
朝、目覚められるのは「楽観」のおかげ?
起きては寝て、寝ては起きをひたすら繰り返す毎日。でも考えてみてください。なぜ、朝、きちんと目覚めることができるのでしょう。不思議だと思いませんか?
人生の約3分の1を寝て暮らす?
日本人の平均睡眠時間はどのくらいだと思いますか?
総務省統計局の調査(平成28年)では全国平均で7時間40分だそうです。
もっとも1日の睡眠時間が長いのは青森県で7時間59分、逆にもっとも短いのが埼玉県の7時間31分でした。
私たちは毎日、8時間近く、つまり1日の3分の1を寝て過ごしていることになります。
「人生100年時代」などといわれる今日この頃ですけど、それに当てはめると、なんと驚くことに約33年を寝ているということになります。
民話『三年寝太郎』の10倍以上。さすがの寝太郎も脱帽の長〜い長〜い年月です。
5人に1人は「睡眠で休養がとれない」?
一方で「睡眠で十分に休養がとれていない」人は年々増加傾向のようで、厚生労働省の調べでは平成21年に19.4%だった割合が、平成29年では21.9%に増えたということです。
日本は世界の中でもトップクラスの睡眠不足の国だそうです。
慢性的な睡眠不足は肥満、糖尿病、心筋梗塞などの生活習慣病にかかりやすいといわれています。
最近では睡眠の質が注目されているようですが、日本睡眠科学研究所の調査によると「睡眠の質に不満を感じている」割合が「少し」と「かなり」を合わせると全体の62.0%にもなりました。
満足している人は全体の3割ちょっとでした。
6割以上の人が睡眠に不満を感じている?
また、同調査によると「睡眠時間が足りている」と答えた人は全体の36.5%にとどまり、残りの64.5%の人は「少し」「かなり」「まったく」足りないということでした。
おもしろいことに同調査の「睡眠に使う予算」についての項目では、睡眠に「お金をかけようと思わない」と答えた人が64.9%もいたことです。
睡眠の質や時間に不満を感じている人が6割以上いるにもかかわらず、やはり6割以上の人が睡眠に使うお金は不要と考えていることです。
「睡眠に投資は不要」という意見が多くを占めていることはちょっと意外でした。
人生の3割を寝て過ごすにもかかわらず、睡眠の問題はあまり大事にされていないようです。
希望に満ちた朝を迎えるには?
私たちは毎日のように、朝になると自然に目覚めます。
当たり前すぎて不思議とも思ったことはありませんが、それを学術的に追求した人がいます。
イギリス、オックスフォード大学の心理学者、神経科学者エレーヌ・フォックス博士です。
博士の著書『脳科学は人格を変えられるか?』(文春文庫)によると「毎朝、人間が寝床から起き上がることを可能にしている力」は「楽観」だそうです。
楽観といってもこの場合の「楽観」は、単にお気楽といった意味ではなさそうです。
博士によると「人間の脳にはそもそも未来に希望を抱く配線がされている」のだそうです。
どうせ迎える朝、希望に満ちた朝を迎えたいですね。
どうすればそんな素晴らしい朝が迎えられるのか?
考えると眠れなくなりそう……?
<参考>
*「平成28年社会生活基本調査」(総務省)
*「平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要」(厚生労働省)
*「e-ヘルスネット/睡眠不足と生活習慣病との深い関係」(厚生労働省)
*「西川 睡眠白書2020〜日本人の睡眠調査~」(西川産業/日本睡眠科学研究所)
*「脳科学は人格を変えられるか?」(文春文庫)
*「筆洗」(東京新聞/2017.4.1)