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緊張すると、なぜ手足が震えるのか?あがり症のしくみ

会議や営業でプレゼンテーションをしたり、お客様を前にして新商品を説明したり、働いていると人前で話す機会がけっこう多くありますよね。大勢の人の前で話すときに緊張して手足や声が震えた経験はありませんか?
なぜこんなことが起こるのでしょうか?

 

人は不安や緊張にさらされると、からだが戦闘モードにチェンジする

あがり症のカギを握るのが「ノルアドレナリン」という神経伝達物質。またの名を「闘争か逃走(fight or flight)のホルモン」とも呼ばれていて、不安、恐怖、緊張といったストレスにさらされると分泌が増加します。
 

「失敗したらどうしよう」「うまくやらなくちゃ!」……大勢を前にして話すときに、こんなふうに不安と緊張が高まると、自律神経の交感神経から「ノ ルアドレナリン」が分泌され、血圧や心拍数、体温などが一気に上昇。差し迫った「脅威」に対して、ただちに「闘争」もしくは「逃走」できるように、心身が 覚醒・興奮状態になるのです。それが、激しい動悸や手足の震えとなってあらわれます。
 

まじめな人ほどあがりやすい

あがり症の人にとっては、緊張は最大の敵ですが、緊張すること自体は決して悪いことではありません。適度な緊張は脳を覚醒させ、意欲や集中力を高めます。適度な緊張があってこそ、人は持てる力を最大限に発揮することができるといいます。
 

けれどもそれが行き過ぎて過度に緊張しまうと、頭が真っ白になるなど自分を見失って、持てる力が発揮できなくなってしまうのです。
あがり症 で悩んでいる人の多くはまじめな性格だといいます。そして「失敗は許されない」という思い込みが強い人ほど、過度に緊張しがちです。こんなときは、ゆっく りとした深呼吸が効果的。「ふぅ~」と口からゆっくりと長く息を吐くことを意識した腹式呼吸をすると、からだの緊張がほぐれてきます。
 

また、リラックス状態をつくるには笑顔も有効です。これはつくり笑顔でもよいそうです。緊張しがちなときは、トイレの鏡の前で、思い切り「ニッコリ笑顔」をつくってみましょう。
さらに、あがらないためには、事前の準備も大切です。準備ができていると、自信が深まり心の余裕が生まれます。当日までにできる限り準備を整えて、自分が話している様子もシュミレーションしてみましょう。
あがっているときは、なぜか早口になっていますから、当日は大きな声でゆっくり話すことも心がけて。最後に「緊張して当たり前」「失敗してもたいしたことないさ」といった開き直りも大切です。
 

自分に合ったあがり症克服のコツを見つけて、人前で話すことに慣れていけるとよいですね。

 

<参考URL>
●厚生労働省「e-ヘルスネット」
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-047.html

<参考文献>
『なんでもホルモン』伊藤裕著(朝日出版新聞刊)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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