「脱タバコ」の動きはドラッグストアにまで?
最近、大手ドラッグストアがタバコ関連商品の販売を中止するといった報道がありました。
タバコを取り巻く環境は厳しくなるばかりのようです。
「たかが」で「されど」なタバコ事情を考えました。
喫煙と健康は両立しない?
「タバコは吸いたい」でも「病気にはなりたくない」……。
愛煙家にとってこの2択は悩ましい問題ですが、喫煙は「予防できる最大の死亡原因」(厚生労働省/e-ヘルスネット)といわれるように、タバコの有害性は明らかで、喫煙と健康の両立はあり得ない選択かもしれません。
喫煙のタチの悪いところは、吸っている本人がその害を受けるだけでなく、周りの人が有害物質を含んだ副流煙を吸い込む「受動喫煙」によって健康を害することにあります。
厚労省によれば受動喫煙による肺がん、心疾患や脳卒中などの病気で年間に約1万5,000人も亡くなっているといいます。
生涯タバコを吸えない国の誕生?
タバコの有害性については、いまさらいうまでもなく明らかで、世界的な問題となっているようです。
その対策として、たとえばニュージーランドでは、このたび画期的な法案が成立したそうです。
新聞などによると、「2009年以降に生まれた人が生涯にわたり、タバコ(紙巻きタバコ)を吸えなくする」ための法改正案が議会で可決、成立したというものです(東京新聞/2022.12.20)。
ニュージーランドでは18歳からが喫煙可能な年齢だったということですが、この法案によって、今の子どもたちは生涯、タバコを吸えないことになります。
この荒療治ともいえる法案に対し国民の反発もあるようですが、それだけ禁煙することの難しさを示しているともいえそうです。
「脱タバコ」の動きはドラッグストアにも?
そんな反喫煙、脱タバコともいえる世界的な流れの中、日本の大手ドラッグストアがタバコ関連商品の販売を中止するというニュースが報じられました。健康志向の強まる「今」を象徴する出来事かもしれません。
「健康を提供」するドラッグストアが、喫煙によって健康を損なうタバコを扱うのは如何なものかといったことがその理由のようです。
この判断がタバコの販売全体に及ぼす影響は少ないだろうということですが、愛煙家への心理的なインパクトは大きいように思えます。
タバコを習慣的に吸っている人の割合は年々減少傾向です。厚生労働省「国民健康・栄養調査報告(令和元年)」によると、男性が27.1%、女性が7.6%と、10年前に比べて男性で11.1%、女性で 3.3%減少しています。
先のドラッグストアのニュースなど、最近の「脱タバコ」の動きの広まりから、「そろそろ禁煙を」と考えている人も多いのではないでしょうか。
禁煙の手段として加熱式タバコはあり?
紙巻きタバコを吸っている人が本格的禁煙への前段階として、まず加熱式タバコを吸うことが少なくないらしいです。
はたしてそれによって禁煙の試みは成功するのか?
大阪国際がんセンターなどのチームによるそんな研究結果のあらましが新聞に掲載されていました(東京新聞2023.3.29)。
結果は残念ながら、禁煙に失敗しやすいということでした。加熱式タバコに禁煙への効果を期待するのは難しかったようです。
それどころか禁煙に失敗後は、今まで吸っていた紙巻きタバコに戻った人の割合が加熱式タバコを使った場合、使わない場合よりも4割ほど多いこともわかったといいます。
すべてのタバコを「きっぱり」断つ?
禁煙するときは、タバコと名のつくものはきっぱりと「やめる」ことが重要だと専門家はいいます。
なかには「いきなり禁煙」はつらいので「まずは軽めのタバコにして」などと考える喫煙者もいるようですが、結局、問題の先送り、いつまでも禁煙できないことになりそうです。
ちなみに加熱式タバコの主流煙にも紙巻きタバコと同程度のニコチンや、少量ですがアセトアルデヒドやホルムアルデヒドなどの発がん性物質が含まれているといわれます。副流煙による受動喫煙の不安も依然あります。
タバコは、どういいつくろっても「タバコ」なんですね。
<参考>
*「NZ 紙たばこ禁止法成立」(東京新聞/2022.12.20)
*「加熱式は禁煙に逆効果?」(東京新聞/2023.3.29)
*「加熱式たばこの健康影響」(厚生労働省 e-ヘルスネット)