
更年期太りはなぜ起こる?
最近おなかがポッコリ出てきた、たいして食べていないのに体重が増えてきた……更年期世代の女性からはこんな嘆きが数多く聞こえてきます。
体の中でどんなことが起こっているのでしょう。
更年期以降は内臓脂肪型肥満が増えてくる
更年期ころから急に太り出す人が増えているといわれています。
理由の1つはやはり女性ホルモンの減少が関与しているようです。
女性ホルモンのエストロゲンは、皮膚のハリやみずみずしさを保ったり骨の健康やコレステロール代謝などにかかわっていますが、それだけではありません。内臓脂肪の蓄積を防ぐ働きもあるといわれています。
そのため、更年期に入る前の女性は、内臓脂肪が付きにくいとされています。
しかし、エストロゲンが減少する更年期以降は、その恩恵に預かれなくなります。
その結果、胃や腸などのおなかまわりの内蔵器官のすき間を埋めるように脂肪がついてしまうそうです。これが内臓脂肪です。
おへそを中心とした胴回りがジワリジワリと太くなって、お気に入りのスカートやパンツが履けなくなってしまったという声が多く聞かれるようになります。
筋肉量が減少し、基礎代謝も低下
一方、加齢とともに筋肉量が減少していきます。
これといった運動をしないまま過ごすと20代後半からは年間約1%の割合で筋肉量が減っていくといわれています。
つまり、40代後半では20代の頃と比べて20%も筋肉が減っていることになります。
「疲れやすくなった」というのは、更年期のせいだけでなく筋肉量が減っていることも関係しているのかもしれません。
筋肉が減少すれば、基礎代謝量が低下し、カロリー消費量が減ってしまいます。「今までと同じように食べていても太る」のは当然のことなのかもしれません。
加えて、女性ホルモンのエストロゲンは食欲を抑制する作用もあるといいます。
エストロゲンの分泌が減れば自然に食欲が増してしまうことも、更年期の肥満に関係しているようです。
がんや生活習慣病のリスクも高まる
更年期に起こる体重増加や体型の変化は、美容上の問題だけにとどまりません。
健康にも大きな影響を及ぼすといわれています。
更年期から増える内臓脂肪型の肥満を放っておくと、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こすリスクを高めるとともに、動脈硬化を進行させて、心臓病や脳卒中などの重大な病気のリスクも高めるのでご用心。
また更年期前後の肥満は乳がんのリスクを高めることが知られています。
ほかにも内臓脂肪型肥満は大腸がんや子宮体がんなどさまざまながんのリスクを高めるといわれています。
さらに肥満すると、足腰に負担がかかって腰痛や膝を招くもとになるなど、運動器にも悪い影響を与えます。
更年期からのダイエット
おなか回りがどんどん増えてきたり、体重の増加を感じる人は、内臓脂肪を落とし適正な体重を目指しましょう。
ただし、骨粗しょう症のリスクが高まる更年期以降は、とくにダイエットで骨や筋肉までやせさせてしまってはダメ。骨の健康を守り、筋肉を増やすことを心がけながら「太らない生活」を実践することが大切です。
食事を見直す一方で、食べる量がエネルギー消費量を上回らないように、運動量を増やすことを心がけましょう。
不調続きの更年期は、体を動かしたくない日もあるかもしれません。
けれども運動は更年期症状を軽減し、イライラや落ち込みなど更年期に起こりやすい心の不調にも効果があるといわれています。
無理のない範囲で体を動かすことを心がけるといいですね。
また内臓型脂肪を効率よく減らすためには、ウォーキングや水泳、サイクリングなどの有酸素運動が有効だそうです。
大切なのは、一度にがんばり過ぎずに毎日コツコツ継続的に行うこと。
運動習慣のない人は、まずは日常生活の中でまめに体を動かすことから始めてみましょう。歯磨きをしながらかかとの上げ下げをしたり、テレビを見ながらスクワットするなど「ながら運動」を習慣化するのも一案です。
<参考>
※『更年期障害 これで安心』(小学館 堀口雅子監修)
※「骨と筋肉を守るダイエット」(「栄養と料理」2024年7月号)
※「更年期はだれでも太る? 原因と対策を知ってしっかり体重管理」(Reライフ.net
朝日新聞社)
※くわしく知りたい!気になるカラダの話「内臓脂肪の話」(キューピ株式会社)