プラスコラム
PLUS COLUMN

禁煙するなら禁酒と一緒が効果的?

喫煙に対する世間の目は厳しさを増すばかり。

いっそ「禁煙を」と思う人も少なくないでしょう。

最近の研究によると、禁煙するなら酒も同時にやめるのが効果的らしいです。

かなりの難題になりそうですが……。

 

日本の男性の8割以上が喫煙者だった?

「タバコは生活必需品」……そんなふうに思われていた時代がありました。

 飲食店はいうに及ばず、路上はもちろん、駅構内やホーム、電車やバスの中など、街のいたるところでタバコの煙がまるで狼煙(のろし)のように立ち上っていたものでした。オフィスの机には自分専用の灰皿までありました。

「ウソでしょう?」……にわかには信じられない、でも本当の話。

日本たばこ産業の「全国喫煙者率調査」によれば、成人男性の喫煙率は、ピーク時の昭和41(1966)年にはなんと83.7%だったそうです。ちなみに女性もこの年がピークで18.0%でした。

 日本中がタバコの煙に厚くおおわれていた時代でした。

 それから50年あまりを経た2019(平成31)年、成人男性の喫煙率は27.1%にまで急降下。女性も7.6%と半減しました(国立がん研究センター がん情報サービス「喫煙率」より)。

 

受動喫煙を「不快」に思う人は7割以上

 いまは健康に対する意識の高まりもあって、喫煙者に対する世間の視線が50年前とは比べものにならないくらい厳しくなっています。

 そんななか国立がん研究センターが受動喫煙についての調査結果をこのほど公表しました(20歳以上の喫煙者、非喫煙者の男女各1,000人を対象にインターネットで実施)。

 それによるとタバコの煙を「不快に思う」人は全体の70.4%でした。喫煙者では36.2%、非喫煙者では77.2%と高い割合を占めました。

 受動喫煙で不快な思いをした場所(複数回答)については「路上」が72.6%でもっとも多く、次いで「食堂やフードコートなど食事を提供する店」が46.4%、「屋外喫煙所の近く」40.0%、「居酒屋・バーなど主に酒類を提供する店」35.2%などでした。

 一方で、喫煙できる場所が「減ってきた」と思っている喫煙者が66.5%もいて、7割近くの人が喫煙の不便を感じている様子が伺えます。

 

●禁酒と禁煙を同時に行うことが効果的

 愛煙家の意向は別として、世の中の禁煙への流れはさらに加速していくように思えます。

人目をはばかったり、喫煙場所を探したりする手間を考えると、頭にちらつくのは、あの2文字でしょうか。

「禁煙」……しようと思うきっかけは人それぞれでしょうが、いくつかの調査をみると、「自分の健康」「タバコ代の捻出」「子どもができた」「周囲にタバコが苦手な人がいる」といったことに集約されそうです。

 そういうなか禁煙を成功に導いてくれそうな研究が報道されました。

「禁酒と禁煙を同時に行うと有効」というものです(東京新聞/2023.5.10)。

新聞の報道によると国立病院機構久里浜医療センターの研究チームは、禁酒と禁煙を一緒に行うと、断酒の成功率で2.44倍、大量飲酒からの離脱率で2.13倍、それぞれ喫煙を継続した場合に比べて有効だとしています。

 

禁煙、禁酒は難題。困ったときは医者頼み?

 以前から飲酒やコーヒーなどの嗜好品はタバコとの相性がよいとされ、禁煙の継続を妨げるなどとよくいわれていましたが、それが証明された形かもしれません。

 しかし「飲むなら吸うな」「吸うなら飲むな」も難しいけれど、「吸うな飲むな」はかなりの難題といえそう……。

 ただ、時代は明らかにタバコに猛烈な逆風状態。タバコ天国だった「昭和」も一時のブームでしかなく、憧れのタバコ復活はかないそうもありません。

禁煙については医療機関でも外来を設けるなどして対応しています。

ひとりでアレコレ悩むよりは、「困ったときの医者頼み」で、解決への糸口が見つかるでしょう。

「入口」が見つかれば「出口」は必ずあります。

 

<参考>

*「受動喫煙対策に関するアンケート調査」(国立がん研究センター)

*「たばこと健康に関する情報ページ」(厚生労働省)

*「受動喫煙で不快だった場所、最多は?」(毎日新聞/2023.5.31)

*「禁酒と禁煙、同時が有効」(東京新聞/2023.5.10)

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。