利用者が増えている電子タバコは無害なの?
喫煙者はもちろん、周囲の人にも深刻な健康被害をもたらすタバコ。厚生労働省は、2020年の東京オリンピックに向けて受動喫煙対策を強化する方針のようです。全国的な禁煙や分煙の高まりから、タバコをやめる人が年々増えていますが、それに代わって使われるようになったのが電子タバコ(Vape)。さらに、最近は、紙タバコと電子タバコの中間にあるような加熱式タバコ(IQOS)などが台頭してきました。これらのものに害はないのでしょうか?
電子タバコは体にも周囲にもやさしいアイテムなのか
電子タバコとは、リキッドと呼ばれる香りつきの液体に、熱を加えてその水蒸気を吸引するもの。タバコの煙と同じように水蒸気が出るので、あたかもタバコを吸っているような感覚になるようです。リキッドには従来のタバコのように有害物質が多く含まれていないし、煙による副流煙も出ないから周囲に迷惑をかけることもないとされています。
禁煙ブームの高まりで肩身の狭い思いをしている喫煙者にとって、電子タバコはまさしく救世主。タバコの代替品として愛用する人も少なくないようです。
「体にやさしい」がうたい文句の電子タバコですが、では「体にとって無害なものなのか」というと、実はその安全性はいまだ不明なところも多いようです。「電子タバコの罠にだまされないで」と多くの専門家たちが警鐘を鳴らします。
発がん性物質の確認も
日本でも普及し始めた電子タバコに対して、2014年、厚生労働省の専門委員会が「電子タバコ」の一部の製品に発がん性物質のホルムアルデヒドが含まれており、健康への悪影響が懸念されるという発表を行いました。
さらに2016年4月に日本禁煙学会が発表した『いわゆる「新しいタバコ」に対する日本禁煙学会の見解』の中では、電子タバコについて以下のように言及しています。
「電子タバコ蒸気・エアロゾル中にIARC発がん性分類グループIに分類されるホルムアルデヒド、グループ2Bのアセトアルデヒド、さらに刺激性を有するアクロレインなどを発生するものがあることが確認されている。電子タバコにおいては、暴発事故、さらに受動喫煙、すなわち二次的な電子タバコエアロゾルばく露について報告されている」(『いわゆる「新しいタバコ」に対する日本禁煙学会の見解』より引用)。
ホルムアルデヒドといえば、名高い発がん物質。シックハウス症候群の原因物質の1つとしても有名です。ホルムアルデヒトドと同じグループIには、ヒ素やアスベストなども分類されています。また、同じくシックハウス症候群の原因物質でもあるアセトアルデヒドやアクロレインなども発がん性があるとされている物質です。
健康への長期的な影響が明らかになってはいないが……
電子タバコはまだまだ歴史が浅く、タバコのように研究やデータが乏しいため、健康への長期的な影響が明らかになっていないといいます。けれども「電子たばこによる喫煙は、従来のたばこよりも危険性が少ないと見られるものの、リスクがないわけではない」ことから、欧米では電子タバコを規制する動きが活発化しています。ティーンエイジャーの間で利用が急増しているアメリカでは、FDA(食品医薬品局)が電子タバコは、未成年者の健康に影響を及ぼすおそれがあるとして、電子タバコを18歳未満に販売することを違法行為と定める新法を施行しました。
具体的な健康被害があきらかになってはいないといえ、「安心、安全、無害である」とはいいきれないようです。
*次回は加熱式タバコについてのお話です。
<参考URL>
*いわゆる「新しいタバコ」に対する日本禁煙学会の見解(日本禁煙学会)
http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/newtobaccoopinion.pdf
*「流行の電子タバコ、健康にいいのか? 医師の視点」(ヤフーニュース)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakayamayujiro/20160708-00059374/
*「電子タバコ、ついに18歳未満への販売が米国で違法に」(ライブドアニュース)
http://news.livedoor.com/article/detail/11880605/
*新型たばこ、消えぬ人気 路上喫煙OK?困惑する自治体(デジタル朝日)
http://digital.asahi.com/articles/ASJ92551TJ92TIPE00Z.html?rm=702