
あなたの涙は、どんな味?
悲しいとき、うれしいとき、何かに感動したとき……さまざまなシーンで思わず頰を伝う涙。
そんな涙に味の違いがあるのをご存知ですか?
涙にもそれぞれ個性があるようです。
涙はなぜ出るのでしょうか?
映画やテレビドラマを観たり、小説を読んで感動したときに思わず涙が流れてしまうことあります。
また、友人との別れなど悲しい場面に遭遇したときや、逆にうれしいときなどにも涙を流すことがあります。
涙には常に目を潤している自発性瞬目といわれる基礎分泌性の涙や、目にゴミが入ったときの反射性の涙のほか、何かに感動したとき、うれしいときや悲しいとき、さらには痛いときも涙がでます。
こうしたさまざまなシーンで流れる涙は情動性の涙というもので、他の動物には見られず人間にだけ見られる感情的な涙だそうです。
涙が出るのは目の外側、目尻側にある涙腺から分泌されるのですが、涙腺は自律神経によって脳とつながっています。
悲しい、悔しい、うれしいといった刺激が、大脳の前頭前野から自律神経を通じて涙腺に伝わることで涙が出るといいます。
涙の分泌には自律神経が関与している
自律神経はご存知のように人間の心臓の動きや呼吸、体温など、生きて行く上で欠かせない体のさまざまな営みを調整しています。
自律神経には交感神経と副交感神経があって、活動的に過ごすときなどは交感神経が優位に働き、休息したりリラックスしているときは副交感神経が優位に働くといわれます。
この自律神経の働きによって涙が分泌されるのです。
うれしいときや悲しいとき、感動したときなどは副交感神経が働き、また怒ったり、悔しかったりして興奮しているときは交感神経が働いて、涙が目から溢れ出るといいます。
涙は血液が原料ですが、血液から赤血球(ヘモグロビン)などを除いた血しょうという透明な水のような液体からできています。
涙の9割以上は水分だそうですが、わずかにタンパク質やナトリウムなども含まれているといいます。
そのときの涙は、どんな味?
涙は、目頭側にある涙点から鼻涙管を通って鼻や口に流れていきます。泣いたときに出る鼻水も涙です。
なので、涙の味については多くの人が味見済みといっていいかもしれません。「……しょっぱい」でしょうか?
でも涙のすべてが「しょっぱい」わけではなさそうです。
怒ったり悲しんだり、感動したりといった、感情のタイプによって、涙の味に違いがあるのだそうです。
怒りや悔しさで興奮したときの涙は、交感神経が刺激されるために、「しょっぱい」味だそうです。涙に含まれる微量のナトリウムが怒りの涙のしょっぱさをつくっているようです。
一方、悲しい、うれしい、感動したときなどは、副交感神経が働くことによって、「水っぽく」て「少し甘い」味がするそうです。
涙のメカニズムは、科学的にまだ未解明なことが多いそうです。
涙ひとしずくにもミステリアスな物語がひそんでいるようです。
感動の涙はストレスと痛みを洗い流す?
例えばこんな経験はありませんか?
電車の中で読書中、感極まって涙があふれでてしまったとか、映画館でエンドロールを嗚咽と涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら、ただ眺めていたといったようなこと。
そして気づけば、気持ちがスーッと楽になるのを感じたというような……。
何かに感動するとか悲しむといった、感情が揺り動かされて泣く情動の涙には、副交感神経を優位にする働きがあって、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンや鎮静作用があるエンドルフィンが活性化され、ストレスや痛みの緩和、精神の安定をもたらすのだといわれています。
そんなことから近年、泣ける映画やドラマを観たり、小説を読んだりして意図的に涙を流す「涙活」と呼ばれる活動も注目されているようです。
涙を他人に見せたくない人も自宅でなら人目を気にすることもないでしょう。「泣ける」をキーワードに本や音楽などで思いっきり泣いてみては?
涙が日頃の嫌なことやストレスを洗い流してくれるに違いありません。
<参考>
*「なぜ人は感動すると涙が出るのか?」(大塚製薬株式会社)
*「なぜ、悲しいと涙が出るのですか。」(毎日小学生新聞/2024.8.19)
*「『人体のふしぎ3』涙活でリフレッシュしよう」(陸奥新報/2022.10.2)
*「ストレスから解放 自ら泣いて心を癒す『涙活』とは」(日本経済新聞/2013.2.20)