産官学による若い女性の「やせ」対策?
日本は先進国の中でも「やせた」若い女性の割合が突出しているといわれます。
「やせ」はさまざまな健康リスクをはらんでいることから、国と教育機関、産業界がタッグを組んだ「やせ対策」がスタートしたようです。
若い女性の5人に1人が「痩せ」の問題
やせていることは「美しい」といった画一的で偏ったイメージのせいでしょうか、20歳代、30歳代のやせた若い女性の割合は、世界的にみても突出しているそうです。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査 令和元(2019)年」によると、肥満度を表す体格指数のBMI(Body Mass Index)が18.5kg/m2未満の「やせた」女性の割合は、20~29歳では20.7%で、なんと5人に1人が「やせ」ているといいます。
「やせ」は30歳代でも16.4%、15歳~19歳においては21.0%もの高い割合を示しています。
「やせ」は糖尿病の予備軍?
女性の「やせ」傾向は、全体で見ればここ10年の間、10%程度で大きな増減はなく推移しているのですが、20歳代の女性に特定すると、「やせ」の割合は、2010年の29.0%を最高に、ほとんど20%を超えています。
「先進国で一番、女性がやせている国」といわれているなかで、特に若い女性のやせは顕著なのです。
「やせ」が問題とされるのは、単に体重が少ないといったことではなく、栄養不足や運動不足による筋肉量の低下や骨量の減少、さらには月経異常、無月経、不妊などのリスクのほか、糖尿病の予備軍ともいわれていることです。
産官学で女性の「やせ」対策スタート
そんな女性の「やせたい気持ちを過剰にかきたてる」社会の変革に、産官学からなるチームで取り組もうと『マイウェルボディ協議会』という組織が発足したとの報道がありました(「『痩せ過ぎ』解消へ協議会」(東京新聞/2024.4.17)。
内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の1つとして設立されたものだそうで、順天堂大学を中核に「女性の生涯の健康」と「過剰なやせ願望」に注力して現状を変えたいとしています。
もはや若い女性の「やせ」は、見過ごすことのできない大きな社会問題といえるのかもしれません。
「やせ」に待ち受けるのはサルコペニア?
「サルコペニア」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
ギリシャ語由来で「サルコ」は「筋肉」、「ペニア」は「減少」をあらわしているそうです。加齢に伴う骨格筋量の減少によって、身体能力が低下した状態のことをいいます。
サルコペニアは加齢以外にも運動不足、低栄養などの生活習慣が原因で起きることもあるそうです。
このサルコペニアが、やせた女性の将来的なリスクになることが多くの研究の結果、分かっているといいます。
見た目はやせていても脂肪が多いことも
やせた若い女性の中には、見た目はスリムで、BMIが「やせ」か「標準」でも、体脂肪率が「標準」以上で、脂肪の割合が多いケースもよく見られるそうです。
骨格筋量の少なさが「やせ」の理由であるといわれています。
今の筋肉量の少なさが、加齢によりさらに減少すればサルコペニア発症のリスクが増大することになるというわけです。
また、筋肉量に変化はなくても、脂肪が増えれば「隠れ肥満」になる可能性が指摘されています。隠れ肥満は肥満同様に生活習慣病のリスクになり、さらにはサルコペニアのリスクにもつながるといわれています。
外見上の「やせ」を気にするより、筋肉質「やせ」を目指すもあり?
<参考>
*「若い女性の『やせ』や無理なダイエットが引き起こす栄養問題」(厚生労働省 e-ヘルスネット)
*「マイウェルボディ協議会発足プレスリリース」(マイウェルボディ協議会)
*「サルコペニア(筋肉減少症)」(大正製薬株式会社)
*「体組成から見た若い女性の『やせ』対策」(独立行政法人 労働者健康安全機構・関東労災病院 治療就労両立支援センター)。