。「非燃焼・加熱式タバコにも紙巻タバコと同程度のニコチンが含まれており、(~中略~)発がん物質も含まれている。(~中略~)上記商品は安全性が科学的に確認されるまで、他者のいるところで使用すべきではなく、当然、公共の場での使用は禁じられるべきである」(「いわゆる『新しいタバコ』に対する日本禁煙学会の見解』より引用」2016年4月11日)
従来の紙巻きたばこに替わって、近年次々と登場している新型タバコ。
新型タバコが体に及ぼす影響については、長期的な調査をした研究が出ていないため、まだはっきりとはわかっていないようですが、少なくとも安心・安全・健康的なタバコというものは存在しないと考えたほうがよさそうです。
<参考資料>
*いわゆる「新しいタバコ」に対する日本禁煙学会の見解(日本禁煙学会)
http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/newtobaccoopinion.pdf
<参考URL>
*「流行の電子タバコ、健康にいいのか? 医師の視点」(ヤフーニュース)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakayamayujiro/20160708-00059374/
*「電子タバコ、ついに18歳未満への販売が米国で違法に」(ライブドアニュース)
http://news.livedoor.com/article/detail/11880605/
*「新型たばこ、消えぬ人気 路上喫煙OK? 困惑する自治体」(デジタル朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASJ92551TJ92TIPE00Z.html?rm=702