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骨の健康を守るビタミンD不足が深刻

梅雨のシーズンに入りました。

梅雨でも紫外線対策は必要だといわれていますが、一方で気になるのが紫外線ケアのし過ぎで不足するビタミンDのこと。今日本人のビタミンD不足が深刻になっているようです。

 

健康に欠かせない栄養素

「ビタミンDって何」と思われた人も多いかもしれません。

ビタミンBやビタミンCは広く知られていますが、ビタミンDはあまりなじみのない栄養素といえます。

 けれども、体にとってとても大切な栄養素。骨の健康や免疫力のUP、がんの抑制作用などもあるといわれています。

 ビタミンDが不足すると、筋肉や骨が弱くなって骨粗しょう症や骨折のリスクが高まることが知られています。

またビタミンDの不足・欠乏は糖尿病やうつ病、不妊症、妊娠中の場合は早産や妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、胎児発育不全などとの関連もあるとされています。

ビタミンDは、私たちが健康を維持する上で大切な働きをする栄養素だといえます。

 

深刻な調査結果

そのビタミンDの不足が、近年は深刻になっているといわれています。

たとえば、最近では東京慈恵医科大学の研究チームが東京都内で健康診断を受けた人の血液検査を行ったところ98%がビタミンD不足だったという調査結果が報道されました。

調査結果では年齢が低いほどビタミンD不足の割合が高くなる傾向もみられたそうです。

これまでも日本人のビタミンD不足が指摘されてきましたが、今回の調査結果の98%という高い数値には驚いてしまいますね。

 

過度な紫外線対策もビタミンD不足の一因?

ビタミンD不足の背景には、食生活の変化などがあげられています。

また、近年のビタミンD不足には、過度な紫外線対策も関係しているのではないかと考える専門家もいます。

実は紫外線には、皮膚でビタミンDを合成する作用があることが知られています。

食事からもビタミンDはとれますが、十分にとるのがむずかしいので、日光を浴びて体内でつくり出す必要があるといいます。

一方で紫外線のリスクもあります。

くり返し紫外線を浴びることで、しみやしわの原因になったり、皮膚がんの原因になることも。

 お肌の大敵とばかり日焼け止めをしっかり塗って、帽子、日傘、手袋、サングラスと万全な紫外線対策をしている人も多いことでしょう。

 

両立できる範囲で対策を

紫外線をカットして美肌を守りたいけれど、骨粗しょう症予防など骨の健康を守るためには紫外線を浴びることも必要……どうしたらよいのか悩んでしまいますね。

ゼロか100かで考えるのではなく、どちらも両立できる範囲で対策を立てられればいいですね。

たとえば、極端に紫外線を避けるようなことはせず天気のよい日はできるだけ外出するのも一案かもしれません。といっても日焼けするほど紫外線を浴びる必要はありません。

直射日光でなく木陰でも十分な効果があるといわれていますから、そういった場所で適度に紫外線を浴びることを心がけるとよいのかもしれません。

日の光を浴びることで、セロトニンが増えて、気持ちが明るくなったり睡眠の質も良くなるメリットもありますよ。

 

サプリメントなどの活用も。ただしとり過ぎには要注意

なお、ビタミンDが多く含まれる食品にはキノコ類や魚類がありますが、食事から十分にとれないと感じている人や日光に当たる機会が少ないと感じている人は、ビタミンDを配合したシリアルや栄養補助食品、サプリメントなどからとる方法もあります。

ただし、ビタミンDは過剰に摂取すると食欲不振、体重減少、多尿、不整脈などの健康障害につながるリスクがあるといわれます。とり過ぎには注意しましょう。

 

<参考>

※「98%の日本人が『ビタミン D不足』に該当 国内初の基準値を公表、植物由来のビタミン D はほぼ検出されず」(東京慈恵医科大学プレスリリース)

※「最近の日本人のビタミンD欠乏」(国立研究開発法人 国立環境研究所)

※「かんたん わかる! プロテインの教科書」(森永製菓株式会社)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。