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ご存知ですか? 耳垢の意外な効用

耳そうじをすると耳垢が取れて気持ちがいいですね。

でも、耳垢には意外な効用があるのだそうです。

今回は耳垢のお話です。

 

耳そうじの頻度は?

突然ですが、耳そうじはみなさんどんな頻度でしていますか? 

LINEリサーチ(LINE株式会社)が全国の10~50代男女対象に行った調査によると、週に1回以上そうじすると回答した人は全体の69%。ほぼ毎日しているという人も17%いました。  

年代別にみると、上の年代になるほど耳そうじをしている人の割合が増えていて、「週1回以上」耳そうじをしている人の割合は、10代では56%でしたが、40代~50代では7割を超えていて、毎日する人は30~50代では2割前後いました。

皆さん結構耳そうじの頻度は高いようです。

 

頻繁な耳そうじに注意を

 ひんぱんに耳そうじをする人が多い中で、耳鼻咽喉科の専門家は基本的に耳そうじの必要はないとしています。

一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のホームページによると「ヒトには耳垢を自然に排泄する機能(自浄作用)が備わっているため、多少の耳垢であれば家庭で無理に取る必要はまったくありません」としています。

 また「耳掃除は医学的には不必要かつ危険な行為であることを認識してください」と警鐘を鳴らします。

綿棒や耳かきを使って耳そうじをすることで、逆に耳垢を押し込んで「耳垢栓塞」となったり、外耳道を傷つけて「外耳炎」を起こしたり、また耳掃除をしているときに他人と接触するなどして鼓膜を破ってしまう事故を起こすこともあるといいます。

 

耳垢は「ただの垢」ではない

 そうはいっても「耳垢をひんぱんにとって清潔にしたい」と思う人もいるでしょう。

 けれども、実は耳垢には耳を保護する大事な役割があることをご存知でしょうか?

 そもそも耳垢は、耳の穴から鼓膜までの外耳道から出た分泌物に空気中のほこりや剥がれた皮膚などが混ざったものだといわれています。

 いわゆる「耳の垢」ではあるのですが「ただの垢」ではありません。

耳垢は大きく分けて3つの役割があるといわれています。

1つは外耳道のデリケートな皮膚を保護する役割。耳垢が付着することで外耳道の皮膚をなめらかに保ち、乾燥から防いでいるそうです。

 2つめは、侵入してくるゴミやほこり吸着する役割。ゴミやほこりを吸着することで、耳の奥まで入り込まないようにしているのです。

3つめは耳垢のもつ抗菌作用です。耳垢には殺菌作用のあるリゾチームや免疫抗体のlgAなどの成分が含まれており、細菌を抑える作用があるといいます。

また耳垢には苦みがあって虫などの進入もなども防いでくれるそうです。

 

耳垢のとり過ぎは耳の保護作用を失うことに

耳には快感を感じる迷走神経という神経があって、耳かきや綿棒でこの神経を刺激すると気もちよいと感じるそうです。

そのため耳かきが毎日の習慣になっている人も少なくないようです。

しかし外耳道には、口を動かしたり体の動きなどによって耳垢が自然外に出てくる仕組みがあるといわれていますから、基本的に耳そうじの必要はないといわれています。

また耳垢をきれいに取ってしまうと、耳の保護作用まで奪ってしまうことを心に留めておきましょう。

耳垢が気になるときは、自分で耳掃除をせずに耳鼻咽喉科でとってもらうことをお勧めします。

 

<参考>

※「耳垢」(子どもの耳・鼻・のどの病気 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

※お医者さんの知恵袋「耳垢の役割について」(横浜市緑区医師会)

※「耳垢も身のうち -耳掃除にご注意-」(東温市医師会)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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