
「あれ?名前が出てこない!」~もの忘れの不思議~
前に会ったことがあるのだけれど「誰だっけ」。「どうも、どうも」と挨拶しながら相手の名前が思い出せない・・誰でも経験するもの忘れ。なぜ思い出せないのでしょう。
記憶を「引き出す力」が衰える
のどまで出かかっているのに、人の名前が出てこないもどかしさ。ところが何かの拍子に「あっ、○○さんだ」と思いだすことってありますよね。
つまり、その人の名前は脳から完全に消去されているわけではないのだそう。脳の記憶ファイルにその記憶が残っているけれど、引き出せない・・脳の記憶検索がうまく機能していない状態がもの忘れなのです。
もの忘れといえばまっさきに思い浮かぶのが「脳の老化」ですが、実は「覚える力」は年齢を重ねてもそれほど低下しないそうなのです。加齢とともに弱まってくるのは、「覚える力」より「記憶を引き出す力」だといわれています
ストレス、緊張、睡眠不足でももの忘れが増える
もの忘れの原因は、それだけではありません。たとえば、重要なプレゼンや会議など、かんじんなときに必要なことを度忘れてしまうのは、緊張のせい。
またストレスがたまっているときも、もの忘れが増えるといわれます。見たり聞いたりした情報は、脳の海馬というところに記憶されますが、強いストレスがあると記憶の形成が阻害されてしまうそうなのです。
ほかにも睡眠不足も、もの忘れの原因になるそうです。疲れていたり悩みがあって、脳の働きが一時的に落ちているときも、もの忘れが増えるといわれています。
最近もの忘れが増えてきたと感じる人は、ストレスがたまっていないか、睡眠不足になっていないかなど、生活を振り返ってみるのもよいかもしれませんね。まずは しっかり食べて、眠る。規則正しい生活を心がけることが、脳の健康には必要なようです。
なお若年性認知症はもちろん、うつ病や更年期ももの忘れの原因になるといわれています。気になるときは、医療機関を受診することをおすすめします。
意識的に名前を覚える工夫をして、ビジネスシーンで活用を
ところで、そもそも人の名前は覚えにくいものだといわれています。
記憶には、エピソード記憶と意味記憶があり、エピソード記憶は、個人的な経験の記憶をいいます。たとえば、昨日友人と会っておいしいものを食べたというのがエピソード記憶で、意識しなくても自然に覚えているものです。それに対して、覚えようと意識して得る知識が意味記憶です。記号や数字、人の名前を覚えたりするのはこの意味記憶にあたります。
エピソード記憶に比べて、単純な意味記憶は忘れやすいといわれています。ただでさえ、記憶に残りにくい人の名前ですが、自分にとって重要ではないと思える人の名前は、なおさら記憶に残りにくくなります。
とはいえ、人の名前を覚えることは、ビジネスの重要なコミュニケーションツールになりますから、相手の名前を意識的に覚えていきたいものですね。
人の名前を覚えるコツはいろいろあるようですが、たとえば、名刺交換後は「佐藤さんはどう思われますか」とか、「ところで佐藤さん、この件ですが」など、会話の途中に相手の名前を何度も繰り返し呼んで、記憶を強化するのも一案です。心理学的にいうと、人は会話の中で自分の名前を何度も呼ばれると、「自分の存在が認められている」と感じるそうですから、あなた自身の好感度UPにもつながりそうです。
そのほか、相手の名前を慣れ親しんだ単語やイメージと結びつけて記憶に刻む方法や、フルネームで覚えると覚えやすいなどといわれています。試してみてください。
<参考図書>
「脳のワーキングメモリを鍛える!」(NHK出版:トレーシー・アロウェイ、ロスアロウェイ)