プラスコラム
PLUS COLUMN

良い眠りに重要な「休養感」

忙しいときにはまっさきに削られがちなのが睡眠時間。

睡眠時間とともに最近では「睡眠休養感」が注目されています。

 

世界の中も睡眠不足が目立つ日本

 世界の中でも日本は睡眠不足が短いことで知られています。

OECDが2021年に発表したデータでは、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と33カ国中最下位でした。

 さらに興味深いのは、ほかの国は男性に比べて女性の睡眠時間が長い傾向があるのに対して、日本はその逆であること。 男性よりも女性の睡眠時間のほうが短いのです。

日本の女性の睡眠時間は世界の中でも最低レベルであるようなのです。

 

睡眠休養感とは

 単に睡眠時間が短いだけでなく、なかなか寝つけなかったり、眠りが浅くて夜中に目覚めてしまうといった、睡眠に悩む人も増えているといわれています。

最近は、睡眠の質を示す「睡民休養感」という言葉を目にするようになりました。

睡眠休養感という言葉を初めて聞いた人も多いかもしれません。

睡眠休養感とは、文字通り朝目覚めたときに睡眠によって十分に休息がとれたという感覚を指す言葉。

気分よく目覚められると、その日1日が快適に過ごせるような気持になりますね。

 

睡眠時間と睡眠休養感

その睡眠休養感と健康の関係についての興味深い研究結果が2022年に発表されました。

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターと学校法人日本大学、公立大学法人埼玉県立大学の共同研究によるもので、働き盛り(40歳~64歳)の世代と、65歳以上の高齢世代の2グループに分けて、睡眠に費やした時間の長さと同時に、睡眠の質を示す指標である「睡眠休養感」を測定して、将来の将来の総死亡リスクとの関連をあきらかにしたのです。

研究結果によると、働き盛りの世代では、睡眠休養感のない短い睡眠時間は総死亡リスクを増加させたそうです。

また高齢者世代に関しては「床上時間(睡眠をとるために寝床で過ごした時間)が長く、かつ睡眠休養感のない睡眠」が総死亡リスクを高めることがわかったそうです。

つまりどちらの世代にも、共通して総死亡リスクと関係していたのが「睡眠休養感」です。

つまり私たちが健康を維持していくうえで、「睡眠休養感」が重要なポイントであることがあきらかになりました。

 

休日の寝だめに頼らない生活を

 長時間の通勤や勤務、シフトワーク、家事や育児の大変さなど働き盛りの世代は睡眠時間が短くなる傾向があるといわれています。

平日の睡眠不足を休日の寝だめで補う人もいますが、休日に遅い時刻まで眠っていると、体内時計が調整されず日曜の夜寝つきが悪くなったり月曜の朝の目覚めの悪さにつながるリスクがともないます。

休日の朝もう少し眠りたいときも、睡眠リズムを大きく崩さずに、平日に起きる時刻とのずれを1時間以内に留めるようにと専門家はアドバイスします。

 大切なのは、休日に頼らず平日にも適切な睡眠時間を確保して睡眠休養感を得ることを心がけることなのかもしれません。

 

良い眠りを得るために必要なこと

 ではどうしたら睡眠休養感が得られるのでしょう。

厚生労働省の『良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない眠りのこと』では、睡眠休養感を高める工夫として「日中の活動・身体活動を増やす」「就寝前にリラックスし、嗜好品に注意する」「寝室の環境を整える」の3つのポイントをあげています。

 とくに就寝前に気をつけたいものとして挙げているのが「寝る前の食事」「夕方以降のカフェインの摂取」「スマートフォンの使用」「喫煙」です。

 帰宅後リラックスタイムについつい行ってしまうこれらの事柄は、心身のリラックスをかえって妨げることになるのでご用心。

心地よい音楽を聞いたり、入浴などで副交感神経モードにスイッチを入れて、朝はスッキリ気持ちよく目覚められる習慣をつけていきたいものですね。

 

 

<参考>

※「睡眠休養感がカギを握る:健康維持・増進に役立つ新規睡眠指標の開発」(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター)

※『良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない眠りのこと』(厚生労働省)

※「健康寿命を延ばそう SMART LIFE PROJECT」(厚生労働省)

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。