プラスコラム
PLUS COLUMN

満腹でも「甘いものは別腹」はなぜ起こる?

毎年、暮れから新年にかけてはクリスマスに忘年会、お正月、新年会と楽しいイベントが盛りだくさん。ただでさえ、食べすぎ、飲みすぎで太りや すいこの時期、さらに気をつけたいのが別腹の誘惑です。あんなにいっぱい食べたのに、デザートに大きなケーキを頼んでしまったり、食事の帰り道、ついス イーツを買って家で食べ直した・・・などという経験はありませんか? 
「甘いものは別腹」といいますが、果たして「別腹」は存在するのでしょうか?

 

同じ味のものを食べ続けると、違う味が食べたくなる

おなかいっぱいのはずなのに、いったいおなかのどこにケーキが入ってしまうのでしょうか? 
いわゆる「別腹」は、気のせいでもなんでもなくて、実は「感覚特異性満腹」という現象なのだそうです。
感覚特異性満腹というのは、簡単にいってしまえば、口で感じる満腹感のこと。人は同じ味のものを食べ続けているとその味に飽きて、満腹中枢が早めに反応するといわれています。
 

味覚の基本となる味には「甘味、塩味、苦味、酸味、うまみ」の5つがあるといわれていますが、一般的に料理を構成するのは、このうちの塩味、酸味、 うまみの3味。そのため、食事で満腹になったとしても、甘味だけは別なのです。甘味に対してはまだ飽きが来ていませんから、おなかがいっぱいでもデザート のスイーツはおいしく食べられてしまうのです。これを「感覚特異性満腹」というのだそうです。
 

別腹は本当にあった!?

もうひとつ、「別腹」をつくっているものに「オレキシン」と呼ばれるホルモンがあります。オレキシンは、ギリシャ語で食欲を意味する「オレキス (orexis)」から命名されたといわれるホルモンで、食欲を増進させる作用があるといわれています。好物や甘いものを見るとこのオレキシンが脳内で分 泌されます。オレキシンが分泌されるとその作用で胃がゆるみ、胃の蠕動(ぜんどう)運動が活発に。これにより、胃の内容物が押し出されて、その分胃の一部 にゆとりができます。つまり好物や甘味を前にすると、胃に新しい食べ物が入る「別腹」スペースがつくられてしまうというわけです。
 

どうやら別腹は本当にあるようですね。
でもだからといって、別腹を容認して食事後に欲望のおもむくまま甘いもの食べているれば「肥満街道を まっしぐら」に突き進んでいくので、ご注意ください。また、同じ味を食べ続ける「感覚特異性満腹」の観点からみると、塩味に飽きるとその後甘味をとりたく なるわけですが、甘味に飽きれば再び塩味が欲しくなり・・・という無限ループに陥りやすくなるのでご用心。
別腹は「危険!」と心得ましょう。

 

 

<参考URL>
●独立行政法人農畜産業振興機構 「お砂糖豆知識」
http://sugar.alic.go.jp/tisiki/tisiki/tisiki0908a.htm
<参考文献>
●『「おいしい」となぜ食べすぎるのかー味と体のふしぎな関係』(PHP新書)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。