「男と女のけんか」のなぜ?その1
けんかのときに、なぜ女性は過去のことをもちだすのか?
男と女がけんかをしたときに、男性がもっともうんざりするのは、恐ろしいまでの女性の過去の記憶力だと言います。たとえば「重い荷物を持ってくれな かった。あなたって思いやりがないのね」という話から「そういえばあのときも・・」→「このときも・・」「そもそも初デートのときもそうだった」といった 具合に、ネガティブな思い出ばかりが次々と。
「はぁ」――男性が思わずため息をついてしまう、この記憶力。男性にとっては脅威のようですが、女性にとってはあたりまえのこと。この違いはいったいどこからきているのでしょうか?
女性の記憶は感情と密接につながっている?
男性にとっては、とっくに忘れていた事柄なのに、女性はいつまでも覚えている――男女の記憶力の差については、脳科学や心理学などの分野でさまざま な形で研究されていますが、多くの研究結果から、女性は男性よりものごとを細かく記憶にとどめ、なおかつ感情的な出来事を強く記憶する傾向があることが示 されています。
たとえば、ノルウェーの研究チームが行った記憶力についての調査では、年齢に関係なく、男性よりも女性の記憶力のほうがよいことが判明。男性はとくに人の名前や記念日などの日にちを覚えるのが苦手だったという研究報告があります。
また、スイスの大学で行われたある研究結果では、女性はネガティブな画像やポジティブな画像に対して男性よりも感情がかき立てられることと確認できました。そして、感情がかき立てられる画像については女性は男性よりも記憶力がすぐれていたと報告しています。
この差はどこから来るのか、残念ながらはっきりした結論は出ていないようですが、一般に男性と女性とでは記憶に使っている脳の領域が違うと考えられています。
論 理的思考が得意で1点集中型の男性に対して、女性の思考はマルチタスク型。男性は「言語中枢がある左脳」を使って理論的に話そうとしますが、女性は左脳と ともに「感情・感覚を司る右脳」も使って話すと言います。さらに女性は、男性よりも感情と記憶のつながりが密接だと言われていますから、なにか事が起こる と、それをきっかけに、走馬灯のように腹立たしかった過去の記憶もよみがえってしまうのです。
それが、男性からみると「話があちこちに飛ぶ不可解な話し方」になるのでしょう。
男と女とでは違う「けんかの落としどころ」
さらにけんかになったときにもうひとつ大きく違うのが男女のケンカの落としどころ。男性はどうしたらこの話がゴールにたどりつくかを考えますが、女性は結論よりむしろどうしたら私のこの気持ちをわかってもらえるのか、ということに執着する傾向があるようです。
男女の違いを無視してけんかをしていると、どんどんヒートアップしてきますから、互いにほどほどのところで切り上げたほうがよさそうです。
まずは、女性は、過去のことをあまりもちださないように心がけること。男性側は、「過去から現在のことまで持ち出して全否定されている」といった気 分になるようですから、「重い荷物をもってくれなかったから、(あなたから)大切にされていない気がしたの」と今の自分の気持ちだけを述べたほうがよさそ う。
一方男性は、けんかの勝ち負けにこだわらないことが重要。女性はまず、自分の気持ちをわかってほしいのですから、その気持ちに共感しない限り、延々と無用な口論が繰り広げられるでしょう。
こんなときは、まず相手の言い分に耳を傾けて「気づかずにごめん。しんどい思いをさせちゃったね」と女性の気持ちに共感すると「私も言いすぎた」と矛を収めることが多いものです。
もちろん個人差があり、すべての男女がこのようなステレオタイプの反応をするとは限りません。けれどもこれ以上無用な口論を避けたいと思ったときには、試してみる価値は大いにあると思いますよ。
<参考資料>
『恋愛心理学』(ナツメ社:匠英一)